アリステール

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少年期~

実践

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「ここが魔法実践技術がもつ訓練施設だ。入り口の脇にある魔道具に学生証を通せばいつでも使える」

セドリック先生の指さすほうを見ると、四角い大きな箱にカードの吸い込み口だけが付いてるような不思議な魔道具があった
その言葉に従い学生証をいれると、半分もいれないうちに中に吸い込まれる
魔道具から聞きなれない不思議な音がして、鳴り終わったあとに学生証が同じ口から吐き出される
アリシアも同じようにして学生証を再度手にもつ

「ここを出るときにも同じように学生証をいれるように。設備の稼働にも関わってくるからな」

設備については攻撃魔法用の的や補助魔法用の道具などいろいろあり、この認証を通さないと使用できない仕組みになっているらしい
他の施設についても出入りは出来るけど、それぞれの設備は対応する実践技術の生徒でないと使えないとか

「難しい話が多いが大丈夫か?」
「僕は大丈夫です」
「私も、なんとか」
「アリスが聞き分けいいからつい難しい話になっちまう。本当に7歳か?」
「よく言われますけど7歳です」
「よく言われるのか・・・アリシア、遠慮はいらないから何でも聞けよ。それかアリスに聞け」
「はい、わかりました」

まぁ諸々の事情がありまして

「書類は後にしよう。攻撃魔法は使えるか?」
「使えます」
「・・・一応」
「優秀だな。じゃあそうだな、正面の的に向けて撃ってみてくれ。属性は問わないが、的にだけ絞って撃ってくれよ」
「アリシア、先にやる?」
「・・・後でいいよ」
「じゃあ先生、僕から行きます。水の球を撃ちますので」
「ああ、わかった」

森の中で練習をしていたため火は使いにくかったし、慣れた水の魔法でやってよう
的までは10メートルぐらいか。普通に打ち出すと届かないかもしれない
手を的に向け水の球を作る。周囲の魔力を固めて砲台のようにして、中で水を回転させてから斥力で一気に的へ向けて撃ちだす
狙い通りに的にあたり水が弾ける。このやり方であれば魔法でなくても応用が利くため重宝している射撃魔法だ

「どうでしょう先生」
「・・・今のはお前の魔法か?」
「え?」
「魔法かと聞いている」
「・・・一応、自分の魔力を使ってますので、魔法と言えるんじゃないでしょうか」
「そうか。近くに魔法が使えるものはいたか?」
「いいえ」
「オリジナルか。多様性はあるが魔力は食うし時間がかかる。よほど習熟するまでは詠唱式を学べ」
「詠唱式?」
「ああ、手本を見せよう。『水よ、塊となって敵を撃て』」

そう唱えると先生の手のひらに水が集まり、塊になったあとに打ち出され的に飛んでいき、当たって弾ける

「今のが詠唱式だ。決まった言葉を唱えることで特定の事象を引き出すことが出来る。オリジナルより魔力は食わないし、ものによればオリジナルより威力もある。
魔力の出力が上がっていけばオリジナルの多様性が勝ってくる。とはいえ、保有できる魔力に限度がある以上出来ることは限られてくるがな」

起こった結果だけ見れば同じことだが、キーワードを唱えて少ない魔力で即座に発動させるか、多量の魔力で様々な魔法を組み合わせて結果を引き出すか
なるほど、魔法の仕組みはそうなってるのか

「試してみてもいいですか?」
「先にアリシア、出来るか?」
「・・・はい。私もオリジナルでしたので、さっきの詠唱式でやってみます」
「ん、そうか。構わんぞ」

「『水よ、塊となって敵を撃て』」

先生のときと同じように水の塊が飛び出すが、的を少し逸れて地面に当たってしまう

「アリシアは操作の練習からだな。・・・どうした?」
「いえ、あの。これまで魔法を使うとすぐ気分が悪くなっていたのがなくて」
「あぁ、容量か出力のせいでそうなってたんだろう。詠唱式の利点の一つでもある」
「そうなんですね」
「とはいってもやはり限度もある。さっきの魔法で言えば俺なら2,30回は出来るが、一日はそれで打ち止めだ」

・・・なんとなく察しはついてきたけどあまり口を挟まないほうが良さそうだ
いろいろ調べてから魔法を試してみたほうがよさそう

「アリス、試してみるか?」
「あ、いえ。ちょっと考えたいことが出来たのでまたの機会にします」
「ん?そうか?まぁいいが。んじゃ、時間もちょうどいいし学食に行くぞ。ほかの実践技術のやつらとの顔合わせだ。
そのあとは自由時間だから、授業を組み立てるなりさっさと家に帰るなり好きにしていい。
あ、帰る前に選定の結果だけ俺に渡してくれ。魔法の実践技術のときに教える内容も考えたいからな」

先生の目線を追うと天井付近の壁に時計がかかっているのが見えた。高価だと聞いていたがあるところにはあるもんだ
一回目の前で使っているが、なんとなくインベントリも使うのは憚られたため選定の結果については後で別口で渡そう

食堂は講堂へ続く道の反対を進んだ先にあった
今回は入学記念という形でタダで渡されたが、普段でも銅貨5枚でランチを買えると教えてくれる
以前街で食事したときは4人分ではあったが大銅貨4枚だったため大分安い
もちろん持ち込みの弁当も可能らしいので、帰ってから母さんには相談しておこう。せっかくもらった弁当だけど、今回はランチをいただくとする

顔見せと言われたが特に自己紹介のようなものはないらしい
ほとんどは実践技術で固まって話していることもあり、見知った人もいないので一人で済ませる
アリシアも街の出身なのか顔見知りのほうに行ったようだ。食事はおいしかったので満足していたが、先生からはかわいそうなものを見る目をされた

昼食の後に先生へ選定の結果を渡す。もちろん事前にインベントリから取り出しておいて制服のズボンに入れていたものだ
ついでに魔法に関する本などがないか伺うと、訓練施設から一本道を外れたところに図書館があり、学生証を提示すれば入れると教えてもらう
午後は図書館で過ごしてから帰ろうと決めた
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