5 / 19
少女は再び目覚める
5 in.牢獄(恋話)
しおりを挟む
これは、ディスティニーが牢獄にいた、過去のループ時の話。
《ガシャン》
「とっとと、入れ!」
看守が、薄汚い少女を牢に放り込む。
「ぎゃーっ・・・・うっうっ」
「明日こそは、罪を認めさせてやる」
「私・・・・わた、私はしてません。ゴホッゴホッ」
連日に渡り、酷い拷問を受けた跡が見受けられる少女は、ダンゴムシのように踞る。
看守は少女の言動に怒り、牢の中に入り込み激しい蹴りをいれる。
「未来の王妃様を、暗殺しようとした極悪人め!」
《ガシッガシッガシッ》
「止めて、その子が死んでしまう」
赤毛の女が叫ぶ。
「お前も、同じようになりたいのか!」
看守が赤毛の女に、拳をあげる。
「ふん、大人しくしていろ。どうせ、お前らは死刑になるんだからな」
看守は、囚人達を威嚇すると、捨て台詞を吐き牢を後にする。
「嬢ちゃん、悪いことは言わん。やったと言ってしまえ。このまま認め無くても、待っているのは断頭台だ」
元、鍛冶屋のオヤジが少女を嗜める。
「でも、私は・・」
「もう、充分頑張ったわ。私達は貴女が罪を犯したなんて思ってないわ」
「止めろ、これはお嬢ちゃんの、最後の意地なんだろ」
黒髪の元神官が、元鍛冶屋のオヤジを諭す。
「ありがとう・・ありがとうございます。でも、認める事はできない」
少女は、ハラハラと涙を流す。
少女の髪は断髪され、肌には焼かれた跡もある。
それでも、美しい少女だった事がわかるのだ。
「可哀想に年頃の娘の髪を、こんな無造作に切るなんて」
赤毛の女は、少女の髪を撫でる。
「身体中、痛いだろうに」
赤毛の女は少女を抱き締める。
「何か、違う事を考えましょう。そうだ、恋をした事はあるでしょう。ごめんなさい、こんな状態なのに軽率ね」
「いいんです。ですが、私には婚約者がいたので恋という感情が分かりません。もし、良かったら教えて下さい」
「恋が、解らないの」
「はい、婚約は政略でした。私なりに殿下には尽くしたつもりでしたが、あの方は私を嫌っていましたから」
赤毛の女は、少女を抱き締める腕に力を入れる。
「キャサリンさん?」
「貴女の良さを解らない男なんて、忘れてしまいなさい。そいつは尻の青いガキなのよ」
「キャサリンさん。恋をすると、どんな気分になるんですか」
「そうね、フワッフワッな気分になるの。その人の見られたくて、見られたく無くて、不思議な気分になるの」
「見られたくて、見られたく無い。胸も、痛くなりますか」
「そうだね。そんなふうになる時もあるよ」
少女は、煤汚れた顔で微笑む。
「そんな相手がいたのかい」
少女は、コクリと頷き目を閉じる。
「こんな辛い現実を忘れ、寝てしまいな」
元鍛冶屋のオヤジは、爪を剥がされ、膿んでしまった少女の指先を包む。
「おい、元神官。どうにかならないのか。こんな良い子が、なんで苦しむんだ」
元神官は首を横に振り、邪神に祈りを捧げる。
月の光が届く事が無い地下の牢獄。
死と静寂が支配する空間。
そのような場所でも、今宵だけでも願う、
哀れな少女の見る夢が、穏やかであるように。
《ガシャン》
「とっとと、入れ!」
看守が、薄汚い少女を牢に放り込む。
「ぎゃーっ・・・・うっうっ」
「明日こそは、罪を認めさせてやる」
「私・・・・わた、私はしてません。ゴホッゴホッ」
連日に渡り、酷い拷問を受けた跡が見受けられる少女は、ダンゴムシのように踞る。
看守は少女の言動に怒り、牢の中に入り込み激しい蹴りをいれる。
「未来の王妃様を、暗殺しようとした極悪人め!」
《ガシッガシッガシッ》
「止めて、その子が死んでしまう」
赤毛の女が叫ぶ。
「お前も、同じようになりたいのか!」
看守が赤毛の女に、拳をあげる。
「ふん、大人しくしていろ。どうせ、お前らは死刑になるんだからな」
看守は、囚人達を威嚇すると、捨て台詞を吐き牢を後にする。
「嬢ちゃん、悪いことは言わん。やったと言ってしまえ。このまま認め無くても、待っているのは断頭台だ」
元、鍛冶屋のオヤジが少女を嗜める。
「でも、私は・・」
「もう、充分頑張ったわ。私達は貴女が罪を犯したなんて思ってないわ」
「止めろ、これはお嬢ちゃんの、最後の意地なんだろ」
黒髪の元神官が、元鍛冶屋のオヤジを諭す。
「ありがとう・・ありがとうございます。でも、認める事はできない」
少女は、ハラハラと涙を流す。
少女の髪は断髪され、肌には焼かれた跡もある。
それでも、美しい少女だった事がわかるのだ。
「可哀想に年頃の娘の髪を、こんな無造作に切るなんて」
赤毛の女は、少女の髪を撫でる。
「身体中、痛いだろうに」
赤毛の女は少女を抱き締める。
「何か、違う事を考えましょう。そうだ、恋をした事はあるでしょう。ごめんなさい、こんな状態なのに軽率ね」
「いいんです。ですが、私には婚約者がいたので恋という感情が分かりません。もし、良かったら教えて下さい」
「恋が、解らないの」
「はい、婚約は政略でした。私なりに殿下には尽くしたつもりでしたが、あの方は私を嫌っていましたから」
赤毛の女は、少女を抱き締める腕に力を入れる。
「キャサリンさん?」
「貴女の良さを解らない男なんて、忘れてしまいなさい。そいつは尻の青いガキなのよ」
「キャサリンさん。恋をすると、どんな気分になるんですか」
「そうね、フワッフワッな気分になるの。その人の見られたくて、見られたく無くて、不思議な気分になるの」
「見られたくて、見られたく無い。胸も、痛くなりますか」
「そうだね。そんなふうになる時もあるよ」
少女は、煤汚れた顔で微笑む。
「そんな相手がいたのかい」
少女は、コクリと頷き目を閉じる。
「こんな辛い現実を忘れ、寝てしまいな」
元鍛冶屋のオヤジは、爪を剥がされ、膿んでしまった少女の指先を包む。
「おい、元神官。どうにかならないのか。こんな良い子が、なんで苦しむんだ」
元神官は首を横に振り、邪神に祈りを捧げる。
月の光が届く事が無い地下の牢獄。
死と静寂が支配する空間。
そのような場所でも、今宵だけでも願う、
哀れな少女の見る夢が、穏やかであるように。
0
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説
恋とはどんなものかしら
みおな
恋愛
レティシアは前世の記憶を持ったまま、公爵令嬢として生を受けた。
そこは、前世でプレイした乙女ゲームの世界。しかもヒロインである妹を苛める悪役令嬢として。
このままでは断罪されてしまう。
そして、悪役令嬢は運命に抗っていく。
*****
読んでくださってる方々、ありがとうございます。
完結はしましたが、番外編を書く可能性のため、完結表示は少し延期します。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
侯爵家の当主になります~王族に仕返しするよ~
Mona
恋愛
第二王子の婚約者の発表がされる。
しかし、その名は私では無かった。
たった一人の婚約候補者の、私の名前では無かった。
私は、私の名誉と人生を守為に侯爵家の当主になります。
先ずは、お兄様を、グーパンチします。
目を覚ましたら、婚約者に子供が出来ていました。
霙アルカ。
恋愛
目を覚ましたら、婚約者は私の幼馴染との間に子供を作っていました。
「でも、愛してるのは、ダリア君だけなんだ。」
いやいや、そんな事言われてもこれ以上一緒にいれるわけないでしょ。
※こちらは更新ゆっくりかもです。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる