上 下
725 / 953
力戦奮闘

違和感

しおりを挟む
「ちょ、ちょっと待て。今実験してただけで変な意味はないぞ。」

俺はリルにそう伝えるが、リルはジリジリと後ろに下がっている。

「アキーエに報告。マルコイの言い訳つき。」

くっ!
こいつは完全にアキーエの味方だ!

誤解を解くにしても、こいつでは埒があかない。

「わかったリル。いい物をやろう。俺が作った剣だ。それに拠点に戻ったら、正人たちの故郷にある日本刀という剣を作ろうと思ってるんだ。それもリルにやるぞ。」

「くっ!マルコイからの賄賂の提案‥魅力的‥でもアキーエ大事‥」

リルはアキーエを探すために走り去った。

くっ‥‥


よし。
会場から抜け出すとするか‥



会場の窓から外に出ると涼しい風が吹いていた。

ミミウの料理を作るのに結構汗をかいたからな。
まあ汗だけではなく、血も涙も流したが‥

少し身体を冷やすために歩く。

「いい風が吹いてますな。」

男が声をかけてきた。
先客がいるのは知っていたが、知らない人だったので特別声はかけなかったのだが失礼だったかな。

「そうですね。とても心地よいですね。」

俺は返事を返す。

「しかしあなた方はお強いですね。まさかあの数のモンスターを倒すとは思いませんでした。」

倒すとは思いませんでした?

「いや、おかげでこの国の窮地を救っていただきました。誠にありがとうございます。」

なんだ?
こいつの言葉に腹が立つな‥

「ふむふむ。なるほど‥そうですか‥あなたは素晴らしい魂をお持ちだ。あなたなら納得だ。」

何を言ってるんだこいつは?

「私の名前はシエブラ。あなたとはまたどこかで会えるでしょう。その時はよろしくお願いいたします。」

シエブラはそのまま会場の中に入っていった。

少し気になったので、会場の中に戻り姿を探すが見当たらなくなっていた。

なんだあいつは‥
言葉の一つ一つに苛立ちを感じた。
言葉が俺の中に入り込もうとしている感じだった‥

シエブラか‥

「アキーエ、あそこ」

ひっ!

「あら?マルコイ。こんな所にいたんだ。ちょっと聞きたい事があるんだけど?」

しまった!
俺とした事が、時間を稼ぐために外に出たのに中に戻ってしまった!

逃げ道を探す。

前にはリルとアキーエ。
ならば後ろならっ!

「マルコイ殿!男なら逃げてはいかんですぞ!」

な、なにぃ!
後ろにアレカンドロだと!?

まさかアキーエがリルカンドロコンビを仲間にしてるとは‥

しょうがない‥

俺はその場で正座をする。

「いや、違うんだ。実は新しいスキルを統合したから、その実験をしていただけなんだよ。」

「ふ~ん。ところでマルコイ。わたしまだ何も言ってないんだけど、なんでいきなり正座をするわけ?リルに実験って聞いたから、危ない事したら駄目だって思って探してたんだけど。何かやましい事があるから正座をしたんでしょ?」

な、何だと!?
俺とした事が下手こいただと!

「なんで正座をしているのか、やましい事が何なのか教えてもらおうかしら?」

う~ん‥
詰め寄ってくるアキーエも可愛いなぁ‥

だが今はそんな事を考えている場合ではない‥
何とかしてこの場から生きて帰らねば‥

俺は考える‥
唸れ俺の知力よ!

下半身に力を込めて、正座の状態から一気に立ち上がる。

「じ、実験の続きがあるから!」

俺はその場で勢いよく反転して駆け出す。

アキーエよりもアレカンドロの方がまだ抜ける可能性がある!

リルを見ると既に抜剣している。

なんでだ!?

お前は俺を斬るつもりか!

だがアレカンドロなら‥

アレカンドロに目を向けると、何故か正座をしている。

そして正座から一気に立ち上がる。

「ほほう!これはなかなか訓練になりますな!流石マルコイ殿だ!」

チャンス!

流石アレカンドロ!
頭の中身が他とは違う!

仕切りに頷いている、アレカンドロの横をすり抜け窓に向かう。

あと一歩!

その時、突然腕を掴まれる。

なっ!

まさか誰か追いついたのか!

「マルコイさん!コカトリス以外のお肉も食べたいですぅ!」

なんだとっ!
ミミウだとっ!

そのまま物凄い力で連行されそうになる。
掴まれた腕を動かそうとしてみるが全く動かない‥

「ミミウ!マルコイってまだまだたくさん料理を作れるみたいだから、お腹いっぱい作ってもらいなさい。」

「はいですぅ!」

あ、そんな感じの罰を受けるわけですか‥

俺は諦めて鉄鍋を振る覚悟をするのだった‥





-------------------------------------------
近況にも書いてますが、ブログ始めました。
遊びに来ていただけたら嬉しいです!修正している本編や、書いている時に考えてた事などを載せてます!
https://ogicon3777.com
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...