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少女は再び目覚める

5 in.牢獄(恋話)

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 これは、ディスティニーが牢獄にいた、過去のループ時の話。


《ガシャン》

「とっとと、入れ!」

看守が、薄汚い少女を牢に放り込む。

「ぎゃーっ・・・・うっうっ」
「明日こそは、罪を認めさせてやる」

「私・・・・わた、私はしてません。ゴホッゴホッ」

連日に渡り、酷い拷問を受けた跡が見受けられる少女は、ダンゴムシのように踞る。

看守は少女の言動に怒り、牢の中に入り込み激しい蹴りをいれる。

「未来の王妃様を、暗殺しようとした極悪人め!」

《ガシッガシッガシッ》

「止めて、その子が死んでしまう」
赤毛の女が叫ぶ。

「お前も、同じようになりたいのか!」
看守が赤毛の女に、拳をあげる。

「ふん、大人しくしていろ。どうせ、お前らは死刑になるんだからな」

看守は、囚人達を威嚇すると、捨て台詞を吐き牢を後にする。






 「嬢ちゃん、悪いことは言わん。やったと言ってしまえ。このまま認め無くても、待っているのは断頭台だ」
元、鍛冶屋のオヤジが少女を嗜める。

「でも、私は・・」

「もう、充分頑張ったわ。私達は貴女が罪を犯したなんて思ってないわ」

「止めろ、これはお嬢ちゃんの、最後の意地なんだろ」
黒髪の元神官が、元鍛冶屋のオヤジを諭す。

「ありがとう・・ありがとうございます。でも、認める事はできない」
少女は、ハラハラと涙を流す。

少女の髪は断髪され、肌には焼かれた跡もある。
それでも、美しい少女だった事がわかるのだ。

「可哀想に年頃の娘の髪を、こんな無造作に切るなんて」
赤毛の女は、少女の髪を撫でる。

「身体中、痛いだろうに」
赤毛の女は少女を抱き締める。

「何か、違う事を考えましょう。そうだ、恋をした事はあるでしょう。ごめんなさい、こんな状態なのに軽率ね」

「いいんです。ですが、私には婚約者がいたので恋という感情が分かりません。もし、良かったら教えて下さい」

「恋が、解らないの」

「はい、婚約は政略でした。私なりに殿下には尽くしたつもりでしたが、あの方は私を嫌っていましたから」

赤毛の女は、少女を抱き締める腕に力を入れる。

「キャサリンさん?」

「貴女の良さを解らない男なんて、忘れてしまいなさい。そいつは尻の青いガキなのよ」

「キャサリンさん。恋をすると、どんな気分になるんですか」

「そうね、フワッフワッな気分になるの。その人の見られたくて、見られたく無くて、不思議な気分になるの」

「見られたくて、見られたく無い。胸も、痛くなりますか」

「そうだね。そんなふうになる時もあるよ」

少女は、煤汚れた顔で微笑む。

「そんな相手がいたのかい」

少女は、コクリと頷き目を閉じる。

「こんな辛い現実を忘れ、寝てしまいな」
元鍛冶屋のオヤジは、爪を剥がされ、膿んでしまった少女の指先を包む。

「おい、元神官。どうにかならないのか。こんな良い子が、なんで苦しむんだ」

元神官は首を横に振り、邪神に祈りを捧げる。

月の光が届く事が無い地下の牢獄。
死と静寂が支配する空間。

そのような場所でも、今宵だけでも願う、

哀れな少女の見る夢が、穏やかであるように。








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