上 下
648 / 953
力戦奮闘

夢から覚めたラケッツさん

しおりを挟む
ラーシュはラケッツの、ラケッツの装着している魔道具の強さを睨みつける。

「まさか【鋭風爪】までも防ぐとはな‥クソがっ‥」

ラーシュは強者と相対した時に2つの行動をとってきた。
敵であれば自分より強い者に戦ってもらう、味方であれば取り入る。

自分は明らかに自分より弱い者を相手にして、それを踏み躙ってきた。

そして今回戦う事になったラケッツには強者の風格はなく、勝てると思ってハーフェルの指示を受けたのだった。

「ふっはっはっは!何の事だ?今まさか何か攻撃したのか?残念ながらお前の攻撃など、俺には通用せんと言っただろう!その真っ赤な目に焼き付けるがいい!この俺の強さを‥‥‥‥‥‥真っ赤な‥‥‥‥目‥?」

ラケッツは首を傾げてラーシュを見ている。
その姿勢が更にラーシュを苛立たせた。

「くそが!この俺を‥魔族の俺をコケにしやがって!」

「え‥‥?魔族?」

ラケッツの顔に焦りの色が見える。

「え?えっと‥あんた魔族なのか?」

「ああ?見てわかんねえのか?」

確かに魔族の種族的特徴である真っ赤な目をしている。

しかしラケッツは恍惚状態になっていたため、ひと目見てわかるような外見的特徴を見逃していた。

「そ、そうか、魔族なのか‥えっと‥か、勝てないのがわかっただろ?だ、だから帰るといい。」

「あ、何言ってんだお前?このまま帰ったら、アフアーブに何されるかわかんねえ。意地でもお前の魔道具を攻略させてもらう。それにお前では俺を倒す事はできない。強いのはわかったが、光属性じゃねえからな。その魔道具も魔力を使って動かしてんだろうが。だったら魔力切れまで付き合ってもらうぞ。」

「ざ、残念ながらまだまだ魔力はた、たくさんあるぞ。今なら逃げれば追いかけはしないんだぞ。」

恍惚状態から覚めてしまったラケッツは、今まで優位に戦っていた事も忘れ、混乱していた。

(ど、ど、どうする?なんで俺の所に魔族がきてるんだよ!飛んで逃げるか?でもこの魔族追いかけてくるみたいな事言ってるし‥どうすればいい?マルコイさん助けて!マルコイさん‥?あっ!)

「嫌でも魔力使い切ってもらうぜ。俺にはお前をどこまでも追いかける事ができるスキルがある。そいつをつか‥」

「えいっ!」

ラケッツはマルコイに渡された炸裂式の魔道具をラーシュに向かって投擲した。

丸い魔道具は放物線を描いてラーシュに飛んでいく。

それに気づいたラーシュは魔道具を防ぐのではなく、その場所から離れる事を選択した。

「はっ!どうせそれも何かの魔道具だろうが!束縛系か?それとも麻痺系か?なんにせよそんな物を馬鹿正直に防ぐとお‥」

ラケッツの投げた丸い魔道具はラーシュに当たる事なくラーシュが立っていた地面に着弾した。

そしてそれは‥

地表で熱のない太陽を発生させた‥




「うぎゃーっ!」

魔道具にどんな効果があるのか確認するためにしっかりと見ていたラーシュはまともに熱のない太陽を直視した。

「め、目が‥目がぁ!」

戦いに巻き込まれないように遠目で見ていた帝国兵も網膜が焼かれたように視力を失っていた。

「がぁ、み、見えねえ!」「俺の目がぁ!」

その場は阿鼻叫喚となった‥


「えっと‥あれ?光りはしたみたいだけど爆発はしなかったな‥あ、やばい間違えてた!こっちを投げるんだった!」

本来臆病な性格のラケッツは、爆弾が爆発すると思い、投げた瞬間に後ろを向いていた。

そのためラケッツは閃光弾を見ておらず視力を失うことはなかった。

マルコイは対魔族爆弾については使用する時の注意事項は説明したが、閃光弾についてはしていなかった。

ラケッツが興味本位で見てしまったら、ラケッツも視力を失っていたと思われる。

本来の臆病なラケッツの行動が功を奏した結果となった。

「ぐがぁ!貴様!許さん!絶対に許さんぞ!貴様の腑を引き裂いて、貴様の‥」

「えいっ!」

ラケッツの2発目の爆弾が無情にも投擲された‥
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...