上 下
533 / 953
勇者の救出

神聖国への襲撃⑦

しおりを挟む
辺り一帯に焦げ付いた臭いが漂ってる。

大神殿は支柱が何本か残ってはいるが、建物は原形を留める事なく破壊されている。

後方に被害が出ないようにするのと、地下に召喚の魔道具があったらいけないので、少し上から下方に向けてブレスを放射したので、まるで穴が開いたようになっている。

もちろん聖王は跡形もなく消し炭となった。

今までやってきた事を反省させようと思ったが、元々自分のやってる事は正しいと思ってるやつを反省させる事自体、土台無理な話だったわけだ。

だが、このまま終わりではない。
お前はこれからも愚王アロイジウスとして名を残してやるからな。

倒壊した建物の瓦礫の中に、魔力回路が描かれている研磨された黒い石の破片が落ちている。

召喚の魔道具も壊せたようだな。

でも魔力回路が勿体ないなぁ。
後でコソッと回収に来れないかな‥
『影法師』のイコルの姿に戻って、グルンデルにお願いしたら貰えるかな‥?



そのグルンデルは大神殿のあった場所に向かって祈りを捧げている。

さて馬鹿王はいなくなったけど、これからの神聖国をどうするかだよな。

こんな事やらかしたけど、この国の今後に携わるつもりはない。

でも、俺はこの国の事を考えて自分の命も差し出そうとしていた人に治めてもらいたいと思っている。

「皆のもの聞けい!神を愚弄した、お主らが担いでいた愚王は消え去った!これからこの国は新しい王を決めて治めるがいい。我はこの国にとどまるつもりもなく、これからこの国がどうなろうが興味はない。しかしお主らが愚王ではなく、聖王に治めてもらいたいと思うのであれば、女神の‥そして新しき神からの加護を持つこの男を王にすれば良い!」

その場にいる人たちの目線がグルンデルに集まる。
皆がグルンデルの言葉を待っているようだ‥

「‥‥‥貴方様の‥竜王様の命確かに承りました。私がこの国を‥信者のための国にお作りさせてもらいます。」

「ふん。我にとってはどうでもいい事であるがな。しかし!これでお主が王になるようであれば、我が言葉に従ったのだ。お主が愚王になるようであれば、また焼き尽くすぞ。」

「はっ!しかと受け止めさせていただきます!」

よし。
これでグルンデルが神聖国の聖王になるだろう。
タルタル神を崇めているところは減点だが、この人なら間違った事はしたいと思う。

まあ間違ってたら、またドラゴン召喚だな。

「竜王様よ!貴方様は神の御使様でしょうか?」

「そんな大それたものではない。ただ、自分の棲家に入ったコソ泥を捕まえに来ただけだ。」

俺がそう言うと、離れた場所で腰を抜かしていたイルケルが怯えたように頭を抱えて蹲る。

あんたには少しだけ世話になったからな。
これくらいで勘弁してやる。
まあこれから悪い事などする事はないと思うけど。

「はは!承知いたしました。またいつでもお越しください。神聖国は貴方様をいつでも歓迎いたします!」

この人、ドラゴン神認定しないよね?
神の御使でもないからね。

神認定とかしちゃったら、国を焼き尽くしちゃうぞ。

まあとりあえずこれでいいかな?
後の事は、この国の人たちに任せればいいだろ。

目的であった、勇者の救出と召喚魔道具の破壊は済んだ。

愚王アロイジウスは野放しにできない存在だったからな。

それを含めて神聖国での目的は全て果たせたと言っていいだろ。

後の面倒くさい事は全てグルンデルさんに任せればいいし、一件落着だ。

それじゃあ立ち去るとするかな。

「竜王様‥ありがとうございました。この国を代表してお礼をお伝えさせていただきます。」

俺はグルンデルを一瞥すると、体に魔力を纏わせて空に浮かぶ。

そして咆哮を上げて、セイルズに向かい飛び立った。

「タルタル神様の御使様よ。誠に感謝いたします!この神聖国の国教の1つとしてタルタル教を布教し、竜王様の事を語り継がさせていただきます!」

だからやめろって。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蟲籠の島 夢幻の海 〜これは、白銀の血族が滅ぶまでの物語〜

二階堂まりい
ファンタジー
 メソポタミア辺りのオリエント神話がモチーフの、ダークな異能バトルものローファンタジーです。以下あらすじ  超能力を持つ男子高校生、鎮神は独自の信仰を持つ二ツ河島へ連れて来られて自身のの父方が二ツ河島の信仰を統べる一族であったことを知らされる。そして鎮神は、異母姉(兄?)にあたる両性具有の美形、宇津僚真祈に結婚を迫られて島に拘束される。  同時期に、島と関わりがある赤い瞳の青年、赤松深夜美は、二ツ河島の信仰に興味を持ったと言って宇津僚家のハウスキーパーとして住み込みで働き始める。しかし彼も能力を秘めており、暗躍を始める。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...