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憎奪戦争編

北の勇者隊 襲撃

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【アルバート家】
「ドチャっ!!」
ミャンジャムがテーブルの上に、大きめな麻の袋を置くと結構な音がした

「いくら入ってますの?」
「ますノ?」

「300万入れてあります。ベイオネットの修理代として収めてください」

「えっ!?額が違いませんか?(汗)」

イキナリ置かれた予想外過ぎる大金に戸惑うヒイロ。武器防具セットでの修理とはいえ、これだけの金額を受け取るとしたら…王家の装備の修理をした時くらいだろう

「いえいえ、全然払い過ぎじゃないですよ!クラウンの宮廷鍛冶師でも【ベイオネット】の修理は誰も引き受けてくれませんでしたから…直して貰えるのならケチケチ出来ません!」

「そうですか…なら、遠慮なく頂きます」

依頼を受けた時には「200万」だと聞いていたのだが…それからも聖騎士勇者隊はクエストをこなしまくったので懐(フトコロ)に余裕があるのだろう。「今後もよろしくね」の意味も込めた金額のようだ

「せ、聖騎士勇者隊の皆さん。ケーキが買って有りましたので、良かったら食べて欲しいですの」
  

あまりにミャンジャムの支払いが気持ち良過ぎたもので、本当はヨシュアとの訓練を真面目に頑張る長女アリスを労(ねぎら)う為にサプライズで用意していたケーキを、思わず提供してしまったサーシャ

「甘い物は大好きです。アドル、メリーズ。せっかくですから頂きましょうか?」

「ガチャン!ガランガラン…」
ミャンジャム達がサーシャが出してくれたケーキに手を伸ばしたその時、入り口のドアが勢い良く開かれた

「おっ邪魔しまーす!異世界転移勇者か?イシス王国の勇者は居ませんか?」

「【北の勇者隊】の俺たちが見参だぜ!!」

突然【北の勇者隊】と自称する少女1人と、少年1人がアルバート家に入って来た。年齢は16-17というトコロか?

「ちょっと!!お兄さまの工房に全く別の用件でやって来て、呼び鈴も押さないとは常識が欠けてるのでは、ないですの!?」

「ないですノ!?」

いかにも周りの迷惑など気にもしない。育ちの悪い馬鹿2人組み、みたいな若者が入って来たので、サーシャは明らかに不機嫌な顔をした。ついでにコハラコも真似をしていた

「何だ!?このちっちゃいメスガキは?」

細身の少年がサーシャの頭を指で押した!

「サーシャママはメスガキじゃないの!」

サーシャをママと慕うコハラコは、見知らぬ兄ちゃんがサーシャに気軽に触れた事に対して、明らかに不機嫌になり吸血姫の目付きに変わった

「何この子、吸血鬼なの?」

「はいはーい!僕が【イシスの勇者】って言われてるアドル・クリスニッジだけど……僕に何か用かな?」

「【北の勇者隊】リーダーの【プディング】よ。私たちは人の少ない大陸の北西地域で活動してるから名前が売れなくてね……
ポンコツって噂の転移勇者か、イシス王国を救った勇者とチカラ比べしたいなー。って思った訳なんよ!ビビらずに受けてくれたら、だけどね(笑)」

女ながらもリーダーを務めているという彼女は、コチラの世界で言うライフルを所持している

「彼女の護衛のAランク戦士【ラデュード】だ。正確な剣さばきと速度には負けない自信があんぜ!誰か俺を楽しませてくれよっ!」

彼は戦い方こそはアドルに近いのだが…性格は真逆なイケイケ陽キャ野郎のようだ

「ははーん、なるほどね。自分たちと別の有名な勇者を倒して名前を売りたい訳だね。分からなくもないよ…」

カルーアは、つい最近。妹分のリキュールが、よりヒイロに好かれたい!という想いからの叛乱を受けたので、自分こそが注目されたい!という2人の気持ちが分からなくもなかったのだが…

「けどね!ここはポンコツ勇者の家でも、イシス勇者の家でもないんだ!ヤリたいなら他所でやってくれないかな?あんまり騒がしくすると…わたしの魔法で吹き飛ばすよ!」
  

カルーアは大好きなヒイロの工房に、ズカズカ入ってこられて怒っている。彼女は俗世のことには滅多に興味を持たないが、大切な家族を傷付ける者には容赦しないのだ

「何さ、このお子様エルフは偉そうに!!」

「ん!?待てプディング……そのエルフは…2度も獣神と戦って大活躍したっていう、ハイエルフの【カルーア】さんじゃないのか?」

「えっ!?嘘でしょ?本当に?…」

「やれやれ…わたしもスッカリ有名になっちゃったね。アドルさん、どうするんだい?」

「そうだね…ヨシュア君たちの訓練の邪魔はしたくないから、彼らとは反対側の南側で2人の相手をしてあげようと思うよ」

色々と口を挟んでくるエルフが、今世界で噂のハイエルフ【カルーア】だと分かった【北の勇者隊】の2人は彼女の指示に従い、工房の北側で訓練しているヨシュアとアリスの反対側になる、南側でアドルと勝負する事にしたのだが…



【工房の南側の庭】
「聖騎士のお姉さん何のつもりだい?」

「……!?分かったわラデュード。私たちが2人じゃない。聖騎士の彼女もアドルさんだっけ?彼と組んで2対2で戦うつもりなんじゃないの?」

「おっ!なるほどな。プディング賢いな!」

「……………………………………………あはは。ざーんねん。田舎者の勇者モドキの2人なんて、私(ワタクシ)1人で相手してあげますわよ(笑)」
   

どうやら北の勇者隊とやら2人の礼儀の無ささ加減に、王都クラウンの専属聖騎士であるミャンジャムはかなり怒っているようだ

「こうなると僕でもミャンジャムを大人しくするのには苦労するんだ…まぁ、キミ達の為にそんな苦労をしてあげる気は僕にも無いけどね」

温厚なアドルも、普段お世話になっているアルバート工房での【北の勇者隊】の勝手な振る舞いに腹が立っているようだ

「おいおい、俺もアンタと同じAランクなんだぜ?それにプディングは彼女に劣るだろうが、最新鋭の武器を装備してるんだ。甘く見ると痛い目見るぜ?」

「さーて、痛い目を見るのはどちらかしらね?クラウン城の専属聖騎士は伊達じゃない!って事を教えてあげますわよ♪」

ポッと出の若い2人を懲らしめるのと、修理が終わったばかりのベイオネットを使いたいミャンジャムは、自信とヤル気に満ちた目をしている
プディング&ラデュード VS ミャンジャムの2対1の勝負の行方は?



続く
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