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第10章 種を超えた妖精は夢と舞踊る編

古代超巨大戦艦攻略イベント 魔王幼女マコとスレイブの勇者達と狼魔王の心

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『敵モンスター…… 戦力低下』

重力魔法で砂漠に落とされた超巨大戦艦から、大量に湧いていたモンスターの放出が減って来た。

「モンスターは…… 打ち止めかな?」

「うちどめ?」

「あの中にいた悪いモンスター達は、もういないかも…… って事です」

「おわったの?」

「まだだよ。あの中の悪い人をどうにかしないとね」

外部のモンスター達が片付いたので、超巨大戦艦の内部の攻略が始まる様です。

『我等も、行くぞ!』

「お待ちなさい! ウー、貴方はマコさまを乗せて、後方ですよ」

「マコちゃんは、まだ走れないんだから、敵陣内での先行は危険だからね」

『敵陣へのルート確認…… 三ヵ所からの突入が可能です』

「モンスターが出て来た穴と戦艦の上の城塞の入口…… そして、上空ですね」

『上空からが速そうだが…… あの砲撃は面倒だ』

「ウーちゃん?」

『マコの安全が第一だからな……』

「ありがとう♪ ウーちゃんだいすき!」

『当たり前の事だ……』

お礼を言って首に抱き付くマコに、ウーが素っ気なく答えたが、尻尾は…… 千切れんばかりに全力で振れていた。

「フフ…… ウーも、ああ言っているからね。1番安全そうなルートで入ろうか?」

「「はい」」

『フン…… で、何処から入るのだ?』

「グリちゃん?」

『1番安全なルートは……』

 ・
 ・
 ・

 ~ スレイブ首都 とあるクランハウス ~

「やってくれるな。この国の王様は、ようぉ!」

「国自体が戦艦とは…… 流石に、予想外だな」

「だけど、チャンスだよね」

「あん? どう言う事だ?」

「我々がスレイブ側にいる事ですか? しかし、難易度設定のせいで私の家畜は…… ご覧の通りですよ?」

「モンスター達は、弱体化した…… けどね。ぼくら、プレイヤー達には関係無い」

「なるほど……」

「つまり、スレイブ側のプレイヤーで…… この〝やさしい〟のサーバーにいるのは、15歳未満の【ぼく】がいる……」

「俺達…… スレイブの勇者クラン【愉快犯】だけか…… お前の保護者設定をクラン単位にしていて正解だったな」

「ぼくらにとって、スレイブほど自由な国は無いからね。スレイブが、この世界を支配したら…… もっと、楽しめる♪ そう思うでしょ?」

「ああ……」

「ならば、私達は…… スレイブの勇者として、この国を守る事にしましょう」

「よし、スレイブの勇者クラン【愉快犯】出るぞ! ガキと初心者に、この世界の本質を教えてやりな」

犯罪者集団クラン【愉快犯】…… 自由度が売りの新世界で、犯罪行為に意義を見出だしたプレイヤー達のクランの中でも異質な存在感を放つ……

だた愉しそうだったから…… その一言で、始まる行為は…… 子供の悪戯Lvから~レイドボス戦中のクラン達を巻き込む自爆モンスターを送り込むなど、その犯罪行為の幅は広い。

その行為の中心人物には…… 常に発案者の少年とその兄達の姿があった。

「リアルじゃあ…… 出来ない犯罪こそが…… この新世界の〝愉しさ〟だと、教えてあげるよ。だれかが言うでしょ? 人が嫌がる事をやりなさい…… ってね♪」

少年と兄達、愉快犯のクランメンバー達が笑う。

「愉しい…… カーニバルの時間だ」

 ・
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 ・

 ~ スレイブ城塞内部の街 ~

「静かですね……」

「エリちゃん?」

マコ達は相談の結果、逃げ場の無さそうなモンスターを放出していた穴と砲撃が飛び交う上空を避けて…… 街の入口からスレイブに入った。

「私達よりも、先に突入した人達がいたはずです…… その方達は、どうしたのでしょうか?」

『…… 見てる者達がいるな……』

視線を感じたウーが警戒している。

「この感じは…… そう、スレイブにもいるのね……」

「カナちゃん?」

「マコちゃん…… ウー、どうやら…… マコちゃんと貴方の天敵がいるみたいよ」

『魔王種たる我とマコの天敵だと…… まさか!?』

「勇者がいるわ……」

『くっ!』

「ウーちゃん?」

ウーの動揺を感じて、マコが不安そうに声を掛ける。

『マコ……』

ウーの頭に、マコとの出逢いが浮かぶ…

自然発生型の魔王種【狼魔王フェンリル】のウーは…… ウルフの群れに生まれた。

生まれながらに魔王種のウーに、生んだ母ウルフと群れのボスだった父ウルフがひれ伏し…… ウルフの群れで、ウーは孤立した。

魔王種としての存在感が…… 周囲のモンスターにも伝わり、ウーをさらなる孤独に追いやる。

『つまらぬ……』

身体もあっという間に成長し…… ウーは孤独を紛らせる為に、自分にひれ伏すウルフの群れを離れた。

群れから離れて見た世界は…… ウーには、綺麗に見えたが……

すぐに色褪せる…… 好奇心のままに歩くウー対し、ある者達は襲い掛かり…… また、ある者達は逃げ回った。

その様子を見ている内に……

魔王種のウーにとって…… 世界は〝襲って来る者〟と〝逃げる者〟の二つになっていた。

『つまらぬ……』

やがて…… 進む事に飽きたウーが深い森で遺跡を見付ける。

『此処ならば…… 弱き者が向かって来ぬか……』

ウーが遺跡をねぐらにしようと近付くと…… 不思議な者達を見た。

『人族か?』

幼き子供を抱き上げて歩く少女の姿が目に止まる……

『何故だ?』

抱き上げられた幼き子供のキラキラとした瞳に、引き寄せられた。

「あっ、大きないぬさん♪」

その幼き子供が…… マコだった。

 ・
 ・
 ・

「ウーちゃん?」

不安そうに、我を呼ぶマコの声がする……

『大丈夫だ。マコは、我が…… いや、我等が守るからな』

マコを独占出来んのがシャクだが…… マコの瞳が曇らぬ様に、新たな群れで守る!

我は、ウー…… マコを守る狼の魔王よ。

狼とは、群れる者だからな!

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