家庭菜園物語

コンビニ

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2章

廃嫡

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「なんでこんな勉強しなきゃいけないのよ」
「いいですか、計算ができなければ家臣の人が不正をしていも気がつきませんし、店で会計をするときだって困りますよ」
「だったら別の家臣に任せればいいわ」
「任せるに値する人が誰もいなかったらどうするんですか? それで店の人が悪意を持っていたら?」
「私を騙すような家臣や店主がいれば、死刑にすればいいのよ」
「そもそも騙されたことにも、計算ができければ気がつかないじゃないですか……」

 エリゼちゃんが反論ができずぐぬぬとしている。
 格闘や剣術については、俺は詳しくはないけど、姉さん曰く互角以上に渡り合っていて優秀という話だ。
 学校に数人はいるよね。落ち着きがなくて、体育が5でそれ以外が1の元気な子。エリゼちゃんはそんなタイプの人間なのかそう育てられたのか。

 2人がリビングで勉強しているのを横目に縁側で、木をカリカリと掘っている。
 最近は素材の自動化も進んでおり、畑仕事や動物の世話くらいであれば午後が比較的に暇になってしまうので、釣りをしたり、大福と散歩をしたりしても時間を持て余すので、仏像? を作っている。
 少しくらいはサイゼ様にも感謝してあげてもいいので、サイゼ様をモデルの像を作っているのだ。
 最初から大きいのは無理なので、小さい物からコツコツと始めている。

「ぴー!」
「ぴーちゃん、どうした?」
 
 横にいたぴーちゃんが、畑の方に飛んで行ってしまった。
 火の鶏が帰ってきたのかな? サンダルを履いて、縁側から畑へとそのまま移動すると、畑でガサゴソとしている人物がいた。

「これは良い西瓜だなぁ」
「畑泥棒ですよ、さくらさん」
「ぬお! ちょっと西瓜を愛でていただけだ!」
「まったくもう。お久しぶりです」
「久しいな。少し老けたな」
「これでもまだ、22なんで大人っぽくなったと言ってください」

 一緒に帰宅していた、火の鶏はぴーちゃんと自宅に戻るということだったので、さくらさんを伴って、自分の家へと戻る。

「家が広くなったな」
「金策頑張りましたからねー」
 
 玄関で靴を脱いでいると、リビングからモモが顔出す。

「お久しぶりです。さくら様」
「久しいな。身長が随分と伸びたな」

 さくらさんに頭を撫でられるとえへへ、と少しモモが照れている。久しぶりに会ったおばあちゃんと孫って感じだけど、絵面的にはお姉さんと妹だな。
 その様子を恐る恐る、エリゼちゃんが覗き込んでいる。さくらさんのことはなんと説明したものかな。

「君が噂のソード辺境伯の娘か」
「お初にお目に掛かります」

 エリゼちゃんが淑女にワンピースのスカートを軽く摘んで持ち上げ、優雅な挨拶をする。
 さくらさんを知っているのか? さくらさんが来たの、察知してモモが説明してくれたのかな。教養がないエリゼちゃんでも知っているとは、さくら伝説恐るべし。

「思ったよりも良い子そうじゃないか」
「ありがとうございます。物語で聞き及んだ、さくら様と会えたのはとても嬉しいです」

 本当にエリゼちゃんなんだろうか、さくらさんがエリゼちゃんのことも頭を軽くな出ると、図々しく居間に入りくつろぎ始める。ここはあんたの実家じゃないんだぞ。

「西瓜を頼む」
「少しすれば夕食なんですけど」
「大丈夫だ! 晩飯もちゃんと食べる。ハンバーグがいい!」
「はいはい。モモ、悪いけど勉強の続きは俺の部屋でやってもらってもいいか?」
「はい。お手伝いはしなくてもいい?」
「大丈夫だよ」

 さくらさんと話したそうにする、エリゼちゃんを引きずってモモが、移動してくれる。
 エリゼちゃんとモモの間にはまだ壁があるようで、モモの部屋だけには頑なに入れようとしない。自分のパーソナルスペースには簡単に入れたくないという思春期特有の問題だろうか。
 さて、今日の寝る時の部屋割りはどうするか。さくらさんならテントでもいいだろうが、夜には話したいこともあるし、酒も飲みそうだがらリビングは使用するしなぁ。

 手早く西瓜を切って、リビングに持っていくと、寝転ぶさくらさんの上に大福が寝転び、その上には姉さんが寝転んでいる。なんて羨ましい状態なんだろうか。

「西瓜持ってきましたよ」
「大福ー、杏殿ー、退いてくれー」

 食べれそうな気配がないので、先に西瓜をいただく。うん、美味いな。
 シャクシャクとした音に気がついたのか、姉さんがまずは離れて、姉さんが離れたことに気がついた大福が西瓜をおねだりしてくる。いっそのこと全部切ってしまうか。

「モモー、西瓜切ったから取りにおいでー」
「はーい!」

 モモに西瓜を渡して、リビングに戻れば姉さんと大福が食べる西瓜を羨ましそうにさくらさんが近距離で眺めていた。
 姉さんは意に返してないが、大福は少し食べずらそうだ。

「さくらさん、取り上げたりしないでくださいよ。ちゃんとそれぞれに用意しているんですから」
「わかってる! 早く西瓜をくれ!」

 これこれと、さくらさんが西瓜にかぶり付く。美味しそうに食べるなぁ。
 3人で3分の2は食べたはずだが、全員物足りなそうな顔をしている。

「夜ご飯の前だから、追加はダメですからね」
「にゃーん」
「早く夜ご飯食べても、深夜に夜食を食べたいとか言い出すでしょうに」
「今日は良いワインも持ってきたのだ。晩飯は早めにして、子供どもも寝かしつけて3人で楽しもうではないか」

 大福は酒飲まないし、モモと一緒のタイミングで寝ちゃうからな。3人というのは姉さんも含まれているのだろう。

「にゃーん」
「わかりました。少し早めに用意しますけど、調査結果出てるんですか?」
「当然! あの娘な、死亡扱いで廃嫡になっていたぞ」

 なんかとんでもないことを言い出したぞ。



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