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メタバースの別れ
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それははじめから現実逃避だったかもしれない。レイはメタバースであった友人にアドバイスを聞いてからすべてが変わった。
そもそもゲームやら、娯楽、パソコンなどの趣味を通ってこなかった真面目な彼にとって、その体験はとても新鮮だった。現実の重苦しさや現実への過剰なこだわりやプライドを忘れさせてくれたのだ。
彼が元恋人のストーカーになったのは3年前、不真面目なホストに恋人を取られてから、気がおかしくなってしまったのだ。気づけばつきまとってしつこく接触していた。悪いとわかってもとめられなかった。
様々な手段を講じてそれをやめようとしたが、最後に手を出したこれがそんなに効果を発揮するとは思わなかった。この3年間のうちに、技術はさらに向上し、映像はさらに美しくなり、あれほどこだわりがつよかった現実よりうつくしく、それでいて粗が目立たなかった。
人間はどうしたって、生物だ。きにしはじめたら皮膚のしわや皮膚の細かい切れ込みや毛穴だって、生物を感じさせる。化粧だって、それと思えば仮面をつけているようなものじゃないか。そうした少しの落胆も感じさせないほどメタバースは進化した。
だが、彼は昨今なやんでいた。恋人への思いは完全に断ち切られたように思えたが、しかし、逆に現実への興味を失ってしまった。その間にメタバースであった件の親友は結婚をしてしまい、このメタバースに姿を現すことも少なくなった。
久しぶりに顔を出したときにそのことをきりだすと、友人はいった。
「完全な別れをつげるべきだね、かつて恋人や現実にそうしたように、メタバースでおおきな決着をつけるんだ、そうすれば気がすむだろう」
そしてレイは決意をする。メタバースの中で元恋人を誘い出した。カフェにむかい、昔話をしたあと、別れ際にじっくり見つめあう。メタバースの中で最初につくったのは彼女だ。そのせいか、画像があらいが彼は気にも留めなかった。これで過去と完全に決別ができる、彼はナイフをとりだした。彼女は想像だにしていなかったのか、彼をじっとみつめるだけだった。
「すまない」
レイは遠慮もなく彼女をつきさした。彼女は倒れた。そして、彼女はその場に倒れ、こういった。
「私は本物よ、ここは現実よ」
レイは答えた。
「おかしい、君はボットじゃないのか?」
レイは自分のつけているヘッドセットにてをかけた。それはただのサングラスのように、外の世界を投影しているだけだった。ようやく気付いた。自分は、知らず知らずまだ彼女に現実であっていて、彼女はいつかの時点で自分を許していたのか、現実と幻想の区別のつかない自分を。
「ど、どうして……君は、数年前病気で死んだはずじゃ」
止血をするが、刺さった場所がわるいのか、流血はとまらず、かつ彼女はもう息も絶え絶えだった。そしていった。
「それは、メタバースの中であなたの友人がいったことよ……」
レイの頭の中には、親友の言葉だけがひびいていた。彼を落ち着かせるとき、必ずこういっていたのだ。
「彼女はわすれろ、病気で死んだことにするんだ」
そもそもゲームやら、娯楽、パソコンなどの趣味を通ってこなかった真面目な彼にとって、その体験はとても新鮮だった。現実の重苦しさや現実への過剰なこだわりやプライドを忘れさせてくれたのだ。
彼が元恋人のストーカーになったのは3年前、不真面目なホストに恋人を取られてから、気がおかしくなってしまったのだ。気づけばつきまとってしつこく接触していた。悪いとわかってもとめられなかった。
様々な手段を講じてそれをやめようとしたが、最後に手を出したこれがそんなに効果を発揮するとは思わなかった。この3年間のうちに、技術はさらに向上し、映像はさらに美しくなり、あれほどこだわりがつよかった現実よりうつくしく、それでいて粗が目立たなかった。
人間はどうしたって、生物だ。きにしはじめたら皮膚のしわや皮膚の細かい切れ込みや毛穴だって、生物を感じさせる。化粧だって、それと思えば仮面をつけているようなものじゃないか。そうした少しの落胆も感じさせないほどメタバースは進化した。
だが、彼は昨今なやんでいた。恋人への思いは完全に断ち切られたように思えたが、しかし、逆に現実への興味を失ってしまった。その間にメタバースであった件の親友は結婚をしてしまい、このメタバースに姿を現すことも少なくなった。
久しぶりに顔を出したときにそのことをきりだすと、友人はいった。
「完全な別れをつげるべきだね、かつて恋人や現実にそうしたように、メタバースでおおきな決着をつけるんだ、そうすれば気がすむだろう」
そしてレイは決意をする。メタバースの中で元恋人を誘い出した。カフェにむかい、昔話をしたあと、別れ際にじっくり見つめあう。メタバースの中で最初につくったのは彼女だ。そのせいか、画像があらいが彼は気にも留めなかった。これで過去と完全に決別ができる、彼はナイフをとりだした。彼女は想像だにしていなかったのか、彼をじっとみつめるだけだった。
「すまない」
レイは遠慮もなく彼女をつきさした。彼女は倒れた。そして、彼女はその場に倒れ、こういった。
「私は本物よ、ここは現実よ」
レイは答えた。
「おかしい、君はボットじゃないのか?」
レイは自分のつけているヘッドセットにてをかけた。それはただのサングラスのように、外の世界を投影しているだけだった。ようやく気付いた。自分は、知らず知らずまだ彼女に現実であっていて、彼女はいつかの時点で自分を許していたのか、現実と幻想の区別のつかない自分を。
「ど、どうして……君は、数年前病気で死んだはずじゃ」
止血をするが、刺さった場所がわるいのか、流血はとまらず、かつ彼女はもう息も絶え絶えだった。そしていった。
「それは、メタバースの中であなたの友人がいったことよ……」
レイの頭の中には、親友の言葉だけがひびいていた。彼を落ち着かせるとき、必ずこういっていたのだ。
「彼女はわすれろ、病気で死んだことにするんだ」
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