家庭菜園物語

コンビニ

文字の大きさ
上 下
7 / 180

エルフ

しおりを挟む
 働くか。働くということは対価の支払いが必要となるが、お金などは俺にはない。
 モモが独り立ちするまでくらいは、助けた者の責任として面倒を見ようと思ってたから結果的には同じことなのだろうか。

「モモさえ良ければ、落ち着けるまで、そうだねー、独り立ちができるまではここにいてくれて構わないよ」
「働かせてもらえるということでしょうか?」
「働くと言ってもお金とかの対価を出せないんだよ」
「食事と寝床があるだけで十分です!」

 服とかはいいのだろうか。俺たちとモモの価値観や考え方はきっと大きく違う。互いのことを理解した上でこれから先のことを徐々に擦り合わせる形でも問題ないか。
 可愛らしい妹的、ダークエルフを愛でると考えればいいのかもしれない。

「にゃーん」
「心配しないでください。俺はそういった性癖はありませんから」
「せい? へき?」
「なんでもないよ。わかった衣食住は保証するよ。野良仕事がメインになるけど問題ないかな?」
「はい! なんでも頑張ります」

 簡単になんでもとは言わない方がいいと思うけどね。悪質な契約に巻き込まれることがあるかもしれないよ。

「にゃーん」

 お前が言うなですか。俺の心の中見えてますか姉さん?
 話がまとまった所で外に出て作業について簡単に説明する。
 最初にモモには俺が耕した後の土の中にじゃがいもの種を植えてもらう。ホースなどには少し驚いていたが、言われた通りに水撒きをしてくれた。じょうろが納屋に入ったままだが必要なかったな。
 ゲーム序盤でもこんな便利なアイテムはそうそうないだろう。ある意味で大福のおかげだな。

 あと2日でニンニクやキャベツの収穫ができるはずだけど、お金的には売りに回さないといけない。
 じゃがいもの個数も30個近くは取れてから全部ふかし芋にするだけで結構な利益になるはずだから、料理の要素は大事なのかもしれない。ファミレス神は食い意地張ってそうだもんな。
 そう考えればニンニクは売りに回さないで料理に活用した方がいいかもしれない。だって入れた入れただけ美味しくなるのがニンニクなんだから。

「わん!」
「また血だらけで戻ってきたな」
「大福様は狩も上手なんですね」

 モモに撫でまわされながら、口周りをホースで洗ってもらってる。大福が狩できるなら肉の確保も出来そうだけど、流石に捌くとか出来ないからなぁ。

「モモは動物捌いたりできる?」
「すいません、出来ないです」

 直ぐに土下座しようとするので、モモをなだめながらなんとか立ち上がらせる。
 まぁこの世界の肉って何が食えるか食えないかわからんしな。
 分厚い肉に塩胡椒にニンニクを混ぜたステーキソースを作って食いてえなぁ。

★★★

 先日、キャベツとニンニクの収穫が完了し、大量に植えたじゃがいも収穫ができた。一度、畑をリセットして今後の方針を考える。
 
「ご主人様、こんなにじゃがいもが収穫できました!」
「おお、流石モモだな」
「別に私が凄い訳ではないです。こんなに早く作物が収穫できるんて凄いです」
「まぁ神様の恩恵ってやつだ」
「ふぁみれす神様凄いです!」
「ああそうだな」

 愛らしい子だな。友人は妹なんて生意気なだけで可愛くないと言っていたが、妹とは可愛いじゃないか。
 さて、このじゃがいもを使ってどんな料理を作るか。種を買ったり、モモの生活用品を買ってもう残金が0に近いから追加で調味料も買えない。少し野菜をそのまま売ってバターを買うか……それとニンニクとじゃがいもを合わせて。

「モモ、今日の料理は期待してていいぞ!」
「はい!」

 ここ数日はずっとパンのミルク粥だったがそろそろ本格的な固形物も問題ないだろう。あれはあれで美味しいと食べてくれていたがこのじゃがいもを使って美味い物を食わせてやろう。
 
 まずはオリーブオイルをフライパンに敷き、じゃがいもを焼く、そこに塩胡椒を多め。味を濃くして、バターとニンニクを3片を微塵切りにした物を投入。ああ、ニンニクの良い香りがしてきたぞ。

「にゃーん」
「まぁちょっと癖のある匂いですがこれが美味いんですよ! はい、ガーリックポテの完成だ!」

 あれ、モモが暗い顔をしている。恐る恐る、1口食べた後に顔が少し歪む。あれ? あれれ?

「……美味しいです」
「にゃーん」

 好物の押し付けはするな……子供は舌が敏感って言うしな。そうかモモには悪いことをしてしまった。

「モモ、ごめんな」
「ほ、本当に美味しいです!」
「いいんだ。モモも苦手だった時は正直に言ってほしい」
「はい……少し刺激が強くて、独特の匂いが苦手かもしれないです」

 モモはミルク粥っていうシンプルで薄味の食べ物は美味しいって言っていたし、濃い味の料理に慣れていないのかもしれない。あとはニンニクは苦手ってことを覚えておこう。
 ここはシンプルにだな。ふかし芋にバターを乗せた、じゃがバターを出してみる。
 警戒しながら一口食べた時に表情がさっきとは違った。相手のことを考えて料理するのは大事だなー。
 姉さんの言う通り、押し付けて美味いだろ! はよくなかった。もっと考えるべきだったな、特に俺は雇用主扱いでモモも気をつかってしまうから、俺が気をつけるべきだ。

「にゃーん」
「そうですね。日々勉強ですね」

 追加で別の料理を用意する。ごま油、醤油、塩で簡単やみつきキャベツを出してみると、モモにはも好評だった。まだモモは痩せ細ったままだし、肉を食わしてやりたいな。買えるんでけど高いのよね。

「わん! わん!」

 なんだ大福、テンション高いな。こんな時間までどこに行っていたんだか。

「おかえり。こんな時間までどこ行っていたんだよ、大福」

 扉を開けた先にはエメラルド色の髪に金色の瞳、美しい女性が佇んでいた。
 
「こんばんは」
「わん! わん!」

 ん、モモが俺の服の裾を掴みながら、女性を除き込んでいる。手が震えていた。姉さんも警戒しているようで、モモの頭の上で様子を窺っている。
 女性が髪をかき上げた時に長耳が見えた。

「……エルフ」

 女性がニッコリと微笑んだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...