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ランナ

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 エラグは、その時ようやく後頭部に柔らかい感触が当たっていることに気がついた。
「……?」
 それが二つ、そして長いことを考えると、人間の足、太もものような感じをうけた。
「なぜ、膝枕?」
「!!!」
 ランナは咄嗟に膝をどけて、あとずさりした。
「べべべべ!!別に介抱なんてしてないんだから!!あんたみたいなクズ!!」
 ぐさり、と心に刺さるものを感じたが、エラグは気にせず起き上がった。
《ガサガサッ》
 その時、ドルジは人差し指を立て口に当て皆に
《シッ》
と合図をおくった。
「フゴウ!!ゴブゴブミー」
「ウホ!!ブゴブゴ」
 ゴブリンの群れが、警戒してあたりを見回っている。
「5匹か、いつもなら訳ないが、こっちは負傷者もいる、それにこいつはアブノーマルすぎる」
「ウムウウ、ムウ」
 ガリンは頭を揺らす。
「……よし」
 決意したように振り向くと、ドルジは、エラグと皆に命じた。
「こいつをおいていくぞ、エラグ、お前に隠れ実の魔法をかける、魔物に見つかりにくくなる魔法だ、下手な動きさえしなければ見つからないし、死ぬことはない」
 そして、エラグの正面に座りこんで、眉間に皺を寄せ暗い顔で見つめた。
「お前がいると調子が狂う、この大国のギルドにお前を受け入れてくれる場所はなかったんだ、冒険者はあきらめるか、世界を放浪するんだな、俺たちほど器の広いものたちもいないが、それでも無理だったんだ、わかるか?あとは自分の運命を自分で背負え」
 そういうと、敵が言ったのを確認し、小さく魔法陣を描き、エラグに魔法をかけた。
「ペペグ!!」
 エラグは自分が自然の一部となったかのような感覚を覚えた。やがて、ドルジ一行がその場を立ち去ろうとしたとき、ランナだけが足をとめた。エラグをじっと見つめる。
「おい、ランナ、決定に文句があるのか!」
「べ、別に、あるわけないでしょ!!フン!!」
 そういうとドスドスと足音をたててさっていった。

 ランナは、最後尾にいて、ブツブツつぶやいていた。
「くっ……わりといい感じのクズだったな!!私はクズなんて好きじゃないけど!クズなんて!!」

 エラグは、洞窟の中で一人静かに呼吸をして、空を見上げていた。そして呟いた。
「終わった、ごめんよ、カノン、俺は何も変われなかった……」
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