家庭菜園物語

コンビニ

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3章

ラッキー?

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「大福様!」
「わん!」

 私が帰ってことに気がついたのか、大福様が森の中まで迎えにきてくれた。
 大福様をモフモフしている間にもリリアちゃんとサイラ君はぐったりとしている。こんなに可愛い大福様を見てテンションが上がらないなんて、よほど疲れているんだろう。

 今まで来た人は結構平然としていたけど、森の中を歩くだけでも2人には非常に大変だったようで、疲れ切ってしまっている。
 
「大福様、サイラ君をお願いできますか?」
「わん」

 大福様にサイラ君を巻きつける。足が地面に付いてしまっているけど、勢いよく走れば引きずることはないよね。残ったリリアちゃんを自分の背中に乗せて、家に向かって走り出す。

「モモちゃん! 速くて怖い!」
「舌を噛まないようにね、リリアちゃん」

 1時間ほど走ると、畑や動物たちが見えてきた。
 帰ってきたんだ。

「もーねえ!」
「イール? 喋ってるし、大きくなったね!」

 別れる前まではもう少し痩せていたが、ふっくらと可愛らしくなっている。
 栄養価が高いものを食べているおかげなのか、肌艶もずっとよくなって、身長も伸びただろうか。

「お土産?」
「違うよ、友達」
「おいおい、モモ、その友達がぐったりしちゃってるじゃないか。そっちの銀髪の子も大丈夫なのか?」
「お父さん、ただいま!」
「おかえり、まずは友達を降ろそうな」

 リリアちゃんを降ろして、大福様に括り付けていたサイラ君の紐を解く。
 お父さんが、サイラ君を見ると、顔をマジマジと見て首を傾げている。何を思ったのか、股間周りをパンパンとしている。

「お父さん、なにしてる?」
「モモ、こいつ男だぞ」
「知ってるけど」
「きゃああああああああああああ!」

 お父さんが何故か悲鳴をあげている。

「お父さん、サイラ君のことお願いね」

 リリアちゃんはなんとか肩を貸して歩ける程度だけど、サイラ君はもやしなだけあって気を失っている。
 あれれ、家なんだか変わったかな?

「にゃーん」
「杏お姉ちゃん、ただいま戻りました。家、改築されましたか?」
「にゃーん」

 ええ、そうなんだ。中はどうだろうか、広くなってる!
 
「もーねの部屋はこっち。ここはイールの部屋!」

 イールの部屋は隣なんだね。ふむふむ、とりあえずは私の部屋でリリアちゃんには休んでもらおう。
 押し入れの中に布団があったので、それを敷いて、前に使っていた衣装だなとかはそのままだったので、そこから着替えも引っ張り出して、寝ててもらう。

「リリアちゃん、少し休んでてね」

 反応がない。着替えて布団に入れた瞬間に寝息を立ててる。
 リリアちゃんが着ていた服を回収して、イールの案内で洗濯機の場所へ案内をしてもらう。

「なんだか洗濯機も新しくなってない?」
「ふんぱつしたって!」

 おお、お風呂も更に大きくなってるよ! 今夜はリリアちゃんとイールと入ろうかな。
 同じようなタイミングでお父さんがサイラ君の服を持ってきてくれた。

「モモ、あのもやし男はなんなんだい?」
「もやし君は友達だよ。前に学園で作物の研究をしてる子がいるって書いたじゃない」
「女の子だと思った……」
「男の子連れてきたくらいで動揺しすぎだよ」

 リビングやキッチンも更に新しく広くなっていた。
 友人を連れてくると聞いていたので、そのタイミングに合わせて先月に新しくしたらしい。
 新しい縁側で大福様と杏お姉ちゃんとくつろいでいると、お父さんが冷たい麦茶を持ってきてくれる。

「ありがとう」
「いえいえ、モモ、改めておかえり」
「ただいま! こうやって縁側でくつろいでると帰ってきたって感じがする」
「学校はどうだ?」

 手紙にも書いてはいたけど、学校での生活や友人のことをお父さんに話す。
 お父さんも楽しそうに話を聞いてくれた。

「おね……エリゼはもう行っちゃったんだよね?」
「ああ、2ヶ月くらい前にな。まだ手紙は来てないけど、筆まめな方でもないし、生命力はあるから元気にしているだろうさ」
「そうだよね。そうだ、おじいちゃんに会ってきたんだ」
「ダークエルフの里に行ってきたのか。どうだった?」
「お母さんの剣を受け取ってくれた。まだ心の整理もつかないだろうし、10年くらい期間を空けてみるよ」
「寿命が長い種族の考え方だなー、10年なんてめっちゃ長いと思うけど。まぁモモのお母さんが実家にも帰れたのならなによりだよ」

 久しぶりにお父さんに頭を撫でられた。少し気恥ずかしい。前はそんなこと思わなかったけど、これが大人になるということなのかな。でも落ち着くな。

「さて、今日の夕食は何にしようかね」
「お父さん、肉じゃがにしない?」
「わかった。今日は俺が作るからゆっくりしていろ」
「わーい! お父さんの肉じゃが楽しみにしてるね」

 お父さんがご飯を作っている間に、リリアちゃんの様子を見にいくと、イールの話相手をしてくれていた。

「魚を釣ってね、火でね、焼いてね、美味しいの!」
「そっかー、楽しそうだね。あ、モモちゃん」
「もーね!」

 突進してきたイールを抱き上げて、リリちゃんの前に座る。

「大丈夫そう?」
「うん。ご迷惑をおかけしました」
「こちらこそ、森を歩くのが一般の人だとあんなに大変だったとは思わなくて、こちらこそ配慮が足りなくてごめんね」

 リリアちゃんにショートパンツとパーカーを貸して、着替えてもらい部屋の外に出る。
 サイラ君のことも起こしに行かないとな。

「イール、サイラ君がいるとこは知ってる?」
「しってる!」

 抱いていたというか、体にしがみ付いていたイールが軽やかに着地して、てけてけと廊下を駆けていく。
 こっちにも部屋があるんだなー。案内された部屋は殺風景だったので、客間扱いなのかな。
 その中央で、布団に横になるサイラ君。

「そろそろ起きなよサイラ君!」

 布団を勢いよく剥がすと、サイラ君は何も服を着用してなかった。裸で寝るタイプなのかな?

「きゃあああああああああああ!」
「え? どうしたのリリアちゃん」
「うぅん、寒い。あれ、モモさんにリリアさんも、僕、寝ていたんですか」
「そうだよ、早く起きなよ」

 サイラ君に手を貸して立ち上がってもらう。服も用意しないとな。

「どうした! なんの悲鳴だ!」
「お父さん、リリアちゃんがどうしてか驚いたみたいで」
「お前、服を着ろ!」
「えっと、森の賢者様ですか--なんで裸! いやあああああああああ!」
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