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しおりを挟む何かを成し遂げたいと願う人間がまともな訳ないじゃない
僕の脳裏には萎びた彼女の声が何度もリフレインする。
僕ははあの狂った饗宴に招待されて以降莫大な名声を手に入れた。貞操と倫理観をあの人に捧げて
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名取 能目(なとりのうめ)21歳は今日本で一番人気がある俳優だ。ここ2年くらいは中華圏や韓国の映画にも出演しアジアナンバーワン俳優と言っても過言ではないだろう。
才能、美貌、人徳、不思議な魅力
現在の名取能目は全てを手にしていた
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僕は元々子役だった。
4歳の頃、綺麗な顔をした子供だった僕は街でスカウトされて大河ドラマでデビューした。
そこから8年、学業を犠牲にして僕は毎年、映画2本とドラマ1本の少しのバラエティとCMに出続けて活躍していた。
僕の母は僕を非常にかわいがりマネージャーとして仕事に同行し僕を管理した。小学校に上がる頃それに嫌気がさした父親は浮気をして出て行った。
小学校を高学年になって変声期を迎えた僕を母は受け入れられなくなった。母の中の僕は女の子のようにかわいい能目であって中性的な色気の出てきた能目ではなかった。今思えば成長した僕はどことなく父に似ている。だから自分を捨てて出て行ったあの日に日に日に似てくる僕のことが憎くなったのかもしれない。
で、ここからが転落だ
母は気が狂ったかのようによくわからない新興宗教を盲信し僕が稼いだお金を湯水のように使った。3億円の借金をした。
その結果僕は腫れ物扱いされて‥干された
それが12歳の時
僕が数年かけて築いたものを一瞬にして崩した。
ーーーーーーー
普通の人になろう意気込んで中学に入ったがそうなるには僕はあまりにも有名過ぎた
今まで何もしてこなかった僕は演技と周りの空気を不快にさせないことしかできない。掛け算すら危ないレベルで当然落ちこぼれとなった。周りも僕に関わるとろくなことにならないという雰囲気で離れたところから僕を眺める。憧れた普通の生活が無理なことは入学から一週間もせずに理解した。
それでも僕の近くには宗教に狂った母が優しくしてくれるだけ良かった。彼女は僕を憎むと同時に愛し、そして人生を狂わしたかもしれないが一応は近くにいてくれたのだから。
だがそんな生活もすぐに終わる。
中学2年生の秋、母は首を吊って自殺した。
僕はパニックになりながらも警察に電話して‥それからのことは覚えていない
ただ気がついた時にはまたマスコミに追い回されていた。
中学3年生になった時、僕は相変わらず落ちこぼれで高校はどうしようかと考えていた時、とある男が接触してきた。
鶯という名の男で彼は僕にもう一度芸能界で活躍しないかと言った。
「一度堕ちたらもう二度とここには戻ってこられない。だけど、そのかわり底からだからこそみれる美しい世界があるよ。もしも君がその身を捧げる勇気があるならその世界を君にみせてあげるよ」
鶯はにっこりと笑いながら言った。
その声には嘘偽りもないものだった。
僕は迷わなかった。
その身を捧げる=枕
その程度のことは小さなころからやってる
大丈夫だ。このときの僕はまだ幼くてこいつの提案がクモの糸だと思った。
それしかできないことに気がついていた僕は
"はい"と即答した。
ーーーーーーーー
数日後僕は鶯に旧財閥の経営するグループの系列ホテルにいた。
このホテルはプライバシーがしっかりしている高級ホテルで財界人が多く利用している。
僕はそのホテルに地下から入った。
鶯に言われた通りの順序で進んでいくと異様な部屋が目の前に現れた。そしてその部屋の前には鶯と黒服が何人もいる。
「やぁ能目、待ってたよ」
ニコニコ笑っている鶯に手を引かれその部屋に入るともう一つ扉があった。
「俺、この後用事があるからもう行くよ。頑張って」
僕の頭をグシャグシャと撫でて鶯は去っていった。鶯がこの部屋から出ていくと若い女の人が入ってきた。
「名取能目様、これが最後のチャンスです。今ならば引き返せます。ここを引き返したら二度と芸能界には戻れませんがここに入るよりも平凡な生活を手に入れられます。もし、ここを通ったなら二度と普通には戻れません。」
「はい」
僕は大丈夫だという意を込めて頷いた。
女の人は溜息をはいた後、目の前の重々しい扉を開けた。
ーーーーーーーー
「こちらにいらっしゃい」
正気のない声が聞こえた。
その部屋は暗く大きなベッドが一台とソファーが置いてあるだけだった。
ソファーには声の主である年老いた女と4人の男女が座っていた。
恐いと感じた
恐怖でガタガタ震えそうになった
家に突然やってきた教祖よりも今まで見てきたどの権力者よりも得体の知れない人がそこには佇んでいた。
僕はとんでもない世界に踏み入れてしまったと直感した。
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