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第一章
見ていたまえ
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「カウボーイだ……」
リーダーが呟いた。
「え? カウボーイ?」
聞き返した俺に、リーダーが頷いてから答える。
「そうです。こいつはSランクのダンジョンに出没するモンスターですよ……」
「あ、それは知ってるんだけど。こいつ正式名カウボーイっていうんだ。俺、ずっと牛肉戦士って呼んでたわ」
「ど、どうすればいいですか?」
リーダーは縋るように訊いてきた。
「どうするも何も。戦うしかないだろうな」
「勝てるわけないでしょ!?」
ランが叫んだ。
「だったら逃げるのか? 勝てもしない相手から逃げられると?」
「戦うよりもそっちの方がまだ可能性があるわよ!」
「出口の方向に相手がいるのに?」
「だ、だったら……えーっと」
ランの顔からみるみるうちに血の気が引いていくのが分かる。
こんなやりとりをしている間にも、牛肉戦士はじりじりと間合いを詰めてきている。
リサが涙目で俺の胸ぐらを掴んできた。
「なんとかしてくださいよ! ベテラン冒険者なんでしょ!?」
「ベテランったってまだ三年くらいだからなぁ。お前らからすればベテランかもしれないけど。ははは。まぁ言われなくてもなんとかするさ。こいつは魔法攻撃してこないしな。じゃあ新人諸君、見ていたまえ」
俺はリサの手を振りほどいて牛肉戦士に歩み寄った。
「シラネさん! 武器も持たずに何を!」
リーダーがそう叫んだ瞬間、牛肉戦士が槍を鋭く突いてきた。
俺は体を捻ってそれを躱しながら柄の部分を掴み、槍の中央あたりを蹴り上げた。
槍が牛肉戦士の手元を離れる。
武器ゲット。
奪った槍を構え直しながら距離を詰め、牛肉戦士が苦し紛れに素手で殴りかかってきたのを回転して避けながら槍を薙ぎ払った。
牛肉戦士の首が宙を舞う。
落下してきた首をキャッチして、槍をポイっと投げ捨ててから振り返った。
「ま、ざっとこんなもんよ! はっはっは!」
三人とも唖然とした顔で俺のことを見ていた。
「びっくりしただろ。俺って結構強いんだよ」
……。
ドン引きされたようだ。
「おいリサ。なんとかしてやったぞ。なんか言えよ」
「……」
リサは口を開けてボケーっと俺を見つめているだけで、何も答えてくれなかった。
俺はため息をついた。
無視されるのは慣れてるけど、やっぱりあんまり好きじゃない。
「まぁいいや。もういい加減気づいただろ。ここは危ない。早く出るぞ」
俺がそう言うと、三人とも顔を見合わせた。
そしてリーダーとリサが複雑な表情を浮かべながらこちらに近づいてきた。
しかし、ランは腰が抜けたようだ。
その場にへたり込んでしまった。
俺が近づいて牛肉戦士の生首を持っているのと逆の手を差し伸べると、ランはぎょっとした。
「ひっ……」
完全に怖がられてしまったようだ。
俺は手を引っ込めた。
「リーダー。申し訳ないけど、おんぶしてやってくれ」
「は、はい」
リーダーがランを背負った。
「じゃ、脱出するか。おっとその前に」
俺はリサたちが見つけた宝箱を開けてみた。
中に入っていたのは剣だった。
「お、結構高く売れそう。性能も良さそうだし、普通に使うのもいいか」
誰も何も答えてくれないから俺の独り言だ。
寂しいな。
リーダーが呟いた。
「え? カウボーイ?」
聞き返した俺に、リーダーが頷いてから答える。
「そうです。こいつはSランクのダンジョンに出没するモンスターですよ……」
「あ、それは知ってるんだけど。こいつ正式名カウボーイっていうんだ。俺、ずっと牛肉戦士って呼んでたわ」
「ど、どうすればいいですか?」
リーダーは縋るように訊いてきた。
「どうするも何も。戦うしかないだろうな」
「勝てるわけないでしょ!?」
ランが叫んだ。
「だったら逃げるのか? 勝てもしない相手から逃げられると?」
「戦うよりもそっちの方がまだ可能性があるわよ!」
「出口の方向に相手がいるのに?」
「だ、だったら……えーっと」
ランの顔からみるみるうちに血の気が引いていくのが分かる。
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リサが涙目で俺の胸ぐらを掴んできた。
「なんとかしてくださいよ! ベテラン冒険者なんでしょ!?」
「ベテランったってまだ三年くらいだからなぁ。お前らからすればベテランかもしれないけど。ははは。まぁ言われなくてもなんとかするさ。こいつは魔法攻撃してこないしな。じゃあ新人諸君、見ていたまえ」
俺はリサの手を振りほどいて牛肉戦士に歩み寄った。
「シラネさん! 武器も持たずに何を!」
リーダーがそう叫んだ瞬間、牛肉戦士が槍を鋭く突いてきた。
俺は体を捻ってそれを躱しながら柄の部分を掴み、槍の中央あたりを蹴り上げた。
槍が牛肉戦士の手元を離れる。
武器ゲット。
奪った槍を構え直しながら距離を詰め、牛肉戦士が苦し紛れに素手で殴りかかってきたのを回転して避けながら槍を薙ぎ払った。
牛肉戦士の首が宙を舞う。
落下してきた首をキャッチして、槍をポイっと投げ捨ててから振り返った。
「ま、ざっとこんなもんよ! はっはっは!」
三人とも唖然とした顔で俺のことを見ていた。
「びっくりしただろ。俺って結構強いんだよ」
……。
ドン引きされたようだ。
「おいリサ。なんとかしてやったぞ。なんか言えよ」
「……」
リサは口を開けてボケーっと俺を見つめているだけで、何も答えてくれなかった。
俺はため息をついた。
無視されるのは慣れてるけど、やっぱりあんまり好きじゃない。
「まぁいいや。もういい加減気づいただろ。ここは危ない。早く出るぞ」
俺がそう言うと、三人とも顔を見合わせた。
そしてリーダーとリサが複雑な表情を浮かべながらこちらに近づいてきた。
しかし、ランは腰が抜けたようだ。
その場にへたり込んでしまった。
俺が近づいて牛肉戦士の生首を持っているのと逆の手を差し伸べると、ランはぎょっとした。
「ひっ……」
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俺は手を引っ込めた。
「リーダー。申し訳ないけど、おんぶしてやってくれ」
「は、はい」
リーダーがランを背負った。
「じゃ、脱出するか。おっとその前に」
俺はリサたちが見つけた宝箱を開けてみた。
中に入っていたのは剣だった。
「お、結構高く売れそう。性能も良さそうだし、普通に使うのもいいか」
誰も何も答えてくれないから俺の独り言だ。
寂しいな。
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