上 下
585 / 953
魔王の影

王様の提案

しおりを挟む
「売らないといったのに、随分と嬉しそうですね?」

俺はエッケンさんに問いかける。

「そうだな。お主が獣王国に魔道具を売ると言ったら、残念だが私はマルコイを警戒する必要があった。お主が利益目的でそのような魔道具を売るような人物だったとな。」

「エッケンよ、言ったであろう。マルコイはそんな男ではないとな。ワシが気に入った男だぞ。」

「そうでしたな。しかしマルコイ‥個人的なら売ってくれるとの事だが、さっそくで悪いが1台売ってくれぬか?」

「あっ!狡いぞエッケン!ワシの方が先に買うぞ!そんな面白そうな魔道具は、王が先に使うべきだ!」

「何を言われますか!王が乗る前に試すのが家臣の役目です!先に私が乗って確かめるべきですぞ!」

おいおい。
いい歳したおっさん同士で喧嘩してるよ‥

「ちゃんとお2人分あるから心配しなくても大丈夫ですよ。」

「な、なんと!これ程の物がもう1台あると言うのか!全くマルコイよ、お主は何者だ?」

う~ん‥
何者?
とりあえず冒険者だとは思うけど‥

「それもこれも俺が持っているスキルのお陰なんです。」

「おお、そうじゃったな。お主のスキルか‥それを聞いてもよいのか?」

「そうですね。隠していたら動きにくいので‥」

俺は獣王様とエッケンさんを見る。
この2人なら教えても問題ないと思える。

「俺のスキルは【模倣】です。」





俺はスキル【模倣】について2人に話した。
『譲渡』と『譲与結合』については話をしていないけど。
この2つは必要な状況にならない限り話すつもりはないからな。

「‥‥また随分とデタラメなスキルじゃな‥しかしそうじゃな‥であれば‥エッケンよ。」

「はっ!」

獣王様とエッケンさんがまたコソコソと話をしている。

今度はなんですか?

「それはいい案かと。」

「であろう!ワシは冴えておるのぅ!」

「それはどうかと。」

「なぜにっ!」

目の前でおじさん2人が漫才やってるし‥



話し合いが終わったのか、獣王様がこちらに向き直る。

「マルコイよ。お主は爵位をやると言うたら、もらうか?」

爵位?
う~ん、昔だったら悩んだだろうな。
やっぱり実家を見返したいと多少は思っていたから。

でも今はいらないかな。

家族間の誤解は解けたし、今は実家に協力してもいい程度は和解したつもりだ。

しかし貴族か‥

身分の高い者にはそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある‥か。

はっきり言って義務だの責任だのは性に合わない。

だって好きな事もできないような枠には嵌められたくないものな。

「申し訳ございません。お断りさせてもらうと思います。」

「であろうな。そんな物をお主が欲しがるとは思っておらん。ならばワシらがお主に出来る事‥」

出来る事?
う~ん、お金が欲しいかも‥

「お主にスキルを模倣する場を提供するのはどうじゃ?」

えっ!?

それは‥‥

物凄く嬉しいんだけど!

「お主のスキルは他の者にあまりバレたくはないのでは?であればスキルを模倣するには手間と時間がかかったはずじゃ。さすがにワシも国民全員のスキルを把握しているわけではないが‥お主達が模倣するためのスキルを探すよりも効率的じゃと思うがどうかの?」

「いいんですか?」

俺としてはありがたいけど‥

「別にお主のスキルで模倣したからといってスキルがなくなるわけではあるまい。それに相手にバレないようにと言うのであれば、ワシの協力があった方が捗ると思うぞ。」

それは確かにそうだ。
今までスキルを聞き出したり、スキルが書いてあるギルドカードを見るための方法を考える必要がないからな。

「まずは騎士団からスキルの確認と称してカードを作らせる。騎士団の騎士であるから、武器スキルがほとんどであろう。お主の話では同じスキルは模倣できないとの話だが、それでも300からいる騎士団だ。お主の役に立つスキルはいくつかあると思うぞ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...