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兄弟会議※アユム視点
しおりを挟むエイシオさんの突然の婚約破棄宣言……!!
「婚約破棄だと……!? 自分が何を言ってるのかわかってるのか!」
部屋に響く、怒鳴り声。
真面目そうな、フレイグルスお兄さんだ。
うぅ、怖い。
「もちろんですよ。ずっと前から僕は。同じ事を伝えているはずです」
「ラミリアを弄び、一方的に婚約破棄をするつもりか!」
フレグルスさんがすごく怒ってるのがビリビリ伝わってくる。
厳格な方のようだもんね……。
俺は慌ててしまうけど、エイシオさんは冷静だ。
「待ってください。僕は彼女を弄んだことなどありません。婚約する意志がないことは成人前から伝えています。もちろん冒険での手助けやサポート以外で指一本触れたことなどありませんよ」
「つまりさぁー……エイシオは自分を暗殺する意味はないって、ここの皆に言いたいんだよ。フレイグルス兄さん」
ウルシュさんが、場違いな笑いを浮かべてお酒を飲む。
兄弟達に跡継ぎ争いから、離脱するという意志表示をエイシオさんはしたと?
俺が思っているより、ずっとずっと兄弟間での争いは酷かったのか……。
まさか暗殺だなんて……。
「ウルシュ兄さん。僕は決して、皆を疑ってるとか、そういう意味ではありませんよ。ただ家族には、兄弟達には伝えておきたかっただけです」
「……そ、そうですわよ。ウルシュ兄様、そんな言い方をしたら……まるで私達の間で酷い争いがあるみたいですわ」
シャルロットちゃんが泣きそうになりながら、言った。
「シャルロットちゃんは女の子だから、わからないかもしれないけれど……後継者争いというものは、いつの世にも影で熾烈に繰り広げられるものなんだよ~」
ウルシュさん……。
「じゃあ、このなかの誰かがエイシオ兄様に毒を盛ったってことですの……?」
空気が一層悪くなる。
だって、みんながフレグルスさんを見るから……。
「な、なんだ、お前達!! 何故に俺を見る!!」
「いやいやぁ~誰が一番この中で……となるとフレグルス兄さんが疑われるのは仕方ない事だよねぇ」
「馬鹿な事を! お前だってエイシオがいなくなれば、得があると思われる身なんだぞ!」
「え~僕は家なんか継ぎたくもないよぉ~だけど調査は公平にしてもらった方がいいよね」
「何が言いたい……!」
これは酷い言い争いになりそうだ!
そう思った時、エイシオさんが立ち上がった。
「ウルシュ兄さん! もうやめてください。何度も言いますが僕が伝えたかったのは、婚約破棄と家を出るという事だけ。誰かに毒を盛られるほど憎まれているのであれば、僕が此処を去るのが一番でしょう」
「エイシオ、お前の一存だけで決められることではないんだぞ」
「では、フレグルス兄さんも皆も協力してください。僕の意志はもう揺るぎません」
「へ~え、エイシオも今まで逃げ回ってたのにラミリアちゃんとの婚約が本当にイヤなんだね~あんなにパーフェクト美女なのに、田舎で好きな子でもできちゃった?」
うっ……。
ウルシュさんがニヤニヤしながら……どうして僕を見るんだろう。
まさか、全てを見透かされてる?
「そういうことですね」
エイシオさんが、キッパリ言っちゃうからシャルロットちゃんが嬉しそうな顔でキャーと小さく叫んだ。
あんな事があったのに、結構みんな余裕な感じだ。
震えてるのは俺と……もう一人。
「僕は……なんだか今後が不安です」
イヨン君……。
大好きなお兄さんが目の前で毒殺されそうになったなんて怖いよね。
俺も不安だ。
雨はずっと降り続いてる。
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