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アリス IN 異世界地球

消去の魔女の存在感

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【1回戦第1試合】
参加者達は試合の前日をそれぞれに過ごした
身体を休める事に集中した者。街に出掛けてショッピングを楽しんだ者。思わぬ出逢いに交友関係を広げた者。そして夜は明け、武闘会当日を迎えた
8組の参加者によるトーナメント戦形式。1回戦の全4試合は午前中に。午後から準決勝と決勝戦の合計3試合を行う日程だ

試合会場は、いわゆるコロシアム
戦うスペースは直径約300メートル。外周200メートル先に舞台を囲む形で、約1000人が観覧出来る席が設けられている。中央にスーツを来た男性が歩いてきて、片手を高々と上げた

「大変長らくお待たせいたしました!今回で記念すべき第10回の開催となるこの大会は、ロード王から全世界の猛者達への呼び掛けにより、近年類を見ない豪華な猛者達が集結しました!
そんな今回の大会は、世界最強を決める大会と言えるかも知れません!それでは!
早速第1試合を始めましょう。東コーナーからは…激レア種族のコンビ…カルーアandヒイロ
ヒイロ選手は、20年前の魔族との全面戦争の時に絶滅したと言われた緋の目族の生き残り!そしてっ!
パートナーのカルーア選手は、既に絶滅しているのでは?と言われて久しいハイエルフ!しかも、カルーア選手はイシス防衛戦とマルバァス討伐戦で目覚ましい活躍をした、世界の英雄と呼ぶに相応しい少女です!
特にマルバァス討伐戦での活躍は素晴らしく、ドルイド王国の国王から直々に【王国の宝具】まで授与されたと聞いています…あっ!あの背中に付けているマントがそうなのでしょうか?」

「おいおい、俺らの事…根掘り葉掘り調べあげられてないか?」

「そうだね…それに世界最強を決める。だって?【消去の魔女】徳川有栖が参加してないんだから、この大会で貰える称号じゃあ世界最強を自負できる訳が無いよね」
 
ヒイロは自分達の評価の高さに照れながらも、カルーアの知名度の高さに驚いていた


「そして対する西コーナーから現れたのは…なんと!魔族側代表として【不死の魔女】エーデ・E・フォンデ。更に彼女の従者でリッチーのアリシア選手だぁ!」

「BooBooBoo!」
「帰れっ!魔族っ!」
「この人殺しがっ!」
「魔女が何しに来やがった!」

ヒイロとカルーアの登場時の約千人の客席からの大声援とは真逆に、エーデ達の魔族側の登場に観客達は大ブーイングを起こした

「エーデ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫、予想通りだわ。それにしても…人間達って本当、自分勝手ねw」

「全くです。人間も魔族の者を大量に殺しておきながら…まるで自分達だけが被害者の様な態度には…呆れますね」
「エーデも…フュールお姉さまに拾われなかったらと思うと…おぞましいわ!」

観客の全てがカルーア達の味方をし、エーデ達の敵となったかの様な異様な雰囲気になっている。客席の魔族に対しての異様な熱気が充満した頃…

「やっつけろ!」
「生きて返すな!」
「殺せ、絶対殺せ!」
「私達の子供を返してっ!」

客席は悪い方向に熱くなりすぎて、遂にはエーデ達を目掛けて物を投げ込む客まで現れた。が…

「ガインっ!」客が投げた物が客席と舞台の中間辺りで何かにぶつかり、舞台には届かずに落ちた
すると、選手入場口である東門と西門の中間地点に立っている少女が、身にまとっているローブをあげ顔を客達に見せた

「【拡張音域(ワールドヴォイス)】……んっ!んー!ごほん!えーっ…親愛なる王都クラウンの紳士淑女の皆さん、こんにちは…私は本日この大会中の結界師を頼まれた徳川有栖と申します」

「えっ!誰だ?」
「待てよ…徳川有栖って…」
「もしかして、あの有名な魔女…」

「そうです。私は【消去の魔女】とも呼ばれています!今回私は「この大会を世界最強を決められる大会にしたい!だから、魔女の参加をお願いしたい!」
と、親衛隊と共に【アレクス城】までやって来られたロード王の顔を立てまして…まだまだ若輩者ですが【不死の魔女】を参加させました
そして私自身が参加しない代わりに超強固な結界を私が張るので、参加者に遠慮なく戦ってもらう…と言う事でロード王に納得して頂きました!それは、参加者全員に思う存分戦える場を提供し、公平な勝負をしてもらう為です!ですから!この大会中は種族の差などでの差別などは止めてください
……もしも、それが守られないのであれば…私【消去の魔女】があらゆる禁呪を使い、今日を王都クラウンの落日にしてあげますので…重々ご承知おきください……それでは長々と失礼しました」
 


【不死の魔女】が魔女の中で最弱なのは、クラウンの市民も聞いていた。そんな魔女がひとり居ても、ここクラウンはSランク騎士が多数所属する王都なのだから、ついつい強気な態度になった観客達だが…
20年前の大戦でSランク騎士100人以上を、たったひとりで殲滅した【消去の魔女】が目の前に居れば話は全然変わる!徳川有栖を認識した事で、大騒ぎだった会場は一気に静まり返った


「ふー、【消去の魔女】流石の存在感だな。会場が完全に凍りついちまったな」

ヒイロは一触即発の空気に緊張した。カルーアも緊張してるだろうと思い気遣いで声を掛けたのだが…

「【拡張音域(ワールドヴォイス)】あー…皆さん初めまして。わたしはカルーア・アルバートと言います。紹介の通りハイエルフ族です
先に断っておきますが…わたしは1参加者としてこの大会を戦うだけです。ましてや、わたしが生まれる前の大戦での戦死者の為に、戦うつもりは一切有りませんので御理解ください!…失礼いたしました」

まるで、魔族に殺された人間の仇を自分に期待されているかの様な空気に腹が立ったカルーアも【消去の魔女】と同様に意思表示をした
予想外の展開に客席だけでなく、司会者も固まっていたが…我に返り試合開始を宣言する

「そ、それでは1回戦第1試合開始っ!」

遂に世界最大規模の猛者を多数含んだ今回の武闘会が始まった



続く
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