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化け物たちとの遭遇編

「何で有栖なんだよっ!」

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【霞ヶ関】
「………であるから、来年度中には消費税を15%に上げざるを得ません!でないと我が国は財政破綻の可能性も有るでしょう」

「山本虎太郎議員」

「それはあまりにも冷たい政策ではありませんか?海外の戦争による物資の高騰により商品の値上げは止まらない!更に円安が追い打ちをかけて市民の生活を圧迫している!そんな中で効果の高い政策を打てないまま消費税を増税させたら、国民は路頭に迷いますよ?」

「岸谷総理」

「しかし、現在の日本の財政赤字と来年度の政策のための土台作りは今から着手せねば…」


国会では来年の予算案が話し合われていた。淡々と報告する総理の言葉に憤(いきどお)りをあらわにし、厳しく食い下がる若手議員。そこへ…

「答弁中に失礼します!」

「何だね?今は大事な…」

「こ、この映像をご覧下さいっ!」

来年度の予算会議中に駆け込んできた誰かの議員の秘書が、悲痛な叫び声をあげながら室内に飛び込んで来た

「コレは!?何の冗談や?」

「特撮映画か何かかね?国会中にこんな映像を流すとは、どういう事なのかね?」

「特撮とかではありません!これは…今起きている現実なんです!」


室内の巨大モニターに映し出された映像には、東京都内の上空に巨大な生命体が浮かんでいる
上半身は女性の姿で、下半身は数百本の植物の触手をたなびかせ、地上の人々を襲い体内に取り込んでいた
こんな映像を現実だと思える方が、普通ならどうかしているのだが…

「プルルル!」議会に参加している沢山の議員の携帯が緊急のcall音を次々と奏で始めた

「何っ!?空に巨大な化け物が現れた!?」
「次々と人間が喰われている!?」

緊急回線からもたらされた内容は、ソレが特撮とかではなく事実であると告げていた


【東京千代田区上空】
「これは…現実なのか?」

徳川有栖のパパや、ヘリコプターに同乗している全員は目の前の非現実的な光景に固まっている

「アレから離れます!」

パイロットは、いつまでも化け物の傍に居ては危険と判断しその場から離れる。その時、見下ろした眼下では地上の人々が化け物に捕まり取り込まれながら、断末魔の叫び声をあげる地獄絵図が繰り広げられていた



【惑星エリスア】
「あー…見事なまでに壊されちゃってるわね…これじゃ無理かな?」

ミアナから賢者の石を受け取った有栖が、その状態を見て修理するのは難しいだろうと判断したのだが…

「私に貸してください」
 

【賢者の石】はバキバキに割られていたので、流石の有栖も修復は無理だと思ったのだが…エリスアに渡すと彼女は【賢者の石】を右手のひらの手前の空間に固定させて、みんなには分からない天使語で詠唱を始めた…

「お師匠様!【賢者の石】の傷が修復されていきます!」

「………直している…と、言うよりは【賢者の石】の時間を巻き戻している感じだよね?」

「カルーアちゃん流石ね。アリスちゃんが帰ってきた時の状態に戻しているみたいね」

ミアナはエリスアが【賢者の石】を直しているのかと思ったが…カルーアは別の推理をし、徳川有栖もその意見に賛同した

「ふぅ…壊される前に戻せたわ。カルーアちゃんよく分かったわね。若いけど優秀なのね」

無事に修復したエリスアは【賢者の石】を有栖に手渡した

「ちょっと待ってください!ソレで有栖が地球に行けたとしても、魔法の効かない獣神を魔女の有栖にどうやって退治させるんですか?無謀過ぎますっ!」

「優輝…」

さも当然の様に直した【賢者の石】で有栖を地球に送り込もうとするエリスアに対し、優輝は有栖を心配し反対的な意見をした

「それに関しては…地球の女神ガイア様が上級神の方々と相談中です。何か良い方法が伝えられるハズです。見通しも無しに行動する方ではありませんので…」

「それでも!倒せる見通しも無いのに、とりあえずで有栖にファルバァスをぶつけるんですか!?無責任なんじゃ…」

「優輝っ!!!」

有栖は分かっていた。優輝が好きな自分が危険な目に合う可能性が高過ぎるので、自分を心配してくれて敢えて惑星神エリスアに反対意見をしてくれている事を

「何で…何で有栖なんだよっ!!」

優輝は男女の仲は清く在るべきだと地球に居た頃から、そう信じていた
あまりに強く信じ過ぎていて、的外れな条例を実行する様に意見してサキュバスの母娘に、苦しい思いをさせてしまった失敗もあるが…
ソレでも男女は清い仲で在るべき!という考えは今でも大きく変わらない。そんな彼が脱童貞をした相手、徳川有栖が単身で勝ち目の無い戦いに放り込まれようとしているのは、当然我慢がならなかったのだ

「ありがとうね優輝。でも向こうに居る私の両親も優輝の家族も、守れるのなら守りに行きたいのよ。分かるでしょ?」
 

【消去の魔女】とまで言われる様になって久しい有栖とて、地球に帰れるのなら1度は帰りたい!その想いは常にあった。彼らの危機を救う目的なら彼女に躊躇う理由など無いのだ

「有栖…そうか、分かったよ…なら、俺も一緒に連れていってくれ!」

「貴方が同行しても、有栖の助けになる事はほとんど無いのですよ。それでもですか?」

「あぁ、もちろんですよ!」

優輝は惑星神エリスアから覚悟のほどを試される質問をされたが、一欠片の迷いもなく自分も付き合いたいと言いきった。果たしてこの事態は、どんな結果を迎えるのか?



続く
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