48 / 82
異世界での一歩
クリフォードとフリーゲル
しおりを挟む
クリフォードは、小さな森にある東屋に向かっていた。
幼い花嫁の様子を、使用人に聞いたら、家族に可愛がられ、元気に過ごしていたみたいだ。
ほっとした気持ちと、残念な気持ちを同時に感じる。
執着・・・相手は、幼児だ。
自分は、幼女の夫になる予定だが保護者のような位置付けである。
彼女が年頃になれば、年の近いアルフレッドと、心を重ねるのだろう。
神殿で別れた時、父の侯爵に抱かれ、眠りに就いていた。
年の離れた弟が、悔しげな表情をしていたのが思い出される。
眠りに就いた花嫁を、抱き上げる事が出来ない、自分の身体の未熟さと執着。
東屋に立ち入ると、フリーゲルが書類仕事をしている。
東屋の中に使用人の姿はなく、変わりに、子供の娯楽品やら、花嫁が書いた手習いが乱雑に置かれている。
「兄さん、帰れたみたいだね」
癖の強い、年下の従兄弟が話し掛けてくる。
「あぁ、昨日の、お前の活躍のおかげだ」
「あっははは…… それは、良かった」
嫌味を、混ぜて答えても、素知らぬ振りで返してくる精神力。
祖父、先代の侯爵は、死に際まで、従兄弟の処遇に気を揉んでいた。
『使い方を、間違えぬように』父達に、諭していた。
「怒ってる?」
紫色の髪、銀の瞳。中性的な端正な顔立ち。
己の持てる、すべてを武器に代える才能。
「あれは、どうした?」
「あれでは無いよ。リリィーだよね」
「…… 。 何処にいる?」
「ハイハイ。使用人達と小川で水遊びをしてるよ」
従兄弟が、子供用の魔獣図鑑を見せてくる。
「川の底にいる、魔虫取りをしてるんだよ。土の中にいる魔虫では取れない栄養が有ります。此、読んだら飛び出して行っちゃたんだ」
魔虫?栄養?
「魔梟の雛をプレゼントしたんだよ。そろそろ、おやつだから、連れて来てくれないかな」
小さな森、何代か前の侯爵家に嫁いで来た、花の乙女の為に用意された、豪華な鳥籠。
花嫁の衣を剥ぎ取りながら、森の中で狩りを楽しむ様に花嫁を羽交い締めにし、情事を楽しんだ夫達。
情事の事のみ知れば、顔をしかめる者もいるだろう。
しかし、彼等の業績は素晴らしい物だ。
国の中央での、権力の把握。領地改革。
花嫁との間に、優秀な子供を多数儲けた、実績。
当時、高位貴族家であったキャスル家の土台を、更に固めた。
「キャァ!キャァ!はっはっはっ!」
水が流れる音と、幼女の楽しげな声が聞こえてくる。
リリィーが着て要るのは、私達のお下がりだろう、男児の服装だ。
メイドと子守りの少女達は、水に入ってはいないが、濡れている。
犯人は、小川に入っている、リリィーなのが解る。
「キャァ!はっはっ!!キャァ!」
従者も何人か、小川に入り遊び相手になっているようだ。
「お嬢様、仕返しです!」
メイド達が楽しげに、リリィーに水を掛けると、従者とリリィーで倍の水を掛けている。
リリィーの視線が上がり、私を捉えたようだ。
「クリフォード様!!」
私を求めるように、走り寄る子の為に腰を屈め、抱き上げる。
幼い子供、特有の香りが心地良く感じる。
「あのね、会いたかったの。ずっと、会いたかったの」
私は会いたかった。クリフォードが視線に入った途端に、感情が溢れてしまった。
なんて、贅沢な思いなんだろう。
そして、クリフォードに、抱き上げて貰うのが好きなんだと、思う。
不器用な愛情が、伝わってくる。
東屋の中で、フリーゲルに全裸にされ着替えた時は、拷問かと思いました。
小さな子供のように、フリーゲルが広げたパンツの中に足を通すように強制されたからです。
