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第三章 一月、最初の一週間
再会2
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担任の三浦先生が教室の扉に向かって
「入ってきていいぞ」
と言った。
教室の扉が開かれ、女子生徒が入ってきた。
緩い表情を浮かべているその生徒は俺の初恋相手。
白石天音だった。
「!」
驚きすぎて声が出なかった。
俺はただ間抜けに口を開けたまま白石を眺めた。
白石は黒板に自分の名前を書いた。
「白石天音です。こんなよく分からん時期に転校? してきてしまいましたけど、受け入れてもらえるように頑張るので仲良くしてやってください」
クラスメイトたちが拍手する中、俺は動くこともできずにいた。
そんな俺に白石が気づいた。
「おぉ! 若は吾が故人に非ずや~。やっぱりこの学校だったか」
俺は一瞬遅れて
「お、おう」
と返事した。
え、白石ってこんな感じだったっけ?
小学校の時はもっととげとげしい感じだったし、この前のお祭りの時はなんかすごく儚くて綺麗に見えたのに、今はなんだかふわふわしているように見える。
「いや~この前そこのお祭りに来てたし、もしかしたらとは思ってたけど」
白石は一人で勝手に納得したようで、うんうんと頷いた。
「松本と知り合いだったのか。それじゃ何かあれば松本を頼るといい。とりあえずは粉雪の隣に座ってくれ。そこだ」
「分かりました」
白石が着席したのを確認すると、三浦先生は軽く連絡事項を伝えた。
そして
「始業式には遅れないようにな。以上」
と言い残すと教室を出て行った。
ホームルームが終わった後、みんなすぐに体育館に向かった。
白石への質問とかは後で時間が設けられるようだ。
白石と話したいことはたくさんあるが、今はとりあえず体育館に向かおうと思って席を立つと、肩をトントンと叩かれた。
振り返ると頬を指で突かれた。
「やあ。久しぶり~」
「ひ、さしぶり!」
びっくりして変なとこでつっかえた。
そんな俺を見て白石は少しだけ笑った。
「色々話したいこともあるんだけど、ひとまずは体育館に案内してくれい」
「わ、わかった」
体育館へと向かう途中。
「えっと……」
訊きたいことが多すぎる。
何から話したものかと考えていると
「今日うちにおいでよ。今までのことを説明するから」
と白石が言った。
「……はい!?」
「あ、なんか予定ある?」
「いや……ない、けど」
「あんまり人に話したいようなことじゃないんだけど、まぁ君なら大丈夫でしょ」
「えーっと。信用してくれてるのはすごく嬉しい。でも」
俺なんかがまだ白石の人生に関わってしまっていいのだろうか。
言葉に詰まった俺を見て白石は
「興味ないならいいけど」
と、ぶっきらぼうに言った。
「いや! めちゃくちゃ興味ある!」
「お、おう。そっか」
やばい。
引かれてしまった。
「君には小学校の時お世話になったからね~」
白石が昔を懐かしむように言ったその言葉を俺は強く否定した。
「そんなことない! 俺は、何もできなかったよ」
俯く俺に白石は優しい目を向けた。
「まあまあ。私が勝手にそのお礼をしたいだけだからさ」
「……そっか」
「うん!」
ニコッと笑う白石を見て、俺はまた白石のことを考える日々が始まりそうな予感がした。
「入ってきていいぞ」
と言った。
教室の扉が開かれ、女子生徒が入ってきた。
緩い表情を浮かべているその生徒は俺の初恋相手。
白石天音だった。
「!」
驚きすぎて声が出なかった。
俺はただ間抜けに口を開けたまま白石を眺めた。
白石は黒板に自分の名前を書いた。
「白石天音です。こんなよく分からん時期に転校? してきてしまいましたけど、受け入れてもらえるように頑張るので仲良くしてやってください」
クラスメイトたちが拍手する中、俺は動くこともできずにいた。
そんな俺に白石が気づいた。
「おぉ! 若は吾が故人に非ずや~。やっぱりこの学校だったか」
俺は一瞬遅れて
「お、おう」
と返事した。
え、白石ってこんな感じだったっけ?
小学校の時はもっととげとげしい感じだったし、この前のお祭りの時はなんかすごく儚くて綺麗に見えたのに、今はなんだかふわふわしているように見える。
「いや~この前そこのお祭りに来てたし、もしかしたらとは思ってたけど」
白石は一人で勝手に納得したようで、うんうんと頷いた。
「松本と知り合いだったのか。それじゃ何かあれば松本を頼るといい。とりあえずは粉雪の隣に座ってくれ。そこだ」
「分かりました」
白石が着席したのを確認すると、三浦先生は軽く連絡事項を伝えた。
そして
「始業式には遅れないようにな。以上」
と言い残すと教室を出て行った。
ホームルームが終わった後、みんなすぐに体育館に向かった。
白石への質問とかは後で時間が設けられるようだ。
白石と話したいことはたくさんあるが、今はとりあえず体育館に向かおうと思って席を立つと、肩をトントンと叩かれた。
振り返ると頬を指で突かれた。
「やあ。久しぶり~」
「ひ、さしぶり!」
びっくりして変なとこでつっかえた。
そんな俺を見て白石は少しだけ笑った。
「色々話したいこともあるんだけど、ひとまずは体育館に案内してくれい」
「わ、わかった」
体育館へと向かう途中。
「えっと……」
訊きたいことが多すぎる。
何から話したものかと考えていると
「今日うちにおいでよ。今までのことを説明するから」
と白石が言った。
「……はい!?」
「あ、なんか予定ある?」
「いや……ない、けど」
「あんまり人に話したいようなことじゃないんだけど、まぁ君なら大丈夫でしょ」
「えーっと。信用してくれてるのはすごく嬉しい。でも」
俺なんかがまだ白石の人生に関わってしまっていいのだろうか。
言葉に詰まった俺を見て白石は
「興味ないならいいけど」
と、ぶっきらぼうに言った。
「いや! めちゃくちゃ興味ある!」
「お、おう。そっか」
やばい。
引かれてしまった。
「君には小学校の時お世話になったからね~」
白石が昔を懐かしむように言ったその言葉を俺は強く否定した。
「そんなことない! 俺は、何もできなかったよ」
俯く俺に白石は優しい目を向けた。
「まあまあ。私が勝手にそのお礼をしたいだけだからさ」
「……そっか」
「うん!」
ニコッと笑う白石を見て、俺はまた白石のことを考える日々が始まりそうな予感がした。
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