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冒険出発!※アユム視点

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 晴れた朝、俺達は冒険出発の日を迎えた。

 お弁当を作り終えた台所を綺麗に片付け、部屋も片付け……。
 
 ザピクロス様に言われて、また宝箱を探したら水の神様『ウェイティーン』様のネックレスを発見した。
 
 一応持っていけと言われたけど『あいつはうるさいので箱に閉まっておいてくだされ』と言われ俺の鞄の中だ。
 
 なんだか『ウェイウェイ』うるさいとの事……。
 ギャルみたいな感じなのかなぁ。

「じゃあ行こうか」

「はい!」

 しっかりと戸締まり。
 そして魔物避けの結界も張る。
 昔なじみのパーティーさんが、たまに様子を見に来てくれるようだ。
 野盗にでも住み込まれたら、困るもんね。

 馬車は馬ニ台の幌馬車だ。
 馬に餌と休憩場をしっかり与えられる宿屋を泊まりながら行く予定だけど、テントや寝袋も用意してある。
 キャンプ飯作りが、やっぱり楽しみだなー。

「ロードリア領の境目の門までは一週間くらいかなぁ」

「結構遠いんですね」

「できるだけ離れたかったんだよ。帰るつもりもなかったし」

「……今回の旅は辛くないですか?」

「素敵な婚約者を紹介できると思ったら、ワクワクするよ」

「大丈夫でしょうか」

「何も心配はいらないよ。全部任せて」

「はい」

 草原のなか真っ直ぐな平坦な道。
 町はすぐに過ぎたので、二人ともフードを脱いだ。
 ふいにエイシオさんに、ほっぺたにちゅうされた。

「わっ」
 
 ゆ、揺れてるのに、も、もう……。

「婚前旅行だなぁ~ふふふ」

「浮かれポンチな勇者じゃのう」

「アラ……! いえ、ザピクロス様、仕方ないですよ。恋人との旅行で浮かれるのは当然じゃないですか」

「まぁ……そうじゃのう~~~確かにハピハピなのはわかるのう」

 へえ……神様でもそういうのわかるんだ。
 神様だから?

「俺も……人生で恋人なんて初めてですし、それがこんなにカッコいい人だなんて幸せです」

「アユム……!」

 また、ほっぺたにちゅうされた。

「お前達、我の存在を忘れるんじゃない!」

「あは!もちろんですよザピクロス様。ほら馬車の上ですけど、ちくわにキュウリを入れたの美味しいですよ」

「おお!」

 ちっちゃな手でちくわキュウリをもつザピクロス様可愛いなぁ。
 まさか、異世界にちくわまであるなんて……。
 よくお弁当に入れてったんだよな……はるか昔のことのように思えるよ。

「うまうま」

「良かったです」

「アユム、僕も。あ~ん」

「あ、はい。あ~ん」

 馬車を運転しているエイシオさんのお口にも、入れてあげた。

 大草原の馬車。
 だーれもいないからイチャイチャしても誰にも見られない。
 ザピクロス様がいるけど……アライグマだし。 

 ちょっと恥ずかしいけど、やっぱり幸せ。
 ごとごと揺れて馬車は行く。
 この冒険の先に、どんな事が待ってるんだろう。


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