クリフォードは、毛玉を丹念に拭いてくれていた。
着せて貰ったワンピースは、更々で着心地良く、暑い日には最高ですよ。
「毎日、こんな感じなのか?」
「基本、そうだね」
2人の男は、遊び疲れ寝てしまった、幼女を見詰めてる。
「お前が、家督を継がないか?」
クリフォードが、フリーゲルに問いかける。
「嫌だね。自分が、向いて無いのは、解って要るよ」
フリーゲルは、心底、嫌そうに答える。
「先代の意思を、兄さんは誤解している」
「誤解?」
「先の戦にも勝ち、召喚も成功し、聖女も降臨した。今、国は安定している。」
「………」
「先代の侯爵は、恐らく、無謀を視野に入れていたんだろうね」
先代の国王と、本気で、ケンカをしたらしいからね。
「!」
「戦国の世なら、お前を跡目にしただろう。だが、安定した世ならクリフォード以上の適任は、いないだろう」
俺を、追い出すように子爵位を早々に譲ったのが、何よりもの証拠だ。
あの人は、俺の事を、良く思って無かったしね。
「先代が、俺に残した言葉だよ。兄さん、あなたは、お祖父様に信頼されていたんですよ」
あの人は、俺の根本を見抜いていたんだろう。
「それとも、国取りでもやりますか。今なら勝つ自信がありますから」
召喚前に終わった戦争の兵力の6割は、キャスル侯爵家、3男のリオンが率いる領兵。
残りは、サイラス率いる国軍。
隣国、ペルリン国と、キャスル家の領地は、境を接して長期に渡り境界線がはっきりとしなかった。
原因は、希少金属が採掘できる鉱脈だ。
戦争は、勝利を納め、ペルリン王国は滅亡した。
キャスル侯爵家は、境界線を有利に引き直し、希少金属の鉱脈も、手中に納めた。
領兵の武装解除は、未だにされて無く、兵達の士気は、高いままで保っている。
「止めておく」
「良かったよ。面倒だからね。兄さん、家族を守るよ」
「そうか。この場所が好きか?」
「悪くない」
幼い花嫁の様子を、使用人に聞いたら、家族に可愛がられ、元気に過ごしていたみたいだ。
ほっとした気持ちと、残念な気持ちを同時に感じる。
執着・・・相手は、幼児だ。
自分は、幼女の夫になる予定だが保護者のような位置付けである。
彼女が年頃になれば、年の近いアルフレッドと、心を重ねるのだろう。
神殿で別れた時、父の侯爵に抱かれ、眠りに就いていた。
年の離れた弟が、悔しげな表情をしていたのが思い出される。
眠りに就いた花嫁を、抱き上げる事が出来ない、自分の身体の未熟さと執着。
東屋に立ち入ると、フリーゲルが書類仕事をしている。
東屋の中に使用人の姿はなく、変わりに、子供の娯楽品やら、花嫁が書いた手習いが乱雑に置かれている。
「兄さん、帰れたみたいだね」
癖の強い、年下の従兄弟が話し掛けてくる。
「あぁ、昨日の、お前の活躍のおかげだ」
「あっははは…… それは、良かった」
嫌味を、混ぜて答えても、素知らぬ振りで返してくる精神力。
祖父、先代の侯爵は、死に際まで、従兄弟の処遇に気を揉んでいた。
『使い方を、間違えぬように』父達に、諭していた。
「怒ってる?」
紫色の髪、銀の瞳。中性的な端正な顔立ち。
己の持てる、すべてを武器に代える才能。
「あれは、どうした?」
「あれでは無いよ。リリィーだよね」
「…… 。 何処にいる?」
「ハイハイ。使用人達と小川で水遊びをしてるよ」
従兄弟が、子供用の魔獣図鑑を見せてくる。
「川の底にいる、魔虫取りをしてるんだよ。土の中にいる魔虫では取れない栄養が有ります。此、読んだら飛び出して行っちゃたんだ」
魔虫?栄養?
