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第一章

命中

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 一方サトナとロジーは、村の入り口付近にいた、村は新緑にとりかこまれた、苔むした渓谷といった感じの場所にあり、奇妙でおとなしい四足のシカのような動物もいた。そこを、眼鏡をかけた少女が牧草をもって歩いていた。その傍らにバイクがあった。サトナが叫んだ。
「キリ!!ちょっと、バイクと“巨大猟銃”かしてくれない?」
「え?どうしたの?」
「星間アーマーがでたの、旅人に助けられて“独立”してうごいてたから気づかなかったでしょう」
「ああ、そういうこと、ならかしてあげるけど」
 ふと、キリという眼鏡の少女の表情が曇った。
「その人は、あなたが命をはってまで助ける必要があるの?」
「……何いってるの!!命の恩人なんだから、あたりまえじゃない!!」
 パンッ!とキリという少女の肩をたたくと、サトナがバイクにのった。その背に、巨大な、大砲のような猟銃を抱えて。
「じゃあ、いってきます……村の人たちにあとから応援に来るようにいってね」
 ロジーは黙り込んでいた。あの村と村にくるまでにみかけた砂漠の村。建築方法も、模様や様式も、どこかひどく似通っているようだった。


 カルシュはその時、戦闘の勢いと速度が最高潮にたっしていた。足のエンジン音やギアの音がキィンキィン、ウィンウィンとすさまじくうなる。彼は得意の足技をみせた。カポエラのように相手を惑わし、困惑させる、時間稼ぎにはもってこい。だが星間アーマーの体力は無尽蔵に思えた。
(助けがくるまでもつかわからない、ひとまず、休息をとるためにさっきの穴蔵にでももどるか)
 そう考えたその時だった。
《ブルゥルゥルル》
 すさまじいバイクの音がした。やがてそれはの20メートルほどにくるととまり、砂煙をまきあげ現れたサトナが、巨大な猟銃をもって構えた。
「う、うてるの?」
 心配するロジー。
「問題ない、ニギ村の人は皆練習してるから!!」
 次の瞬間、ズドーンと猟銃はひをふいて、それは星間アーマーに直撃した。

《ズドーン》
 噴煙がたちのぼり、それは徐々に薄くなっていく。そして《星間防衛アーマー》らしきもの、つい先ほどまでそうだったものが姿を現す。それは上半身の左側が完全にうちぬかれていた。露わになった内部構造から電気が走っている。
《バヂヂッ、ヂヂッ》
 だがまだその体は動くことを諦めず、のそのそ、ゆらゆらと立ち上がり、次の瞬間、胸部から何かドローン上のものが飛び上がったかと思うと、即座に傷ついた箇所を修復しはじめた。

「まずい!!」
 カルシュは星間アーマーに突進した。

ロジーが叫ぶ。
「ご主人様無茶はっ!」

カルシュが足技で攻撃をする。
《ドスッ、ドスッ、ダスッ》
 胸部、頭部、腕部、だが星間アーマーは、一瞬怯みはするもののすぐに姿勢を立て直してしまう。その時。拳銃が、彼の足元に転がってきた。サトナが放り投げたのだ。
「それ使って!!」

だが瞬間、カルシュは体が固まってしまった。
「カルシュ……」
「ご主人様……まずい」
 ロジーは星間アーマーの視線がずっとこちらをみていることに気づいた。カルシュが自分を失っている少しの瞬間に、アーマーは修復をおえたかにみえた。
「クゥルゥルルルル!!!」
 アーマーが叫ぶ。その雄たけびは空気と大地を、耳をつんだくようなものだった。耳を塞ぐ全員。サトナは周囲をみわたした。背後に、キリの姿をみた。
「キリ!!!逃げて!!」
 ロジーもそちらをみる、初めは人影にみえたが、キリのうしろに巨大な黒い影がみえた。幻覚か?とおもったがそれははっきりと、巨大な、巨人のような影になっていく。そしてキリが、不敵な笑みを浮かべたかにみえた瞬間だった。
 
《ドズン!!!》
「キリキリキリキリキリ、クシャー、クルゥルゥルゥル」
 星間アーマーが、巨大な体を一瞬でサトナの目と鼻の先にまでちかづけていた。
「い、いやああああ!!!」
 サトナが叫んだ瞬間。カルシュはそちらを見る。星間アーマーから巨大な、甲虫のような羽がはえていたのだ。
「“違法改造《メイクオーバー》か”」
 カルシュは、一瞬呼吸を吸い込み、そしてとめた。この先何がおころうと、彼女だけは助けようと、拳銃を手に取りだした。
(ゼロ距離なら……)
 自然と笑みがこぼれる。

 サトナは巨大猟銃の弾をこぼしそうになりながら、いそいでこめ、あとずさりしながら巨大な鎌が地面につきささるのをかわしていく、そして何かに背中があたった。
「サトナ、私たちは一心同体よ」
 そこには、自分をみおろし、眼鏡をひからせている無表情のキリの姿があった。そして猟銃のトリガーにてをかけた。

 カルシュは全速力で走りはじめた。体がおいつかず吹き飛ばされそうな勢いで、飛ばされないように手をむなもとで組んだ。まるでスポーツカーのような速度でサトナのもとへ、だが一瞬、カルシュは背筋に寒いものを感じた。あの少女―キリ―がこちらをむいて、ニヤリ、と笑った。そしてその左手から奇妙な黒く伸びる影があった。
「しまっ……」
 その減速が命とりだった。カルシュの計算でも、右目の義眼の計算でも間に合う速度ではなくなった。カルシュが手を伸ばし、焦った表情をみせ、スローモーションになった世界でさけんだ。
「に、げ、ろ!!!」
 その瞬間、少女はトリガーを思い切りひく。発射された弾丸は、星間アーマーがくねりながらよけ、はるか上方へとんでいった。それをみあげ、そして星間アーマーの巨大な顔にみおろされ、うなだれ、死を覚悟した瞬間。

「バチュン!!!」

 すさまじく正確な一発のスナイパーピンク色の弾丸が、星間アーマーの頭をつらぬいた。
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