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日常編

年末祭(後編)

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【ヘルメスの街の繁華街】
1年を通して1番盛り上がっている街の広場に出店された出店の前で、楽しそうに話しているアリスとヨシュア

「えへへぇ♪ヨシュア、ありがとうねぇ!」
「アリスも目覚まし時計取ってくれたからな。ま、アレくらい造作もねーよ」

どうやら射的勝負をしていたアリスとヨシュアは、互いの欲しい物を無事にゲット出来たようだ。とは言っても、ヨシュアの望んだ目覚まし時計は、朝が弱いアリスの為の物であるのだが…

「でもぉ、エルデスさん。歌じょうずなんだねぇ!アタシもぉ、ウットリしちゃったぁ!」

「うふふ~有難うございます~!」

射的勝負をしていたが、エルデスの歌声はしっかり聞こえていたようだ。しかし、もらった籠いっぱいのフルーツはエルフ族で非力なエルデスが持つには重過ぎるようだ

「エルデスさん。重そうですの。サーシャが代わりに持ってあげますの」
「あぅあぅ、コハラコが持つノ!」

重そうにしているエルデスのフルーツ入りの籠を、腕力に自信のあるサーシャが代わりに持とうとしたら、コハラコが自分が持つと言い出した

「良いんですの。サーシャは筋力には自信がありますから大丈夫ですの」

そう言ってサーシャが持とうとしたが…

「俺が持つよ。俺が1番力持ちだからな」

「ふふ。サーシャもヒイロも優しいね」
 

鍛冶師をして筋肉に自信のあるヒイロが籠を持った。その男らしい振る舞いに、彼の彼女の立場であるカルーアは誇らしげな顔をしている。その時…

「きゃうっ!?」
「バタッ」突然コハラコが街の人とぶつかり、その場に転倒してしまった

「す、すみません。うっかりしていました。お嬢さん大丈夫…あっ!擦りむいてしまってるね…そうだ!ポーションを買ってきますから、しばらく待っていてください」

「大丈夫ですの。それには及びませんの。コハラコ、傷口を見せてくださいですの」
「ん~ママ、ここなノ」

「擦りむいただけですね。少しじっとしてて欲しいですの」

そう言うとサーシャは片膝を付いて、擦りむいたコハラコの傷口にそっと手を添えると天使語の呪文を詠唱した…瞬く間に擦り傷は塞がっていった

「おお!凄い回復魔法ですね。しかし、怪我させておいて何もしないのも申し訳ないし…」

「良いですの。この程度なら」

「そういう訳には…そうだ!コレをもらってくれませんか?せめてのものお詫びに」

そう言うと、コハラコにぶつかった20代半ばくらいの男はサーシャに何やら紙の束を手渡して去って行った

「何をもらったんだい?サーシャ…」

「お兄さまから頂いたのと同じ無料券ですの。どうやら、あの人もギルド関係者みたいですの」

「あー、そういやジュリアンさんの部下にあの人見たような気がするな。そうか、彼の部下だったか…」

ヒイロは以前、部下と共に大広場で設営作業を部下と共に頑張っているジュリアンを見たことがあった。その中に先程の男を見たことがあった

「はい、コハラコ。これで、もうひとつ何かに使うと良いですの」
「ママいいノ?」

コハラコの問いかけに笑顔で応えるサーシャ

「サーシャは本当に優しいよね」

「長女としてアタシも鼻が高いわぁ!」

「そうだよな。サーシャは本当に欲が無いよな」

「(/// ^///)そ、そんなに褒められると恥ずかしいですの。サーシャは家族(ファミリー)が幸せならソレが1番嬉しいんですの!」
 

そう言うとサーシャは屈託の無い笑顔を浮かべた。その顔にいつも以上に母性を感じたコハラコは、彼女にベッタリと引っ付いた

「でも無料券まだまだ有るね。残りのソレ、どうするのさ?」

ギルド関係者の兄さんからもらった無料券は30枚ほどの束なので、屋台で使い切るのは難しいほどの量だ

「そうだな、ソレでみんなに服をプレゼントしよう!アリスは15歳にカルーアは14歳、サーシャは13歳、コハラコは6歳になった事だしな…予算オーバーは気にするなよ。足りない分は俺が出すからな」

「お兄ちゃん、良いのぉ?」
「ヒイロ、良いのかい?」
「お兄さま、有難うですの♪」
「ヒイロ、最高なノ!」

「ヒイロさん優しいですね~」
「エルデスの服は俺が買ってやるよ」

ヒイロが4人に服を買うと言ったのを聞いたエルデスの顔が、少し羨ましそうに見えたヨシュアは、いつも自分を気にかけてくれているエルデスの服を自分が買ってやることにした

「そんな~悪いですよ~」
「いつも世話になってるからな。遠慮するんじゃねーよ!」

そうして彼らは服屋に向かった



【服屋】
「いらっしゃい、いらっしゃい!今日は年末祭だ!定価から1割り引きの大セール中だよ!無くなる前に買っていってくれよ!……おっ!ヒイロさんじゃないですか!…妹さん達に年末のプレゼントですか?ウチのバカ息子がいつも世話になってます」

「いえいえ、こちらこそ助かってますよ」

服屋の店主は50過ぎくらいで、その息子が街の警備員をしている。彼の武器防具はヒイロが製作から修理までおこなっているので、店主の父親は日頃の礼を述べていた

「お世話になっているヒイロさんの買い物なら、今日は更にお安くさせてもらいますよ」

店主は他の客には聞こえない様に小声でヒイロに、更なる値引きを約束した



【街の東の公園】
「流石にこの格好は、わたしには可愛すぎないかな?」
 

いつぞやカルーアと外泊デートした時に訪れた公園に、カルーアはヒイロと2人で訪れていた。他の者たちは引き続き年末祭を楽しんでいる

「いや、良く似合ってるよ♪」

「そ、そうかい?何だか照れちゃうね…それにしてもスカート丈が短すぎるよ。絶対サーシャの趣味だよね?」

「あ、あぁサーシャはそんな服ばかり着させたがるよな(笑)」
(俺の一存で買ったことは黙っておこう。すまんなサーシャ)

他の家族(ファミリー)は、ヒイロとカルーアに気を使って2人きりにしてくれたようだ。いつもは中々2人でデートする機会が無いので、2人は久しぶりの平和なひと時を満喫していた

「ヒイロ、ありがとう。その、好きだよ…」
「俺もさ。カルーアが世界一だよ」

ヘルメスの街は今日、年末祭で商店街や大広場に人が集中していて、東の外れの自然公園には2人以外に人が居なかった

それを確認したカルーアは、静かに目を閉じるとヒイロはそれに応えて優しい口付けをした

(こんな楽しい日々だけが毎日続いたら良いな)

まだまだ幼いながらも何度も争いごとに巻き込まれているカルーアは、1日でも多くこんな日が有ることを願った



続く
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