「魔梟の雛をプレゼントしたんだよ。そろそろ、おやつだから、連れて来てくれないかな」
小さな森、何代か前の侯爵家に嫁いで来た、花の乙女の為に用意された、豪華な鳥籠。
花嫁の衣を剥ぎ取りながら、森の中で狩りを楽しむ様に花嫁を羽交い締めにし、情事を楽しんだ夫達。
情事の事のみ知れば、顔をしかめる者もいるだろう。
しかし、彼等の業績は素晴らしい物だ。
国の中央での、権力の把握。領地改革。
花嫁との間に、優秀な子供を多数儲けた、実績。
当時、高位貴族家であったキャスル家の土台を、更に固めた。
「キャァ!キャァ!はっはっはっ!」
水が流れる音と、幼女の楽しげな声が聞こえてくる。
リリィーが着て要るのは、私達のお下がりだろう、男児の服装だ。
メイドと子守りの少女達は、水に入ってはいないが、濡れている。
犯人は、小川に入っている、リリィーなのが解る。
「キャァ!はっはっ!!キャァ!」
従者も何人か、小川に入り遊び相手になっているようだ。
「お嬢様、仕返しです!」
メイド達が楽しげに、リリィーに水を掛けると、従者とリリィーで倍の水を掛けている。
リリィーの視線が上がり、私を捉えたようだ。
「クリフォード様!!」
私を求めるように、走り寄る子の為に腰を屈め、抱き上げる。
幼い子供、特有の香りが心地良く感じる。
「あのね、会いたかったの。ずっと、会いたかったの」
私は会いたかった。クリフォードが視線に入った途端に、感情が溢れてしまった。
なんて、贅沢な思いなんだろう。
そして、クリフォードに、抱き上げて貰うのが好きなんだと、思う。
不器用な愛情が、伝わってくる。
東屋の中で、フリーゲルに全裸にされ着替えた時は、拷問かと思いました。
小さな子供のように、フリーゲルが広げたパンツの中に足を通すように強制されたからです。
クリフォードは、毛玉を丹念に拭いてくれていた。
着せて貰ったワンピースは、更々で着心地良く、暑い日には最高ですよ。
「毎日、こんな感じなのか?」
「基本、そうだね」
2人の男は、遊び疲れ寝てしまった、幼女を見詰めてる。
「お前が、家督を継がないか?」
クリフォードが、フリーゲルに問いかける。
「嫌だね。自分が、向いて無いのは、解って要るよ」
フリーゲルは、心底、嫌そうに答える。
「先代の意思を、兄さんは誤解している」
「誤解?」
「先の戦にも勝ち、召喚も成功し、聖女も降臨した。今、国は安定している。」
「………」
「先代の侯爵は、恐らく、無謀を視野に入れていたんだろうね」
先代の国王と、本気で、ケンカをしたらしいからね。
「!」
「戦国の世なら、お前を跡目にしただろう。だが、安定した世ならクリフォード以上の適任は、いないだろう」
俺を、追い出すように子爵位を早々に譲ったのが、何よりもの証拠だ。
あの人は、俺の事を、良く思って無かったしね。
「先代が、俺に残した言葉だよ。兄さん、あなたは、お祖父様に信頼されていたんですよ」
あの人は、俺の根本を見抜いていたんだろう。
「それとも、国取りでもやりますか。今なら勝つ自信がありますから」
召喚前に終わった戦争の兵力の6割は、キャスル侯爵家、3男のリオンが率いる領兵。
残りは、サイラス率いる国軍。
隣国、ペルリン国と、キャスル家の領地は、境を接して長期に渡り境界線がはっきりとしなかった。
原因は、希少金属が採掘できる鉱脈だ。
戦争は、勝利を納め、ペルリン王国は滅亡した。
キャスル侯爵家は、境界線を有利に引き直し、希少金属の鉱脈も、手中に納めた。
領兵の武装解除は、未だにされて無く、兵達の士気は、高いままで保っている。
「止めておく」
「良かったよ。面倒だからね。兄さん、家族を守るよ」
「そうか。この場所が好きか?」
「悪くない」
1
お気に入りに追加
773
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる