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女神

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「ラグ……エラグ」
「はっ、誰!?」
 エラグは勢いよく体を起こした。そこは神殿のような柱の立ち並ぶ場所で、真っ白な世界だった。一方は遠くが霧でみえなくなっていてもう一方には、二つの玉座のような場所とその後ろに祭壇があった。
「ん?」
「私は双子の女神、アルシュとルイシュの片割れアルシュよ、二つの次元の調整を司っていたのだけれど、調整を誤まってあなたの因果を歪めてしまった、おかげであなたは死んでしまって、今はこちらの次元にいる、この“ヴェールガルド”へ」
「……」
 エラグは頭を小突いて自分の正気を疑った。ヴェールガルドはこの惑星の名前だが、なぜこの人はそんな巨大なものの話をしているのだろう。
 しかし妃カットがよく似合う、キリリとした瞳の美人だ。スタイルがよく黒髪で東洋風の―と思いいたったところで頭を痛めた。
「はっ……エラグ、ごめんなさい、本当ならあなたの16の時の“祝祭”の時にあなたは過去を取り戻す予定だった、けれど私は力を使いはたしてしまって……妹も、まだねたままなのよ」
 そういって彼女は視線を落とす、そこには膝枕されている、顔こそよく似ているものの、金髪でショートのこれまた麗しい美人が目をつぶっていた。
「この機会をまっていたの、あなたが強烈な力によって衝撃を与えられたとき、私たちはそれほどの力を使わずとも、あなたと接触できるから」
 エラグはたちあがり、髪の毛をかきながら。照れくさそうに質問する。
「俺は、死んだんですか?」
「いいえ、あなたはまだ死んでいない、正確にいうと、かつて死んでこの世界に送られた、転生したけれど、あなたはその時の記憶をうしなっている、私たちとの会話も―それは、あなたが蓄えてきた善行がやっとあなたのもとへ帰ることができたということ―だから私たちは……」
 その時、女神は何かにきづいてエラグに向けて驚いたような視線を送ったかと思うと、手を伸ばした。エラグは自分の手足をみると、はんとうめいになっていった。
「まずいわ、エラグ―つながった意識が途切れてしまう―エラグ、覚えておいて、あなたには特別なスキルがある、あなたが過去を思い出し、克服すれば、それは使え……」
 エラグはその間にも透明になっていき、ついには女神がすべてを言い終わるまえに消えてしまった。

 女神アルシュは、妹の髪をなでながら、ぽつりつぶやいた。
「あなたが、私たちの祝福に気づけばいいのだけれど、その運命さえも、きっと良い因果に巡り合うためのもの」
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