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帰宅

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 ドーム状の建物、ビルを横切る空中の車道や車、きらびやかな近未来的都市をゆき、30分ほど歩くと塀のある一軒家についた。大きくもなく小さくもなく、平均的でデザインも平凡な、少し古臭いものだったが、それが彼女と”もう一人”の趣味だった。

 彼女は家に入ると、シャワーをあび、リビングのテーブルの花をかえ、テーブルの脇においてある男性と二人で肩を組んでいる写真を手に取った。
「あなた……もう一年か、あなたがこの世をさってから」
 近くのソファーベッドにこしかけ、涙をながす。何もしない時間、これが唯一、この家でリラックスできる瞬間だった。

 ふとうたたねしていた彼女のもとに、電話が入る。時計をみると6時46分。遅い時刻にだれだろうと電話をとった。現代より幾分か小型化され利便性と丈夫さの向上したスマートフォンだ。
「あなたは、元警官のウェロウさんですね、亡くなったトレバー様の奥様の」
「そうですが、あなたは?」
 「私は人工知能統治システムの警察部門担当の基部AI“メラス”です」
その名前は知らないものはいない。人工知能が政府や統治システムを掌握し始めてから、すべての統治機構の役職の名前は書き替えられ、コードネームと化した。そして警察機構のトップのAIが彼女“メラス”というわけだ。
 彼女が詳しく用事を探ると、まずは盗聴の危険があるので本部に出向いてほしいといわれ、出向くことに。8時まで大丈夫だということで、急いで用事は早く終わらせておきたい彼女は、急いで出向いた。

 見覚えのある警察署、要件を伝えると、モニター室に通された。ここで中央の警視庁と連絡もとれ、彼女のように直接の知らせをうけたものは、ここでAIと対話する。
"ブウゥン"
 モニターに、モノアイの鳥のような装飾を施された人型のロボットが映し出された。手足はまるで彫像のように掘られているだけでその機能をもっていない。彼女は"知能"その役割だけを持つAI。
「あの……私はずいぶん前に仕事をやめていますけど」
「ええ……あなたは2016日まえに警察官を退職されていますね」
「では……どういったご用件で?」
「そうかしこまらないできいてください」
 扉が開き、メイドの格好をしたアンドロイドが、彼女の机に近づきコーヒーカップをおいた。コーヒーが並々につがれており、彼女はいった。
「どうぞ、ごゆっくりなさってください」
「ありがとう」
 彼女がたちさると、話は続けられた。
「……夫と関係ある事ですか?なるべくなら、思い出したくないのですが」
『あなたとあなたの夫は、経済特区と郊外のはざまに居をかまえた、それもずいぶん昔、あなたが警察官をやめる前の事ですね……お二人とも、富裕層と貧困層の格差に悩んでおられました』
「え?どうしてそれを」
「申し訳ございません、ですがこれはあなたに有益な情報かと思われます……あなたの夫は亡くなったあと、AI警官になりました、AI警官は、システムの都合上その身分を明かされないことになっていますが、死後、選択は遺族にゆだねられます、そのまま処分されることがほとんどですが、あなたのように遺族が心理的な障害を持った場合、譲渡されるケースも少なくありません、ただ……少し記憶に異常があるのです、それで任務で重症をおい、再起不可能と判断されました、システム上、こうした場合は、引き取り手を探すか処分する措置がとられます」
……その後も長々と説明をうけた。彼女は知らず知らず行われていた夫にかかわる出来事に衝撃をうけたあと、眼鏡を取りはずす。
「考えさせてください」
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