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幼馴染ムーブを封殺する

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 改めて自己紹介しよう。
俺の名前は葉桜はざくら晶午しょうご
そして、俺のヒロインは枝垂しだれ桜子さくらこ

先に述べた通り、ツンデレだ。
加減を間違えたツンデレだ。

さて、俺の物語を始める前にいくつか説明しておこう。

さっき言った通り、俺は自分が小説の登場人物であることを自覚している。

そして作者の意思を無視して自由に振る舞うことができるが、それには制限があるようだ。

まず、作者の設定した舞台上でなければ自由は許されない。

物語の舞台は基本的に俺や桜子が通う学校だが、そこから離れると俺は自分の意思で動けなくなる。
作者のお人形に成り下がるのだ。

だから俺は転校などにより強引にヒロインからのアタックを回避するということはできない。

つまり、運命に抗うことは許されていても、運命から逃げることは許されていないということだ。

俺は作者の設定した舞台でラブコメをぶっ壊さなければならない。

襲い来るラブコメの波動をものともせず、桜子エンドフラグをことごとく叩き折り、徹底的に作者に反抗する。
絶対お前には屈しないからな作者ァ!


 ということで、今日も一日が始まった。
桜子は隣に住んでいる。
幼馴染の定番だ。

桜子は毎朝、ラブコメの幼馴染らしく俺のことを起こしに来る。

自分の意思で動けるようになる以前は、俺は朝が弱いという設定だったので桜子に呆れられながら体を揺すり起こされていた。

しかーし!

今や自由の身となった俺は、毎朝バカみたいに早起きするようになった。
これにより桜子の幼馴染ムーブを封殺する。

作者が決めた俺のキャラ設定は、面倒臭がり屋でだらしなく、桜子はそんな俺に対して、
「まったく、晶午は私がいないと駄目ね」
的なことを言う。
それが俺はたまらなく嫌だった。

最近は俺が早起きすることで、習慣的に俺のことを起こしに来た桜子はなんともいえない顔をするようになった。
それが楽しくてしょうがないのだ。
お、噂をすれば。

「晶午~。起きてる~?」
桜子の声と階段を上る音が聞こえてきた。

ブハハハハ!
今日も俺はバッチリ目が覚めてるぜ桜子!
残念だったなぁ!

「入るわよー」
桜子はノックもせずに部屋に入ってきた。
俺は満面の笑みで迎え入れた。

「やあ桜子。俺は起きてるぞ。ざまあみろ! けっけっけ!」

「ざ、ざまあみろってなによ……。なんか最近早起きじゃん」

「ああ。お前に起こされるのは酷く不愉快だからな! もう俺を起こすためにここに来るのはやめたらどうだ?」

「べ、別にあんたのためなんかじゃないわよ! 勘違いしないでよね、気持ち悪い。あんたなんか馬に食われろ」

はい、出ましたよ行き過ぎたツンデレ。
どうですかみなさん。
こんなのがヒロインなんですよ。
はぁ……。

「馬は草食だろ」
「草食動物であるにもかかわらず馬に食われろ。そして消化されてクソになって肥料になれ」
「言い過ぎ言い過ぎ」

こんなのただの毒舌キャラだ。
ツンデレじゃない。
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