16 / 173
デートSTART
しおりを挟む
【バスの中】
バスの車両のほぼ真ん中に座った亜沙美と太一。待ち合わせ場所のバス停に走ってきた太一は、まだ息が整っていなかった。そんな彼に亜沙美は持ってきた手さげ鞄(カバン)の中から水筒を取り出し、水筒の蓋のコップ部分を渡す
「あっ、助かる。サンキュな…ゴクゴク…ふぅ…」
全てを飲み干すと蓋(コップ)を亜沙美に返した。蓋を閉める亜沙美。横にひと息付けた太一の顔がある
(そう言えば…人の顔がこんなにスグ横にあるなんて、いつ以来だろう?あは、コミュ障にも程があるな、私…)
「んっ!?どうかしたか?」
亜沙美がずっと自分の顔を覗き込んでいる事に気が付いた太一は、何だか恥ずかしくなったので質問をする事で、その恥ずかしさを紛らわす事にした
「いやさぁ、太一って昔から時間に正確だし、嘘つくのとか凄く嫌う性格だったじゃない?…なのに今日は遅刻してきてさ、どうしたのかなぁ?ってね」
「遅刻してねーだろ?そりゃギリギリだったけどよ、何とか間に合ったじゃねーか…それよりも普段の亜沙美の方が、確実に遅刻してるだろ?」
「むぅ~…まぁ、そうなんだけどさ。いつもは、そんなギリギリになる様なことも滅多に無かったじゃん?珍しいなぁ…って」
「うっ!?あー…」
太一が待ち合わせ時間にギリギリになってしまった理由。それは…昨夜、早めに寝ようと段取りはソツ無く終わらせて、いつもより早い時間に布団に入ってはいたのだが…
太一は異性と2人キリでデートなどした経験が無かったので、当日のことを考え出したら緊張してしまい知らぬ内に夜更かしして、完全に睡眠不足になってしまったのである。そんな太一に亜沙美は…
「どったの?顔が赤いけど…もしかして体調が悪かったりするとか?本当に今日、大丈夫?私との約束を守ろうとして無理してない?」
純粋に太一を心配した亜沙美は、顔を近付けて彼の顔色をチェックした。が、異性とのデートの意識が抜けない太一にとって、急接近してきた亜沙美の顔により更に緊張感が増してしまった
「だ、大丈夫だって言ってるだろーがっ!!」
「うひゃ!?ちょっと!そんな大声出さないでよ…ビックリしちゃったよぉ…」
イキナリ大声を出されて驚く亜沙美。太一は恥ずかしさがマックスになり、無意識に出た照れ隠しで声が大きくなった様だが…
「ガシッ!」
すると、不意に背後の人の手が太一の右肩を掴んだ。「えっ!?」驚いて振り返る太一
「なぁ兄ちゃんよぉ…彼女とデートでテンション上がってんのかも知れへんけどなぁ…公共の場で騒ぐのはマナー違反やと思わへんけ?…あぁん!?」
強面(コワモテ)の30歳過ぎくらいの男性が、引きつった笑顔で太一を睨んで注意してきた
「そ、そうですね。失礼しましたっ!」
男性の迫力にたじろんだ太一は、裏返った声で必死に謝罪していた
「くっ、ククククク……」
彼の横で大きな声にならないように、必死に笑いを我慢している亜沙美らを乗せてバスは【縄島スパーランド】に到着した
【縄島スパーランド】
「さっきのバスの中の太一ったら、おっかしーの!笑いを堪えるのに必死になっちゃったわ!あははは♪」
先程の太一の様子を思い出し、気持ち良く笑っている亜沙美。そんな彼女にクレープを差し出す太一
「早く忘れてくれ!ほらよ、頼まれたクレープ。チョコ苺メロンバナナだったよな?」
「ありがとうね!遊園地で歩きながら食べるクレープ、小さい頃からの夢だったんだ!プークスクス(笑)」
「そんな事くらい友達と来れば何時でも出来るだろーが。それと、いつまで笑ってんだよ!」
「あはは…ごめんねぇ。でもさぁ…ウチはお父さんが私が小さい頃に亡くなったじゃん?それからお母さん、ずっと忙しそうに働いてるからさ…家族では来れなかったし…そもそもコミュ障の私じゃ、友達作りってハードル高くてさ(笑)」
(亜沙美…まだ父親が亡くなった悲しさを引きずっちまってるのか…)
笑顔の亜沙美にドキッとさせられた直後、家族のことを寂しそうに話す彼女に黙ってしまう太一だった
続く
バスの車両のほぼ真ん中に座った亜沙美と太一。待ち合わせ場所のバス停に走ってきた太一は、まだ息が整っていなかった。そんな彼に亜沙美は持ってきた手さげ鞄(カバン)の中から水筒を取り出し、水筒の蓋のコップ部分を渡す
「あっ、助かる。サンキュな…ゴクゴク…ふぅ…」
全てを飲み干すと蓋(コップ)を亜沙美に返した。蓋を閉める亜沙美。横にひと息付けた太一の顔がある
(そう言えば…人の顔がこんなにスグ横にあるなんて、いつ以来だろう?あは、コミュ障にも程があるな、私…)
「んっ!?どうかしたか?」
亜沙美がずっと自分の顔を覗き込んでいる事に気が付いた太一は、何だか恥ずかしくなったので質問をする事で、その恥ずかしさを紛らわす事にした
「いやさぁ、太一って昔から時間に正確だし、嘘つくのとか凄く嫌う性格だったじゃない?…なのに今日は遅刻してきてさ、どうしたのかなぁ?ってね」
「遅刻してねーだろ?そりゃギリギリだったけどよ、何とか間に合ったじゃねーか…それよりも普段の亜沙美の方が、確実に遅刻してるだろ?」
「むぅ~…まぁ、そうなんだけどさ。いつもは、そんなギリギリになる様なことも滅多に無かったじゃん?珍しいなぁ…って」
「うっ!?あー…」
太一が待ち合わせ時間にギリギリになってしまった理由。それは…昨夜、早めに寝ようと段取りはソツ無く終わらせて、いつもより早い時間に布団に入ってはいたのだが…
太一は異性と2人キリでデートなどした経験が無かったので、当日のことを考え出したら緊張してしまい知らぬ内に夜更かしして、完全に睡眠不足になってしまったのである。そんな太一に亜沙美は…
「どったの?顔が赤いけど…もしかして体調が悪かったりするとか?本当に今日、大丈夫?私との約束を守ろうとして無理してない?」
純粋に太一を心配した亜沙美は、顔を近付けて彼の顔色をチェックした。が、異性とのデートの意識が抜けない太一にとって、急接近してきた亜沙美の顔により更に緊張感が増してしまった
「だ、大丈夫だって言ってるだろーがっ!!」
「うひゃ!?ちょっと!そんな大声出さないでよ…ビックリしちゃったよぉ…」
イキナリ大声を出されて驚く亜沙美。太一は恥ずかしさがマックスになり、無意識に出た照れ隠しで声が大きくなった様だが…
「ガシッ!」
すると、不意に背後の人の手が太一の右肩を掴んだ。「えっ!?」驚いて振り返る太一
「なぁ兄ちゃんよぉ…彼女とデートでテンション上がってんのかも知れへんけどなぁ…公共の場で騒ぐのはマナー違反やと思わへんけ?…あぁん!?」
強面(コワモテ)の30歳過ぎくらいの男性が、引きつった笑顔で太一を睨んで注意してきた
「そ、そうですね。失礼しましたっ!」
男性の迫力にたじろんだ太一は、裏返った声で必死に謝罪していた
「くっ、ククククク……」
彼の横で大きな声にならないように、必死に笑いを我慢している亜沙美らを乗せてバスは【縄島スパーランド】に到着した
【縄島スパーランド】
「さっきのバスの中の太一ったら、おっかしーの!笑いを堪えるのに必死になっちゃったわ!あははは♪」
先程の太一の様子を思い出し、気持ち良く笑っている亜沙美。そんな彼女にクレープを差し出す太一
「早く忘れてくれ!ほらよ、頼まれたクレープ。チョコ苺メロンバナナだったよな?」
「ありがとうね!遊園地で歩きながら食べるクレープ、小さい頃からの夢だったんだ!プークスクス(笑)」
「そんな事くらい友達と来れば何時でも出来るだろーが。それと、いつまで笑ってんだよ!」
「あはは…ごめんねぇ。でもさぁ…ウチはお父さんが私が小さい頃に亡くなったじゃん?それからお母さん、ずっと忙しそうに働いてるからさ…家族では来れなかったし…そもそもコミュ障の私じゃ、友達作りってハードル高くてさ(笑)」
(亜沙美…まだ父親が亡くなった悲しさを引きずっちまってるのか…)
笑顔の亜沙美にドキッとさせられた直後、家族のことを寂しそうに話す彼女に黙ってしまう太一だった
続く
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる