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お父さんへの呪い!?※アユム視点
しおりを挟む「ザピクロス様……呪いって言いました?」
こそっと俺は、ザピクロス様に小声で聞く。
物騒な言葉が、聞こえてきたけど……。
「うん、あのとっつぁん。呪われてるぞ」
「とっつぁんって……エイシオさんのお父さんが……ですか」
「うむ」
傍らにあった水差しから、バーバラさんが水を飲ませて少し落ち着いたようだ。
俺はまたこそっと話しかける。
呪いって……呪いってとんでもない事じゃないか。
「エイシオさんのお父さんは……呪われて病気になっているって事ですか?」
「……そうだ。まぁ弱い呪いだが……長年続くと障るだろうな……お菓子まだぁ?」
「あとで沢山もらってあげますから……どうにかならないんですか?」
「転移者殿が、我の力を使って祓ってやればいい」
「えっ……俺? 俺が……できるんですか?」
まさか、俺にもできることが??
「あれは泥水……沼の黒精霊の呪いだ。我みたいなアッツーい炎の前では一網打尽じゃぞぉ。ふっふっふ」
あぁ……沼の呪い……。
だからさっき深海みたいな不気味さを感じたんだ。
本来は火は水に弱いはずだけど、ザピクロス様は神様だし強いんだろう。
「また、みっともない姿を見せてしまったなアユム殿」
「い、いえ……とんでもないです!」
俺は、すぐにお父さんの元に駆け寄った。
ザピクロス様に言われたからか、確かにお父さんの周りは澱んでいる。
濁った水のような……黒くて汚い……。
どうして、こんな……エイシオさんのお父さんが呪われているだなんて。
「あの、俺……僕はハンドマッサージが得意なんです。少し試していいですか?」
「ほお?」
「アユム……?」
何もザピクロス様には教わっていないけど、俺は何故かそうするべきだと思った。
『僕もやってもらったことないのに……』とちょっと不満げなエイシオさんにザピクロス様を預ける。
「ははは……何か不思議な術でも知っておるのかな?」
「ははは……失礼します……ははは」
陰キャの愛想笑いでごまかして、俺はお父さんの手を握った。
……冷たい……!
ずっと濁った水に浸かっているようなものならば、当然病気になってしまうだろう。
俺はザピクロス様の腕輪に願う。
この濁った水を……冷たさを、この炎の温かさで……癒せるように……。
「おお……これは……温かい……」
「父上……」
俺の手から、じんわりと温かさを伝わらせていく。
目を瞑って念じる。
呪いなんか、出ていけ……。
エイシオさんのお父さんを苦しめる……呪いなんか、どっかへいけ。
どうして、こんな風に人を苦しめるの……?
「はっ!?」
真っ暗な先に、水面に映ったような酷い憎しみにこもった女性の顔が見えた気がした。
でも、俺の炎の光に照らされて消えいった……。
哀しさが俺の心に残る。
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