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勇者の救出

タルタルの艶

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「ちょ、ちょっと待ってくれ。今何と言った?」

「ん?俺達はタルタル神を崇める、タルタル教の布教組織『タルタルの艶』という組織だ。」

何を言ってるんだこいつは?

なんだその集まりは?

まさかこんな所までタルタル教の魔の手が迫っているとは‥


「ふん。タルタル教は最近出来た宗教ではあるが、偉大なるタルタル神様を崇めている。俺は神聖国で生まれ育ったが、ここまで俺を救ってくれた神はいなかった。だから俺はタルタル教を何としても世界に広めたいと思っている。」

タルタルに救われるあなたの人生の方が心配なんですけど‥

「しかしこの国は布教どころか、別の神を認めていない。本来なら宗教国家である神聖国での布教は諦めるところだ。しかしこの国の実態は宗教国家を隠れ蓑にした独裁国家だ。女神の代役として国を治めるべき聖王が、教典を自分の都合のいいように書き換え、それを国民に強要している。そしてそれに対して不満を持った者は、全て処刑されている。この国の民は女神を信仰しているのではない。女神を、聖王を信仰させられているのだ。」

なるほど‥

さっきのタルタルの話がなければ真面目な話なんだろうが‥

いや、顔はめちゃくちゃ真剣だな‥
ま、まさかさっきのタルタルの話も真剣なのか‥?
そんな‥
タルタルに本当に救われたのか?

ちょっとその話をもう少し詳しく‥
いかんいかん、今はそうじゃない。

でも後で絶対教えてもらおう‥



「それでこの国を憂うあなたたちはこんな所で何をやってるんだ?反乱でも起こす気なのか?」

「そうだ。いや、正確にはその予定だった‥というところだな。」

「予定だった?」

「ああ。お前は知らんかもしれんが、この国でモンスターの氾濫がおこりそうだったんだ。帝国との戦争、モンスターの氾濫まで起こってくれれば、俺たちが聖王の元に届く予定だったのだ。」

な、なるほど‥

「しかし氾濫は起こらず、帝国もこの国を攻める事なく撤退した。聖王を退任に追い込むチャンスが何故か全て潰れてしまったんでな。なるべく血を流す事なく国を変えたかったが、そうも言ってられなくなった。」

えっと‥
何か色々と思い当たるフシがありますね‥

「聖王を退任させて意味があるのか?次の聖王がついても同じような事が起こるんじゃないのか?」

「それについては心配ない。聖王の近い位置に我らの同志がいる。彼が聖王になってくれれば問題はない。もしそれが無理だったとしても、今の聖王が変わるだけでもいい。あの悪魔さえいなくなればこの国は少しは良くなると思うからな。」

そうか‥
単純に反乱を起こすだけではなく、先まで考えているのであればいいのかもしれない。
それに聖王に近い人まで仲間にいるのか‥

その時、扉が開き外から人が入ってきた。

「マルコイ!す、卓はどうなった!?」

あやめたち3人が息を切らしながら走り込んできた。

「まだ治療は行ってない。ここが無人じゃなくて、お客さんがいたからな。少し話をしていた。」

あやめたちはその時初めて部屋の中に俺以外の人がいる事に気づいた。

「マルコイ‥お知り合い?‥いやどこかで見た事がある気がするけど‥?」

「あなたは‥グルンデル枢機卿!?なんであなたのような人がこんな所にいるのですか‥?」

恵はこの人の事しってるみたいだな‥

「おや、これはこれは勇者恵様ではありませんか。あなたこそ何故このような辺鄙な場所へ?」

俺はあやめに近づくと小声で尋ねる。

「すまないあやめ。あの人って偉いの?」

「え?あたしに聞かないでよ‥恵が驚いてるから偉い人なんじゃないの?」

ん?
恵とグルンデルさんが俺たちの方を見て固まっている‥

あれ?
聞こえちゃいました?

でも俺は神聖国の事よく知らないんです。

な、なんかすみません。

「マルコイさん。グルンデル枢機卿は神聖国で聖王の次に偉い聖職位の方になります。」

なるほど‥
そ、そんな偉い人がタルタル教なの!?
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