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第三章 一月、最初の一週間
友達
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こんにちは。
白石天音です。
昨日から高校生になりました。
いぇい。
小学生以来の学校生活。
緊張するけど頑張ります。
ということで、弟たちと仲良く登校してきた私は教室に入った。
そして松本君を発見する。
松本君も私に気がついたようだ。
私の姿を認めた途端、なんか居住まいを正していた。
席に近づいて声をかける。
「やあやあ松本君。昨日ぶりだね~」
「おはよう白石。今朝は冷え込んだね」
「そうだね~。雪降ってたからねー。君はなんだかあったかそうな恰好してる」
松本君は私服で登校する派の人らしい。
私は松本君を上から下まで観察してみた。
んー。
あったかそうだ!
「俺寒がりなんだ」
松本君は照れたように頭をかいた。
寒がりなのって恥ずかしいことなのかな?
こんなことを恥ずかしがるなんて変わってるなー。
そんなことを思いながら松本君の目をガン見してたら、松本君は口をもごもごさせながら目を逸らした。
「む? どうしたのかね?」
「いや、そんなに目を凝視されたらなんかハズい……」
なんと。
目を見られることすらも恥ずかしいというのかこの子は。
とってもシャイな男の子なんだなー。
んー。
小学生の時にはそんな印象はなかったんだけどな。
まぁあの時の私は周りに気を配る余裕なんか全然なかったし、もしかしたら気づいてなかっただけであの頃からこんな感じだったっていう可能性はあるけど。
しかし困ったな。
私は人の目を見て話すタイプなんだけど。
あーなんか思い出してきたぞ。
そうだそうだ。
集団で生活するっていうのはこういったことが度々あるんだった。
私的には意味の分からないことがみんなの当たり前だったりする。
そういうのがあったせいで小学生の時、私は周りに馴染めなかったんだ。
クラスの子たちがウッキウッキー言ってるお猿さんにしか見えなかったから。
私は過去の失敗を反省し、高校生になるにあたって自分の中でルールを決めた。
それを思い出した私は心の中で唱えた。
「私以外の人は全員変わり者だから、そのつもりで接すること」
こうすることで価値観の違いを受け入れることができる。
つまり、みんなは変な人だから普通の感覚を持つ私がみんなに共感することができないのはしょうがない。
しかしそこで諦めるのではなく、せめて理解する努力をしよう。
そんな感じだ。
この話を恭介にしたら
「天姉以外の人が全員変人? その場合常識的に考えて変なのは天姉の方でしょ」
とかわけわからんことを言っていた。
意味わからん。
何言ってんだあいつ。
つまり恭介も変わってるのだ。
普通である私が共感できないということはそういうことだ。
恭介は変人。
間違いない。
ついでにけいは変態。
日向は天才。
ゆずは繊細。
桜澄さんは多才。
げんじーの書斎、カビ臭い。
あとげんじーはいびきがうるさい。
あれ、なんの話してたんだっけ?
「し、白石? どうしたの急に固まって」
「ん? ああそうだった。君と話してたんだったね」
「話してる相手を目の前にして、話してることを忘れるなんてことがあるの?」
「はっはっは! じゃ、私はそろそろ自分の席に着くことにするよ」
「え……マイペース……」
自由な振る舞いで松本君を翻弄した後、私は自分の席に座った。
私の席は窓際の一番後ろの席。
隣の席は粉雪花火ちゃんという子らしい。
私の前の席は始業式で挨拶してた生徒会長の月酔燈花ちゃん。
燈花ちゃんは読書してる。
私は花火ちゃんに話しかけてみた。
「おはよう」
「あ、おはよう白石さん」
愛想のいい素敵な子だ。
「粉雪花火ちゃんだよね?」
「おぉ。自己紹介もしてないのにどうして私の名前知ってるの?」
「昨日担任の先生が粉雪の隣に座れって言って、今私が座ってる席を指差したでしょ? だからだよ」
「あー。ん? じゃあ下の名前は?」
「なんか花火って感じの顔してるじゃん」
「そ、そうかな。……え、じゃあ勘で当てたってこと!?」
「そうそう。すごいでしょ」
「すごい! びっくりだよ! 鳥肌立っちゃった!」
そう言って花火ちゃんは袖をまくって見せてきた。
「ほら!」
いや、ほらって言われても。
ほんとに鳥肌立ってるし。
まぁ普通に寒いからなのかもしれないけど。
ちょっと待ってくれ。
そんなにきらきらした目で私を見ないでくれ。
単純に昨日燈花ちゃんが花火って呼んでるのを見たから知ってるってだけなのに。
そんなに期待を込めた目を向けられたら言えねぇよ……。
ほんの冗談のつもりだったのに。
やっぱ嘘って良くねぇな。
花火ちゃんの純粋さに私は罪悪感で押し潰されそうだ。
それでもなんとか頑張って私は花火ちゃんに本当のことを言った。
花火ちゃんは
「そうなんだ……」
と言ってわかりやすくシュンとした。
「いや、でもすごいよ。それだけ周りのことが見えてるってことだもんね」
この子いい子だな。
なんかフォローしてくれたぞ。
そんなこんなで担任の三浦先生が来た。
今日から本格的に学校生活が始まる。
頑張るぞ。
白石天音です。
昨日から高校生になりました。
いぇい。
小学生以来の学校生活。
緊張するけど頑張ります。
ということで、弟たちと仲良く登校してきた私は教室に入った。
そして松本君を発見する。
松本君も私に気がついたようだ。
私の姿を認めた途端、なんか居住まいを正していた。
席に近づいて声をかける。
「やあやあ松本君。昨日ぶりだね~」
「おはよう白石。今朝は冷え込んだね」
「そうだね~。雪降ってたからねー。君はなんだかあったかそうな恰好してる」
松本君は私服で登校する派の人らしい。
私は松本君を上から下まで観察してみた。
んー。
あったかそうだ!
