上 下
39 / 170
アリス IN 異世界地球

マリニウムの少女

しおりを挟む
ミアナ・ラドシャ
それが私の名前。今から20年前、王都クラウンの先代の王が世界中に声を掛け8つの国が一斉蜂起し、6つの魔族の城へ同時攻撃を掛けた

今もクラウン王国の南東に存続するアレクス城に居た先代魔王は、クラウン王国の先代の国王率いる第1軍に単身で突撃し、その第1軍を巻き込み自爆した

その5年後、私はこの世に生を受けた
魔族との全面戦争から5年という月日では、世界はまだまだ完全復興には至らなかった
更に魔族側は2つの城が落とされただけで残り4っつの城は健在で、人間と魔族との争いはまだ終わっていない

アレクス城からずっと南東に行くと、海に面した場所に【マリニウム城】があるのだけど…王都クラウンと共にアレクス城を挟撃したこの国は多大な被害を出し、虎の子だった予備兵力も半数以上を失った

マリニウム国は防衛兵力の補充が不可欠だった
そこで…マリニウム国は一般からも騎士を雇用するのだけど…兵力不足は解消されなかった

ここで国は禁断の手を使った
戦争孤児となった者、もしくは生活の厳しい家庭から幼い子供を金で買って、騎士候補生として鍛えたのだ

私、ミアナ・ラドシャも金で売られた者の1人だ。測定で高い魔力値を出した私に、国は高い金を用意した。私の両親は「これで生活が立て直せる!」と歓喜して…私を売り払った……

「それではお父さん、お母さん。ミアナはお城で働いてまいります」
 

その後、他を寄せ付けない速さで魔法使いとして成長して行く私を見た国は、勇者候補生のパーティに組み込んだ

「猛者揃いのここでなら、周りの目を気にせずチカラを発揮できる!」
と、その時の私は喜んだのだですが…勇者候補生のパーティの面々も私の潜在能力と早い成長速度に恐怖を感じ、非道な策略で私を貶めてきました

怒った私が本気をだして折檻すると…彼らはある事ない事を上層部に吹き込んで、私はパーティから追放されてしまいました

……………………………………………

親に売られ、国の勇者パーティをも追放された私は…居場所を失いました

「役立たずが立場を無くすのならまだしも…強過ぎて居場所が無くなったって…なんて日だ!」そう思いました

私は生きる意味を失ったと感じたその日の事でした。僅かなお金を握り締めアテもなく彷徨う私は、姿が見えない女性から声を掛けられました

「私は徳川有栖【消去の魔女】と呼ばれているわ。ところで貴女から凄まじい魔力を感じるのだけど…どう?私の弟子にならない?1人でも生きていける魔法(チカラ)を授けてあげられるわよ?」

どうやら最強と噂に聞こえる【消去の魔女】は魔王を失った魔族の全てから、最後の希望とすがりつかれる毎日に心底嫌気がさして、世界中から認知されない程の【認識阻害の魔法】を使ってしまったらしいです

それで私にも彼女の姿が見えないと言う事だそうです。正直、私は迷いました。昨日までは勇者候補生のパーティの一員だったのに、その翌日に最強の魔女からお誘いを受けているのだから

魔女である彼女から教えを受ければ私は…人間側から敵対関係に見られるでしょう…スグに返答は出来ませんでした。しかし、翌日には【徳川有栖】に「よろしくお願いします!」と頭を下げていました


何故なら、勇者パーティから追い出した私に外で活躍されてしまうと…勇者パーティの判断が間違っていた!と思われるのを危惧したようです
そんな彼らは自分たちの保身の為に、私の生命を狙ってきました
更に私を殺せないと判断すると…戦士の男が魔法封じのマジックアイテムを使い、私を犯そうとしてきたのです

その現場を目撃した【徳川有栖】に助けられ、私は人間側に居続けたいという未練を失いました

彼女に頭を下げたその日、彼女に無理やり強制されるような形で、私は勇者候補生達を闇討ちし全滅させました。人を殺(あや)めたのは初めてでしたが…自分たちの事しか考えないクズな人達でしたので、私の良心は痛みませんでした

多少、納得出来ない気持ちもありましたが…彼女から教えを受け始めた日から……いつか、その恩返しがしたいと願っていました



【生命救雫(エリクシール)】
回復系の極大呪文で全身に裂傷を負わされ、精神的にも肉体的にも大ダメージを受けたお師匠様の傷を治していました

「うぅ…あ、あっ!ミアナ…貴方が助けてくれ…たの?」

「はい!ギリギリでしたが、間に合って良かったです!…私の判断ミスで師匠に大きな迷惑をおかけしました。すみませんでした!」
 

お師匠様が目を覚ました。お師匠様は酷い責めを受けていた様で、衣服もボロボロにされていて、偉大な魔女に似合わないお姿です

「私の予備ですけど…お着替えさせてもらいますね。身体のサイズはほぼ同じですから大丈夫だと思いますが…」

「ありがと、ミアナ…」

……………………………………………

「有栖ぅ!無事かっ!?」

私が破壊したこの部屋への入り口の扉から、同い年くらいの男の子が慌てて入ってきました
【ポンコツ勇者】と世間から言われている、お師匠様と同じ星から異世界召喚された少年です

「はぁ……遅いですよ!お師匠様のピンチを私がお助けした後ですよ…」

「そうか、有栖を助けてくれたんだね。ありがとう!…俺もいつかキミのように有栖のチカラになれる男に成りたいよ」

同じ星の出身だからか?優輝という少年はお師匠様に少し馴れ馴れしく映った。ソレが少し腹立たしかったのですが…あんなに嬉しそうなお師匠様の顔が見れたので…取り敢えず「良し」にしておきましょう

「優輝も…心配してくれて…ありがとうね。……そうだミアナ!アンナローザはどうしたの?」

「えっと…凄く腹が立っていたので…対象物を燃やし尽くすまで消えない…お師匠様から教えて頂いた極大魔法で焼いて処分しました」

「えっ?…そっか、殺しちゃったか…奴からファルバァスの対処方法を聞き出すつもりだったんだけど…」

「そうでしたの?…すみません!私ったら…」

「いや、良いよ!どうせあの、ひねくれ者が素直に教えてくれる可能性は低いと思ってたし…そうだ!それとは別に困った事が出来たんだ…ミアナ、頼まれてくれないかな?」

かつての教え子に助けられた後での頼み事に、気が引けるのか有栖が珍しく申し訳ない顔をしているのを、優輝は黙って見つめている

「お師匠様からの頼みでしたら…私に出来ることなら何でもします!」

ソレを聞いた有栖は「ニヤリ」と笑った。一瞬、身構えたミアナ

「7人の魔女に空席が出来ちゃったからさ…ミアナ、私のお願いを聞いて貴女が7人目の魔女になってよ!」

「えぇっ?私が…ですか!?…少し考えさせてください…」

争い事を好まないミアナ
仕えているキウに頼まれ武闘会に参加し、お師匠様の受けた事への仕返しに【最悪の魔女】を殺した結果…彼女は新しい魔女になる事を余儀なくされた



続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~

椿蛍
恋愛
★2022.1.23改稿完了しました。 母が亡くなり、身寄りがないと思っていた私、井垣朱加里(いがきあかり)はまさか父がお金持ちの社長だったなんて知らなかった。 引き取られた先には継母とその娘がいた。 私を引き取ったのは気難しい祖父の世話をさせるためだった。 けれど、冷たい家族の中で祖父だけは優しく、病気の祖父が亡くなるまではこの家にいようと決めた。 優しかった祖父が亡くなり、財産を遺してくれた。 それだけじゃない、祖父は遺言として結婚相手まで決めていた。 相手は『王子様』と名高い白河財閥の三男白河壱都(しらかわいちと)。 彼は裏表のあるくせ者で、こんな男が私の結婚相手!? 父と継母は財産を奪われたと怒り狂うし、異母妹は婚約者を盗られたと言うし。 私が全てを奪ったと、完全に悪者にされてしまった。 どうしたらいいの!? ・視点切り替えあります。 ・R-18には※R-18マークをつけます。 ・飛ばして読むことも可能です。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

ようこそ幼い嫁候補たち ①

龍之介21時
ファンタジー
まもなく20歳になる俺は鍛冶屋を営んでいる 冒険者の父親と2人で暮らしていた。父親はAランク冒険者で、仲間3人と4人パーティを組んでいた 人間同士の戦争が激しさを増す時代。その間隙を縫って、魔族がモンスターを従えて人間達に襲いかかった 瞬く間に世界は荒れ、世界中に孤児が溢れた 俺も父親に引き取られた身だ 義父のパーティメンバーも全員1人ずつ孤児を養っていた ある日、義父達のパーティが全滅した 冒険者ギルドに父親のパーティの遺品を受け取る様に言われ、ギルドに出向くと… ソコには14歳13歳12歳の3人の小女が居た 鍛冶屋として独立している俺に、ギルドから3人を養うように言われて突然、3人の少女たちとの同棲生活が始まった 父親と2人暮らしで仕事一筋だったヒイロに、小女3人との生活の中で何故か起こるエッちいイベントの数々 3人の少女の成長を中心に描かれるヒューマンドラマを題材にした、少しエッちいファンタジー物語 【魔女参上】以降の話は… 【ようこそ幼い嫁候補たちR18-2】で続いて行きます。挿し絵の上限が400枚の為に移っています

【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!

MEIKO
BL
本編完結しています。Ωの涼はある日、政略結婚の相手のα夫の直哉の浮気現場を目撃してしまう。形だけの夫婦だったけれど自分だけは愛していた┉。夫の裏切りに傷付き、そして別れを決意する。あなたの妻(Ω)辞めます!  すれ違い夫婦&オメガバース恋愛。 ※少々独自のオメガバース設定あります (R18対象話には*マーク付けますのでお気を付け下さい。)

【一話完結】悪役令嬢にされたと思っていたら、第二王子と結ばれてしまいました

loba888888
恋愛
「キヌルス第一王女、アルマ。キミはもう、私の婚約相手ではない」 婚約者だったはずの王子は突然私の妹とキスを交わし、冷たく婚約の破棄を告げてきた。 しかしそこに突然、王が現れ……

処理中です...