家庭菜園物語

コンビニ

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3章

白猫

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 モモが家に帰ってこないまま、既にお盆に突入してしまった。
 9月には学校が再会になるので、カイラちゃんに乗って帰ったとしても滞在できる日数はそう長くないだろう。
 一度は家に寄ると手紙は来たけど今回はもしかしたら帰ってこないのかもしれない。
 カイラちゃんとエリゼが西瓜、1玉を半分ずつ貪り食べるのを見ながら、今日もモモは帰ってこないのかなーとぼーっと過ごす。

「にゃーん」
「だってぇ、モモも帰ってこなくてテンション下がり気味なんですもん」

 モモから手紙はきている。
 お母さんを迎えに行った際に村の現状を見て、農奴全員をお金で解放したらしい。
 王国法に違反している違法な税金などを指摘と、既に壊滅状況にあった村なので、今なら正規の値段を出せるよと、村長と色々と交渉をしたらしい。
 
 当然、解放しただけでは路頭に迷ってしまうので、王坂に希望者は連れて行き、仕事を斡旋することになったらしい。
 突発的に動いたのでルイさん達にも迷惑をかけることになったが、あちら側も人手が不足していたので助かったこと、同胞を助けてくれたことも感謝されたとのことで、ルイさんからもモモの言う通り感謝の手紙はきた。それでも思いつきで動いたことで迷惑をかけたことは確かなので、謝罪の返信をしておいた。
 
「わん!」

 大福が飛び上がって外に出ていった。
 カイラちゃん、エリゼも西瓜を抱えて大福の跡を追う。せめて西瓜は置いて行きなさいよ。
 外ではキャッキャと喜んだ声が聞こえる。姉さんとゆっくりと外に出ると、モモが大福達に揉みくちゃにされていた。

「おかえり、モモ」
「ただいま、お父さん」

 モミモミされたせいで髪がぐしゃぐしゃになってるじゃないか。髪を手櫛で直しながら頭を撫でる。

「にゃーん」
「ん? その子は?」

 白い猫耳娘だ! 可愛い! おいで、おいでー、あ、シャーってされた。
 
「お父さん、中で話してもいい?」
「ああ、そうだな。おやつ時だし、お茶でもしよう」

 白猫ちゃんはモモの裾を摘んでちょこちょこと歩いている。可愛い! 
 家に上がる前に大福と姉さんがクルクルと白猫ちゃんをクンクンする儀式があったが審査は問題なかったようで、家に向かい入れられていた。
 大福と姉さんが早くも気に入ったようで、大福に包まれながら姉さんが前に座って尻尾であやし、エリゼも触らせてほしいと、手をワキワキと動かして順番待ちをしている。

 人数分のお茶を出して、白猫ちゃんには牛乳を出す。
 まだ俺のことは警戒しているようで、置かれた牛乳を取られないように隠しながら飲み始めていた。

「この子はシールって言います。その……村での扱いも良くなかったみたいで、大人の男性を警戒してるんです」

 やっぱりこの子がシールちゃんか。モモの手紙にも少し書いてあった。可愛いからと言って俺が過剰に接するのは良くないかもな。
 お茶の間もモモと久しぶりに会えて嬉しいのか、エリゼには散々質問攻めにあっていた。
 今は話ができるタイミングではないかな。

 女の子組は一緒にお風呂に入ったり、夕食後もキャッキャとしていたが、シールちゃんが眠そうにしているのを見て早々に皆んな布団に入った。
 カイラちゃんが来てる時点で賑やかではあったけど、モモ達も合流して、更に賑やかになった。
 この賑やかさも数日経てばなくなってしまうかと思うと少し寂しい。

 姉さんと月見酒を楽しんでいると、寝たと思ってたモモがリビングに姿を見せた。

「モモ、起きたのか?」
「うん、お父さんと話せてなかったし」
「そっか。ホットミルクでも淹れる」
「うん、ありがとう」

 ホットミルクを出して、モモが一口飲み、大きなため息を吐く。
 疲れた顔をしたモモの頭を撫でる。

「お疲れ様。おかえり、モモ。頑張ったな」
「頑張ってなんてないよ。沢山の人に迷惑をかけただけだった」
「そんなことはないって言えないけどさ。頑張ったと思う。シールちゃんのお母さんの件も残念だったな」
「うん。私はシールちゃんのお母さんの死に目に会わせてあげれなかった。私の我儘で」

 モモはハイエルフになって、成長してから滅多になく子ではなかった。
 そのモモが泣いている。今回のことはモモの中でも堪えたんだろう。
 
「モモがいなければ、そもそもシールちゃんだって死んでしまっていたかもしれないんだ。全部を悪い風に捉えることはないよ。シールちゃんが大きくなって、沢山のことに判断ができるようになったら改めて話せばいい。その時にシールちゃんが怒るようなら俺も一緒に謝るよ」
「うん」

 そこからモモを元気づけるためにたわいもない話をした。
 エリゼとの距離感が変わった話や、畑や、大福、若葉の様子だったり、本当にたわいもない話だ。ただモモと2人、いや、姉さんも黙って聞いてるだけではあるけど、3人での時間をまったりと楽しんだ。
 まぁ、大福はいつも寝てたりしてるから今回はノーカウントということで。

 話している途中で、会話が途切れる。場を和ませはしたけどモモが何か話したそうにしているのはなんとなくわかっていた。
 モモが意を決したように俺の目を見る。なんとなく言わんとしたいことはわかる。

「お父さん。シールちゃんなんだけどね、獣人さん達の中だと白い毛並みの子は不幸を呼ぶとかで、嫌われているの。それで前の村でも嫌な思いを沢山したみたいで。ルイさんは私のお願いであれば預かってくれるっても言ってくれたんだけど。私の知り合いって言っても見えない部分で嫌がらせや迫害される可能性もあるから安心して暮らせないんじゃないかって」

 あんな小さい子をねぇ。胸糞悪い話だ。

「俺の世界でも肌の色や人種で嫌がらせをする人間はいるからなー。俺にはわからん感覚だけど、差別をする奴はする。それはいけないことだって思うけど、どの世界でもなくならない難しい問題かもな。それこそ姉さんだってそうだ、黒猫は不幸を呼ぶとか気味が悪いとか言われたこともあったくらいだしな」
「お姉ちゃんは綺麗だよ」
「にゃーん」
「そうだな。俺も黒猫は姉さん含めて大好きだよ、俺のいた比較的、平和な世界だってそんなことはある。そう考えればこの世界はもっと過激かもしれないよな」
「だから! 私はシールちゃんと暮らしたいって考えているの」
「学校でお世話するつもりか?」
「そう、さくらさんにも許可取る。だからお父さんにも許可と後押しをしてほしくて、シールちゃんのお母さんは恩人だよ。だからシールちゃんは私にとっての大事な恩人と同様なの。あの子を幸せに安心して暮らせるようにしてあげたい」

 モモは責任感が強い子だ。そんなことを考えているのではないかと思っていた。

「にゃーん」
「そうですね、姉さんの言う通りだ。俺も許可はできない」
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