「俺寒がりなんだ」
松本君は照れたように頭をかいた。
寒がりなのって恥ずかしいことなのかな?
こんなことを恥ずかしがるなんて変わってるなー。
そんなことを思いながら松本君の目をガン見してたら、松本君は口をもごもごさせながら目を逸らした。
「む? どうしたのかね?」
「いや、そんなに目を凝視されたらなんかハズい……」
なんと。
目を見られることすらも恥ずかしいというのかこの子は。
とってもシャイな男の子なんだなー。
んー。
小学生の時にはそんな印象はなかったんだけどな。
まぁあの時の私は周りに気を配る余裕なんか全然なかったし、もしかしたら気づいてなかっただけであの頃からこんな感じだったっていう可能性はあるけど。
しかし困ったな。
私は人の目を見て話すタイプなんだけど。
あーなんか思い出してきたぞ。
そうだそうだ。
集団で生活するっていうのはこういったことが度々あるんだった。
私的には意味の分からないことがみんなの当たり前だったりする。
そういうのがあったせいで小学生の時、私は周りに馴染めなかったんだ。
クラスの子たちがウッキウッキー言ってるお猿さんにしか見えなかったから。
私は過去の失敗を反省し、高校生になるにあたって自分の中でルールを決めた。
それを思い出した私は心の中で唱えた。
「私以外の人は全員変わり者だから、そのつもりで接すること」
こうすることで価値観の違いを受け入れることができる。
つまり、みんなは変な人だから普通の感覚を持つ私がみんなに共感することができないのはしょうがない。
しかしそこで諦めるのではなく、せめて理解する努力をしよう。
そんな感じだ。
この話を恭介にしたら
「天姉以外の人が全員変人? その場合常識的に考えて変なのは天姉の方でしょ」
とかわけわからんことを言っていた。
意味わからん。
何言ってんだあいつ。
つまり恭介も変わってるのだ。
普通である私が共感できないということはそういうことだ。
恭介は変人。
間違いない。
ついでにけいは変態。
日向は天才。
ゆずは繊細。
桜澄さんは多才。
げんじーの書斎、カビ臭い。
あとげんじーはいびきがうるさい。
あれ、なんの話してたんだっけ?
「し、白石? どうしたの急に固まって」
「ん? ああそうだった。君と話してたんだったね」
「話してる相手を目の前にして、話してることを忘れるなんてことがあるの?」
「はっはっは! じゃ、私はそろそろ自分の席に着くことにするよ」
「え……マイペース……」
自由な振る舞いで松本君を翻弄した後、私は自分の席に座った。
私の席は窓際の一番後ろの席。
隣の席は粉雪花火ちゃんという子らしい。
私の前の席は始業式で挨拶してた生徒会長の月酔燈花ちゃん。
燈花ちゃんは読書してる。
私は花火ちゃんに話しかけてみた。
「おはよう」
「あ、おはよう白石さん」
愛想のいい素敵な子だ。
「粉雪花火ちゃんだよね?」
「おぉ。自己紹介もしてないのにどうして私の名前知ってるの?」
「昨日担任の先生が粉雪の隣に座れって言って、今私が座ってる席を指差したでしょ? だからだよ」
「あー。ん? じゃあ下の名前は?」
「なんか花火って感じの顔してるじゃん」
「そ、そうかな。……え、じゃあ勘で当てたってこと!?」
「そうそう。すごいでしょ」
「すごい! びっくりだよ! 鳥肌立っちゃった!」
そう言って花火ちゃんは袖をまくって見せてきた。
「ほら!」
いや、ほらって言われても。
ほんとに鳥肌立ってるし。
まぁ普通に寒いからなのかもしれないけど。
ちょっと待ってくれ。
そんなにきらきらした目で私を見ないでくれ。
単純に昨日燈花ちゃんが花火って呼んでるのを見たから知ってるってだけなのに。
そんなに期待を込めた目を向けられたら言えねぇよ……。
ほんの冗談のつもりだったのに。
やっぱ嘘って良くねぇな。
花火ちゃんの純粋さに私は罪悪感で押し潰されそうだ。
それでもなんとか頑張って私は花火ちゃんに本当のことを言った。
花火ちゃんは
「そうなんだ……」
と言ってわかりやすくシュンとした。
「いや、でもすごいよ。それだけ周りのことが見えてるってことだもんね」
この子いい子だな。
なんかフォローしてくれたぞ。
そんなこんなで担任の三浦先生が来た。
今日から本格的に学校生活が始まる。
頑張るぞ。
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