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第一章

第六節 訪問者

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 屋敷の右隣には教会があり、今二人の来客が教会を通り越して屋敷へと向かった。
“リンゴ―ン”
チャイムがなると、屋敷の中から神父にしては若そうな声がした。だが何だかせわしなさそうに
「少しお待ちください」
 と声がかかる。その前にたつのは、教会本部から指名された例の二人のシスターだった。神父は中で急いで部屋をかたずけていた。その顔は精悍な若者といった形で、すらりとした体型に少しばかりのせいりされたひげがならぶ、まゆげ、まつげがこくワイルドにみえるがよく整えられ、めじりが鋭いが下がり気味で優しそうな印象がある、唇は相応の厚みを帯びているが男らしくいやらしさもない。

 二人はというと、早めに待ち合わせをしてから急いでその辺境の地の地図を広げ、現地の人の助けをかりながらその場所へなんとかたどり着いた。人里離れたところにあっても、人目を避けているというわけではなく、かなり有名だったので、迷うたびに現地の人に聞いて回った。
しかし、山奥の辺鄙なところにあることは変わらず、道中が難路であることに変わりはなかった。だがその道中に協力したことで、二人のシスターは信頼関係を徐々に気づきあげたのだった。
 
「お待たせしまし……た」
 しばらくして出てきた神父が困惑したのも無理はない。方向音痴なシスター・ノレアのいう事を聞いて、シスター・エンリルは一緒になって迷い、体のあちこちに枝やらトゲがささって服がぼろぼろになっていたからだった。
「教会から、話は伺っていましたが、さぞご苦労されたようで」
 と、頭の後ろをかきながら、神父はこの教会の立地を詫びて中へ案内した。

【~♪♪~♪】
 屋敷の奥からはピアノの音がして、何度かエンリルがそこへ目を向けるので、神父は優しくいった。
「娘のエレナです、たったいま習い事のピアノを練習中で、あとであいさつさせますね」
“カコン”
 コーヒーカップが人数分客間の机の上におかれると、三人は例の“悪魔”について話を始めた。
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