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憎奪戦争編

動き出すオヅベルド公爵

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【オヅベルド公爵邸】
貴族街の中でも、ひときわ大きな佇まいをしている邸宅の大部屋に駆け込む男がいる

「オヅベルド様!有翼魔神エセックスと人狼魔神ランドルフが緊急の用で参られました!」

「何!?通せ」

スズカの街の東10km、マリニウム城の南15kmの辺りに貴族街がある。その中でもひと際大きい屋敷を持つオヅベルド公爵の当主ラッセルの部屋に、使用人が慌てて入って来た

「夜分遅くに申し訳ないな。緊急事態が起きたもんでな、迅速に報せに来たぜ」

「何が起きたと言うのだ。全てを話せ」

悪名高いラッセル・オヅベルドだが、彼は成金趣味丸出しの様な派手な身なりを好まず、身の安全や強い戦力に資金を廻す戦争屋な男だ

「先ほど、鉱山跡で仲間と訓練をしていたのだが…密偵が入った。無論、認識阻害(ハードゥーン)の処理を施し万全を期してはいたがな…」

「何だと!?まさか…王家に嗅ぎ付かれたか?それともアレクス城の魔族か?うむむ、間もなく決起するというこのタイミングでか…マズイな…」

「魔界の強戦士と言ってた割には、脇が甘いではないかっ!油断でもしていたかっ!」

「いえ、あの地の重要性は理解していますので…認識阻害は私が綿密に張っておりました」

エセックス達の報告に噛み付いたのは、ラッセルの息子バートランド。彼は父親の成り上がりの恩恵に預かり過ぎて、自信過剰な性格をしていた。ランドルフの部活レキシントンの意見も右から左のようだ

「よせバートランド!予想外の事は起こるものだ。現に今までのエセックス達の働きは、目を見張るモノがあったのだ」

(このガキ!親の七光りで威張り散らかしやがってよ…ラッセルが聡明な男でなければ、俺が食いちぎってるとこだぜ)

「俺の部下の有能な魔法使い達や、足に自信のある者たちに追わせたのに、まんまと逃げられちまった。Sランク戦士でも詰みの状況なのによ」

ランドルフはボンボンな息子にキレそうになりつつも、的確に情報を伝えていた

「ふむぅ…となれば、SS(ダブルエス)級の者か?いや…【舞闘女神】アテナや、【失光剣聖】エディンバラ、【消去の魔女】徳川有栖、【渇望の魔女】フュール・アシェスタ以外の存在など聞いた事もないな…」

「どうされますか?ラッセル様…」

歴史上でも数人しか認知されていないSS(ダブルエス)ランクが介入したかも知れない可能性に、ラッセルもしばらく沈黙した

「お父様、どうされますか?」

息子バートランドの質問に、顔を上げるラッセル公爵。その目には覚悟を決めた意思が浮かんでいた

「予定を早める!明日の午後からマリニウム城に対し、交戦を開始する!エセックスよ、魔獣族に支度をさせよ!…ランバートは明日の朝1番で、協定を結んでいる貴族と雇った傭兵団に午後から決起すると伝えよ!各報酬は以前に伝えていた額の倍払うと。全てに伝えるのだ!明日マリニウムの歴史は変わるっ!!」

ラッセル・オヅベルドは明日の午後、いよいよマリニウム城に宣戦布告をする覚悟を決めた!



【スズカの街の宿屋】
「はぁはぁ…か、帰ったよぉ…」

「ミクイさん!良かったです、ご無事で…」

ひと足先に宿屋に帰っていたエーデは、本当にミクイが無事に戻ってこれるのか?待っている間、気が気ではなかった

彼女の声を聞いた途端ミクイに飛び掛かり、彼女に大きな怪我は無いか?彼女の全身をくまなくチェックし始めたのだが…

「良かったです。怪我とかは有りませんね…あの状況で無傷で帰還されるなんて、やはり有栖様から厚く信頼されているだけはありますね……ふむぅ…」

「どうしたの?エーデちゃん…」

「あ!あの…こんな時にどうかとは思うのだけど…ミクイさんも良いスタイルしていますね」
 
「まーね、まーね♬むふふー!もっと褒めても良いのだぞ♪まぁ、修行時代にこの世の地獄さえ笑い飛ばせちゃう程の修行をさせられて、無駄肉を限界まで削ぎ落とされた結果よね♪」
 

ミクイは自慢のプロポーションを褒められ、完全に上機嫌になっていた。さっきまで魔神達から命からがら逃げ延びた緊張感も吹き飛んでいる



【マリニウム山岳地帯中央】
「み、ミーコ様っ!?大社の結界が解かれていますよっ!?」

ゴブリンとオークの大量襲撃の異常事態に、大社に何かあったのでは?と予想したミーコの予感はズバリ的中していた

「ミーコ達が離れている間に誰かが訪れて、大社のシステムを利用したに違いないにぇ……まさか!?もう、その時が来ている??」
 

即席の組織であるホロミナティの雰囲気を和やかにする為なのか?それとも本来の正確なのか?仲間と居る間ずっと柔らかい表情をしていたミーコが、大社の結界が解かれていた事に驚きつつも静かに思考を巡らせていた

「今なら中に入れるようですんで、内部を調査してみては。と思うんさな!」

「そうだな…ノエールの言う通りだな。内部を調査するにぇ!ノエール、サケマタ周囲の警戒を頼んだにぇ!」

「仕方ありませんね~。敵が居たらサケマタが掃除しちゃいますね!バクーん♪」

ホロミナティの4人は、大社の結界が解かれているこの好機を逃さず、念願だった内部の調査へと向かった



【マリニウム城工房部】
「調整具合はいかがかな?ヒイロ殿」

「これはスティーブ王、ちょうど今ジョブス王子の手のサイズに合わせて、持ち手部分の微調整を完了したところです」

「父上!このソードは最高の逸品です!」

ジョブス王子の為にソードに最終調整していた工房部に、スティーブ王自らが様子を見に足を運んできた

「このハイミスリルソードは、世界で唯一のジョブス王子の為のソードとして、今この世に生誕しました」

「うむ。よい腕だなヒイロ。明日の昼にジョブスの戴冠式を執り行う、そなたも是非参加して欲しい。城内の者たちにそなたを紹介したいのでな。その後に昼食も兼ねて盛大なパーティを開こう!ジョブスも時期マリニウム王になる身として、恥じない振る舞いをするようにな!」

「はっ、父上!このジョブス立派に務めを果たしてご覧に入れます!」

ジョブス王子の戴冠式の準備を進めるスティーブ王。明日は国を挙げての一大行事にするつもりでいるようだが…明日の午後、マリニウムに歴史的な事件が起きようとは予想だにしていない3人だった



続く
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