ご主人様と性処理ペット

如月 永

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4.ペット契約

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   ◇◇◇

目を覚ますと御主人様に膝枕をしてもらっていたようで、不思議な視界だった。
御主人様と店長はお茶を飲みながら世間話をしているみたい。
「起きたかい?」
「シロ、お疲れ様」
えっと僕は確か……御主人様と初めてセックスしてあの後何度も中出しされて、最後には気絶してしまったらしい。
身体中ベタついてないところを見ると、僕は多分身体を拭いてもらってから服を着せられてたのだろう。
いつもより上等な服だ。
飼い主が決まるとこうも待遇が違うのか。本当に至れり尽くせりだ。
御主人様は僕の頭を優しく撫でてくれて、僕はアーモンド型の瞳を細めた。
「シロ、甘えるのは後にしなさい。契約書が先だよ」
「あ、はい。すみません」
僕は起き上がると、紙に目を落とした。
特殊な紙というより柔軟性のあるプラスチック板のようだ。
これも普通の契約書とは違う。
そこには僕の皮膚の下に埋め込まれたICチップと同じ獣人識別番号が書かれており、契約内容には『ペットとして飼われる事』とその注意点がたくさん書かれていた。
相性を確認する前に聞かされた事やそれに付随した項目だ。
そして最後に生体認証のできるチップが付けられていた。
ここにICチップの情報を接続したら契約を結んだという証明になるんだそうだ。
僕はもう御主人様に飼われる決心が出来ているから御主人様に見守られながら、恐る恐るチップを近づける。
すると一瞬で情報が読み取られて、ピピッと電子音が鳴った。
これで僕と御主人様の契約は完了だ。
「御主人様、これから宜しくお願いします」
「良かったなぁ、シロ。良い人に買ってもらえて。ライオン種にウサギ種持ちの御主人様のお相手は大変だとは思うけど頑張れよ」
店長は何だか娘を嫁にやる父親みたいな顔をしている。
まぁ最近では僕がこのショップで一番長かったしね。
ただちょっと気になるのが、ライオン種とウサギ種という部分だ。
ライオン種もウサギ種も性欲過多と説明されたけれど。
気になったら聞くしかない。
僕はおずおずと口を開いた。
だって、これってきっと大事なことだと思うから。
ちゃんと聞いておかないと、後々困るかもしれないし。
「お前は理解してなかったのか?玄道様の前で失礼ですが、絶倫のライオンと年中発情期の絶倫ウサギなんて言われているよ」
「失礼も何もその通りだな」
「えっと……つまり、絶倫が二倍で年中発情期?」
「はははっ、その通りだな。まぁ本来の人間自体も年中発情出来るから、それを考えるとそんなに変わった特徴でもないかな」
何がおかしいのか笑いながら話す店長と御主人様。
でも僕は笑えない。
絶倫×2……それに付き合うには凄い体力が必要じゃないだろうか。大丈夫かな、僕……。
「もう契約した以上、諦めろ。私はお前を気に入ったんだ」
「はい……」
「あとで玄道様にきちんとした名前も付けてもらいなさい。名前はお前の初めてのプレゼントだよ」
あ、そういえば……。シロって呼ばれなれていたからシロだと認識してたけど、名前じゃなかったんだ。
ただの46番。
今度はちゃんと名前をもらえるんだ。
胸の奥がきゅんとして、僕は嬉しくなって、思わず尻尾を振ってしまった。
それを見ていた御主人様は困った顔をした。
「あまり期待されると悩んでしまうよ。真剣に考えるから少し待ってくれるか?」
「はい!楽しみにしてます!」
「そうか。そう言って貰えるとありがたい」
「さて、契約も終わったから私達の家へ帰るよ」
「店長さん、お世話になりました」
僕は立ち上がって頭を下げた。
不安よりも御主人様との新しい生活への期待が大きかった。

   ◇◇◇◇

運転手付きの高級車に御主人様と乗り込み、車が走り出すと、僕は見るもの全てが珍しくてキョロキョロと辺りを見回していた。
ビルだらけで、道路を車が走っている。
テレビで見たことはあったけれど実際に見ると全然違う世界のようだ。
そして見上げると首が痛くなりそうな高層マンションに着いた。
本宅はあるが、仕事の関係でこのマンションにいる方が多いという。
「世話係は後で探してやる」
「自分のことは自分で出来るから大丈夫だよ?大丈夫です」
タメ口になっていて慌てて言い直す。
「俺に気を遣うな。話しやすいように喋って良い」
「はい。ありがとうございます」
エレベーターに乗り込むと、御主人様は最上階のボタンを押した。
それから無言のまま扉が閉まって動き出した。
あぁ、御主人様と二人きりだ。
緊張する。
これからどうなるんだろう。
ドキドキしながら階数の表示が変わるのを見ていると、御主人様の指先が僕の手に触れた。
ドキンと心臓が大きく跳ねる。
手を繋がれて更にドキドキして、僕は俯いたまま固まってしまった。
どうしよう。
御主人様の手、大きくて温かい。
大きな手で包み込まれると安心できる。
ふわっと僕の耳元に吐息がかかった。
ビクッと肩が揺れる。
「まだ緊張しているのか?動物は環境が変わると適応するまで神経質になるというやつか?」
「それもありますけど、御主人様にドキドキしてしまって……」
「可愛いことを言うな。また襲うぞ」
「性処理ペットだから、いつでも使ってください」
「あのな、性処理ペットっていう名目で購入したが、自分で卑下するな。お前は私のペットになったんだぞ」
「はい。御主人様のペットになれて嬉しいです」
それは本心だったのに、御主人様はちょっと困った顔をした。
「何か間違いましたか?」
「いや。まぁ、おいおい理解するだろう」
御主人様が何が言いたかった分からなかったが、とにかく僕は御主人様と一緒に廊下を歩いた。
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