家庭菜園物語

コンビニ

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鶏と親子丼

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 大福を乾かしていたはずのモモが、縁側で姉さんをブラッシングしていた。あれ? 大福はどこに行った?

「わん!」
「大福、どこ行って--って頭燃えてるぞ!」

 大福の頭から火柱が立っていた。

「わん」
「コケ」
「ん? コケ?」

 燃えてないのか? コケって、鳴き声か。なんだこりゃ、炎を纏った鳥か?

「大福様の頭の上に鳥さんです」
「にゃーん」

 騒々しくてすみませんね。頭が燃えてるか思ったよ。あれか、フェニックスかなんかなのか?
 よく見れば太々しく、いわゆる不細工な顔をした鳥だな。

「わん!」
「大福様のお友達だそうです。さくら様への伝言を伝えるために力を貸してくれるそうです」
「大福の友達は奇抜だな、その鳥さんも神獣かなにかなのか?」
「コケ」
「幻獣という分類をされていると言ってます。元は異世界から来た鶏さん? だそうです。異世界転生したら、鶏だったけど進化したら火の鳥になった件、クソワロタと言ってます」
「異世界人? 枠なのかよ。それにクソワロタとかモモになってこと言わせてるんだよ」

 あ、言わせてるのはある意味で俺か。この火の鳥がメッセンジャー役になってくれるってことか。
 幻獣ってレアなんじゃないのか? そう考えれば贅沢なメッセンジャーだな。

「炎を纏ってて綺麗です」
「コケ」
「いいのですか?」

 触ってもいいぞとでも言われたのだろうか。
 モモが恐る恐る、手を伸ばし触ろうとする。

「ちょっとモモ、火傷しないのか!」

 俺の制止が間に合わず、モモのは普通に炎を纏った翼に触れる。あれは熱くないのか?
 モモの顔が大福とも姉さんとも違う触り心地で新体感!  というCMが出来そうな嬉しそうな顔をしている。
 そんなに気持ちいいのか? どれどれ、俺も触ってみるか。

「アッツ! なんで!」

 どうして俺だけが熱がっているのかと、モモも驚いている。

「にゃーん」
「すけべな鶏ってこいつ、女好きなんですか」
「にゃーん」
「俺と一緒にしないでください、分別はありますよ」

 ケモナーでも少女趣味でもないし、合法BBA好きでもない、一般的な巨乳好きだ。

「女好きですか?」
「モモはね、気にしなくてもいいんだよ」
 
 少しムカつくがまぁいいか。俺が熱がっているのを見てドヤ顔してやがる。

「コケ」
「とうもろこし? が食べたいと言っています」
「メッセンジャーの交換条件ってことか?」
「コケ」

 こいつも人の言葉はわかるのか。ある程度、通訳さえしてくれたら意思の疎通はできそうだ。

「成功報酬で頼んでもいいか」
「コケ」

 とうもろこしはまだ育ち切ってないんだよな。あと2日もすれば収穫できるし、そのくらい時間があれば大丈夫だろう。
 この鶏? 用にとうもろくしは備蓄しておかないとな。

「それじゃあ、さくらさんに手紙を書くから待てくれ」

 俺が簡単にモモに異変があったこと、西瓜を育てていることを記載して、またここに来てほしい旨を手紙に記載する。
 火の鳥の首にかけれそうな、巾着に手紙を折りたたんで無理くり詰め込む。
 また俺が近寄ると熱くしてくるんではないかと思い、首にかけるのはモモにお願いした。

「それじゃあ、頼むの」
「コケ」

 大福の頭から離れると、大福より2回りはデカい姿に変貌する。すげー、性格は悪いし、顔はブサイクだけど、綺麗な翼だ。って巾着が千切れてる!
 千切れて巾着をめんどくさそうに足で掴んで飛び去って行った。デカくなるなら最初から言えよ。でもまぁこれでさくらさんとも連絡が取れる。あのエルフのことだ、西瓜食いたさに早く戻ってくるだろうさ。

 鶏の話をしていたら鶏肉と卵が食いたくなってきた。今日のご飯はあれしかないな。
 家の中に戻ると、米があることを確認して、フライパンを温める、玉ねぎ卵をショッピングサイトで購入する。
 玉ねぎの収穫可能な期間は9月なので今日は野菜までも購入品だ、まぁ今日くらいはいいよね。
 鶏肉は購入品ではなく、大福がガンジュさんがいる時に狩ってきた……名前忘れたけど鳥の分類なのは間違いなかったはず。うん、自信はないよ。

 和食は全部これ、醤油、みりん、酒、砂糖で合わせ調味料を作る。少しの分量を変えるだけで味が大きく変わるんだから凄いよなー。
 合わせ調味料で玉ねぎを煮る。味がしみしみになるのが好きなので煮た後に少し時間を空ける。

「お父さん、いい匂いがします」
「今日は親子丼だぞ」
「親子の丼です?」
「うーん、よく考えれば親子? 丼かな。鳥の卵と肉を使うから親子丼なんだ」
「親子共々、料理されるのは少し可愛そうです」

 確かに、俺とモモが煮らていると考えればちょっと嫌だな。

「まぁ、感謝していただこうじゃないか」

 玉ねぎに味が染みたタイミングで鶏肉? を入れてさらに煮込み、いい感じとこで卵を半分くらい投入、おき蓋をして少し煮込みあとは余熱で火が通るのをしばし待つ。
 待ってる間に大福と姉さんのご飯を出し、親子丼用の丼と余った卵と中華スープの元で簡単なスープも調理をパパッと作ってしまう。料理は実家にいる時からちょこちょこ習っていて本当によかった思う。モモの身長的にも台所に立つには問題なくなったし、徐々に教えていかないとな。

 火が通った親子丼に更に残った卵をかけて半熟のタイミングで火を止める。
 モモは体が大きくなったのもあり、量を食べるようになった。俺の1.5倍は食べるので問題がないか色々と少し心配ではある。太ってもモモは可愛いんだろうけど、健康面を考えるとな。現状が適正なのかもイマイチわからないが、モモからもうちょっと食べたいですお父さん、と言われてしまえば大盛りにしちゃうでしょ。

 モモの前に大盛りの親子丼とスープ、スプーンを並べて、姉さん、大福と共にいただきますの体制に入る。

「にゃーん」
「「いただきます」」
「わん」

 姉さんのいただきますから食事が始まる。モモがスプーンいっぱいに親子丼を掬い上げると、口の中に消えていく。
 いい食べっぷりで見てて気持ちいい。

「美味しい!」
「そりゃよかった」

 今日も我が家は平和である。

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