家庭菜園物語

コンビニ

文字の大きさ
上 下
3 / 180

新生活

しおりを挟む
 クールビューティーさんが説明してくれた概要はこうだ。
 大福を助けようと、金髪さんのパパにお願いしたが、そもそもが金髪さんの管理がしっかりしていないから大福が怪我を負うことになったようで、自業自得と言われたのと可哀想だけど神様が直接手を下すのは禁止と言われたらしく。
 異世界人の召喚なら問題ないだろうと俺を召喚したが、ここでも問題がいくつか浮上した。
 
 どうやらは大福は【神獣】と呼ばれる特殊な個体らしく、現地人に治療ができないのは当然として、対象となる異世界人にも相応の負担を強いる必要がある状況だった。ようは能力がなくなってしまうことだ。
 本来であればこのような重要事項がある場合については契約書と口頭での案内が推奨されているが、これをわざと飛ばしたらしい。
 ちなみにデメリットがない場合にはネットでもはい、いいえの回答のみで異世界に転生する仕様もあるらしい。そうですよね、今は業務効率化の時代ですからネットも活用しないとね。

「にゃーん」
「それは出来かねます。推奨されているだけで、契約書に明記されてますから」

 姉さんが意図的にはめたのであれば契約は無効ではないかと言ってくれたが、まぁ明記されているなら無理か。そうか。

「にゃーん」
「残念ながらおっしゃる通りではあります。サイゼ様はともかく貴女ほどの力があれば私と刺し違えることはできるかもしれませんのでやめてもらいたいですね」

 姉さんが更に言葉で噛み付く。クールビューティーさんが側にいたのであれば事前に止められたのではないかと。お前らはその娘の教育のために俺を利用した。お前らにとって人、一人の人生をなんだと思っていると、殺すぞと凄む。怖いっす姉さん。あと俺のために怒ってくれてありがとう。

「うぅぅ、モフモフも悠にも意図的に行ったことだし、悪いと思っておる。だから少しばかり謝罪の意味を込めて特典を用意するのじゃ」
「にゃーん」

 俺に変わって姉さんが話を進めてくれる。流石っす姉さん!

「お前もいい歳なのにモフモフにばかり頼って恥ずかしくないのかのぉ」
「にゃーん」

 矛先が再び俺に向けられた。話を逸らさないと。

「そ、それでどんな特典をいただけるんですか?」
「私が心を読めるの忘れているんではないのか、こいつ」
「サイゼ様に変わって、私から特典について案内をさせていただきます」

 クールビューティーさんが説明してくれた内容がこうだった。
1 今いる神の庭を自由に使用してよい
2 この世界で実現可能な無理のない範囲で生活用品などの買い物を可能にする

「小屋も使用していいってことですか?」
「勿論なのじゃ!」

 あの部屋が使えるならとりあえず安心か、でも能力的な特典はないのかな?

「の、能力関連は無理なのじゃ! 既に回復能力という特典を与えているからのう。あとはマニュアルを置いていくので見ておくように!」

 なるほど、簡単に言ってしまえば外に出ると危ないからこの森でスローライフを推奨するよといった話なのか。

「にゃーん」
「ぐぬぬ、それは無料という訳にはいかんのじゃ……」

 姉さんが聞いてくれたのは、光熱費や買い物についても無料で出来る認識でよいのかどうかという確認だった。言われてみればそうか。神様が置いていたマニュアルを開いてルール周りを確認してみる。
 神の庭で育てた農作物や作成した料理、工芸品などは【適正価格】で買取を行い、ショッピングについては価格設定については【適正価格】で販売すると記載がある。なんだこの【適正価格】って言い値ってことか?

「質問なんですが、この適正価格って神様が決めるってことですか?」
「と、当然なのじゃ!」

 こいつ開き直りやがった。

「あんたの言い値でこっちを働かせるつもりか! 名前に沿って企業努力してくれるんだろうな!」
「今、私の名前をバカにしたか!」
「にゃーん」

 割って入ってきた、姉さんに尻尾ビンタを神様含めてくらうこととなった。大福は遊んでいるのかと、俺達の周りをぐるぐる走り回っている。

「にゃーん」
「申し訳ございません。まさか性懲りもなく、転売ヤーのような所業をしようとしているとは」
「うぅぅ、だって仕入れは私が行かないとだから大変なんだもん!」

 どうやら俺が注文した後にこの神様が買い付けに行かないといけないらしい。確かにタダ働きは少し可哀想な気もする。
 
「お主、話がわかるのう!」
「にゃーん」

 姉さんは甘いと言っているが、労働には正当な対価は必要だろう。俺が今回の件で文句を言っているのと同じことだ。

「ではドーンと、50パーセント増しで!」
「アホか!」
「あああぁぁ! 神に向かってアホとか! 神罰が下るぞ!」
「にゃーん」

 姉さんのゲンコツによって、神様の頭が草の先、土までめり込む。

「にゃーん」
「かしこまりました」

 姉さんとクールビューティーの話し合いの結果、販売価格は5パーセント増しで買取については商品の専門家から査定をしてもらい、手数料として5パーセントを引かれることとなった。

「よいか、悠よ! できるだけ高い商品を買うんだぞ!」
「はいはい」

 神様は大福に顔を舐め回されてビショビショになっていた。まぁ本人は楽しそうだけど。
 基本的には善神なんだろう。別に隠さなくたって、こうやって条件のすり合わせさいできっれば最初から大福を助けるのはやぶさかではなかったのに。完全なサバイバルは無理だけどこんな、スローライフなら悪くない。
 大福になめ和されながらこっちをチラッと見てくる。そうか心読めるんだった。

「悪かった」

 俺に心を読むことはできないけど、なんとなく最初にした土下座とも違う、彼女の心からの謝罪だと思った。 

「はい、また大福に会いに来てやってください」

 神様と部下のクールビューティーさん達はそれぞれに大福をもふった後に初回のお金確保のために猫吸い3分1万で2万円の確保ができた。姉さんはとても不満そうだったけど、お金がないと最初の数日間困りますからね。

「にゃーん」
「お、俺からもお金取るんですか!」

 そのせいで我が家に新しいルールが加わってしまった。


★★★

 それは突然だった。大福には嫁が欲しいと愚痴ってはいたが、森から帰ってきたその背中には人が乗せられていた。

「わん!」
「にゃーん」
「嫁って、幼女じゃねぇか! 姉さんも犯罪者とか言うのやめてください!」

 背中に乗せらせた幼女に意識はなく、ボロボロのガリガリだった。大福が怪我をさせるはずはないし、これは元々なのか?
 かなり汚いが、元が褐色の肌なんだろう。それにとんがった耳、これがいわゆるダークエルフなのか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...