6 / 8
亡国の姫
しおりを挟む
一方、エラグはしばらく呆然としていたが、やがてゆっくりとたちあがり、ぽつりといった。
「帰ろう、やっぱり向いてなかったんだ、他に向いている事があるとも思えないが、ウッ……」
突然吐き気がこみあげてくる。吐しゃ物を嘔吐した。情けなさで嫌気がさす。何かできると思っていた。きっといい仲間に会えたり、仕事にやりがいをみつけたり。別に魔王を倒す勇者になんてならなくてよかった。自分の目的を強くもち、達成できればそれでいい。
それは強くなり、自分の姫であるカノンを守り、旅をすること。ぎゅっとこぶしをにぎり顔の前に構えた。想像や理想が頭を駆け巡る。そうだ。ひょっとすると自分は作家の才能があるのかもしれない。また飽きれた妄想に浸っていると、ふと周囲が騒がしい事に気づいた。
「ゴフッ、ゴフゴフッ」
「プゴッ!!プゴッ!!」
何かに周囲を囲まれている。というより、その波に担がれて移動させられているようだった。それは人並みならぬ、モンスターたちの……。下を見下ろす、小柄な下級ゴブリンたちが自分をそれと気づかずに背負いながら移動している。そこでエラグは理解した。
(俺の荷物に呪文がかかっていなかったのか)
ふつふつと怒りがこみあげてくる。ドルジの野郎、わざとこうしたのか?たしかに自分の腰に下げたバッグを大事そうに、楽しそうにゴブリン運んでいる。
「フッ、フッ、ゴブッ」
20体はいるだろうか、冒険者にとって救いなのは、すべてが下級ゴブリンだという事だ。だがエラグにはそれほどその事実は関係がない。
(ど、どうしよう)
ゴブリンを一度に相手にして勝ったことがあるのは2体まで、そんな彼がこんな大量のゴブリンを相手にできるはずがない。
しばらくするとゴブリンはある開けた場所にたどり着いた。どうやら休憩所らしい。ドサ、とあろうことか彼の荷物はその中央におかれ、かつわらわらとゴブリンが持ち物を探りまわした。ある青い宝石のようなものを取り出すと嬉しそうに飛び上がっている。
(ああ、あれか、自分には価値のないものだ、爺さんから譲り受けたものだというが、いまいち用途がわからないんだ)
そこへ今度は、手足と顔を布でしばられた女性が運ばれてきた。みぐるみをはがされているらしい、きっとゴブリンの奴隷として使われるのだろう。哀れだ、と思いながら、彼は半ばあきらめていた。スキを見つけて逃げ出そう。最悪の場合、荷物をすてて。そうして、彼はしばらく待ち、夕暮れが来るのを待った。
「帰ろう、やっぱり向いてなかったんだ、他に向いている事があるとも思えないが、ウッ……」
突然吐き気がこみあげてくる。吐しゃ物を嘔吐した。情けなさで嫌気がさす。何かできると思っていた。きっといい仲間に会えたり、仕事にやりがいをみつけたり。別に魔王を倒す勇者になんてならなくてよかった。自分の目的を強くもち、達成できればそれでいい。
それは強くなり、自分の姫であるカノンを守り、旅をすること。ぎゅっとこぶしをにぎり顔の前に構えた。想像や理想が頭を駆け巡る。そうだ。ひょっとすると自分は作家の才能があるのかもしれない。また飽きれた妄想に浸っていると、ふと周囲が騒がしい事に気づいた。
「ゴフッ、ゴフゴフッ」
「プゴッ!!プゴッ!!」
何かに周囲を囲まれている。というより、その波に担がれて移動させられているようだった。それは人並みならぬ、モンスターたちの……。下を見下ろす、小柄な下級ゴブリンたちが自分をそれと気づかずに背負いながら移動している。そこでエラグは理解した。
(俺の荷物に呪文がかかっていなかったのか)
ふつふつと怒りがこみあげてくる。ドルジの野郎、わざとこうしたのか?たしかに自分の腰に下げたバッグを大事そうに、楽しそうにゴブリン運んでいる。
「フッ、フッ、ゴブッ」
20体はいるだろうか、冒険者にとって救いなのは、すべてが下級ゴブリンだという事だ。だがエラグにはそれほどその事実は関係がない。
(ど、どうしよう)
ゴブリンを一度に相手にして勝ったことがあるのは2体まで、そんな彼がこんな大量のゴブリンを相手にできるはずがない。
しばらくするとゴブリンはある開けた場所にたどり着いた。どうやら休憩所らしい。ドサ、とあろうことか彼の荷物はその中央におかれ、かつわらわらとゴブリンが持ち物を探りまわした。ある青い宝石のようなものを取り出すと嬉しそうに飛び上がっている。
(ああ、あれか、自分には価値のないものだ、爺さんから譲り受けたものだというが、いまいち用途がわからないんだ)
そこへ今度は、手足と顔を布でしばられた女性が運ばれてきた。みぐるみをはがされているらしい、きっとゴブリンの奴隷として使われるのだろう。哀れだ、と思いながら、彼は半ばあきらめていた。スキを見つけて逃げ出そう。最悪の場合、荷物をすてて。そうして、彼はしばらく待ち、夕暮れが来るのを待った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
勇者パーティーを追放された俺は腹いせにエルフの里を襲撃する
フルーツパフェ
ファンタジー
これは理不尽にパーティーを追放された勇者が新天地で活躍する物語ではない。
自分をパーティーから追い出した仲間がエルフの美女から、単に復讐の矛先を種族全体に向けただけのこと。
この世のエルフの女を全て討伐してやるために、俺はエルフの里を目指し続けた。
歪んだ男の復讐劇と、虐げられるエルフの美女達のあられもない姿が満載のマニアックファンタジー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる