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ザピクロス様はテンドルニオンの指輪を探してる※アユム視点

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 目の前に突然現れた火のアライグマ。
 ザピクロスの腕輪から出てきたザピクロス様だ。

「エイシオさんの宝箱を……?」

「そうですじゃ」

「無理ですよ。どこにあるのかも知りませんし、エイシオさんに直接聞きましょう」

「転移者殿! あやつは全くの不届き者! ゴロゴロ……」

 アライグマの生態はわからないけど、つい喉元を撫でるとザピクロス様はゴロゴロする。

「エイシオさんはとっても良い人ですよ」

「良い人なわけあるかっ! この腕輪もずーっと放置じゃあのバカモノがっ」

「あぁ……」

 確かに。エイシオさんはダンジョン攻略して手に入れた宝物も、興味がないみたいだったもんなぁ。

「なにをお探しなんですか?」

「テンドルニオン……雷鳴神テンドルニオンの指輪だ」

「テンドルニオン様ですね」

「あぁ……そうだ」

「抱っこしますね」

「あわわ! むに~だっこ~」

 俺はザピクロス様を抱き上げて、部屋を出る。
 そして、そのままエイシオさんの部屋をノック。
 エイシオさんはすぐに嬉しそうに出てきてくれた。

「アユム? どうしたの? やっぱり僕と寝……え? どうしたのそのケダモノ……」

「ザピクロス様です」

「えっ!? ザ、ザピクロス様!? あの神殿から、相当な距離があるのに具現化を!?」

 エイシオさんの言っている事はよくわからないけど……とにかくザピクロス様の願いを叶えてあげた方がいいんじゃないかと思う。

「我を放置するバカモノめが!」

「しゃ、喋った!? す、すみません」
 
「あの、テンドルニオン様の指輪を見せてほしいんだそうです」

「転移者殿の力で具現化できておるんじゃ。早くテンドルニオンを見せてくれ」

「は、はぁ……アユムの? ……しかし、まさか……すごい……」

 驚くばかりのエイシオさん。あぁ今日も夜更かししちゃいそうだな。
 エイシオさんは『こっちだよ』と言って連れてきてもらったのは地下室。
 いつもはランタンを点けるけど今はザピクロス様が出した炎が揺れている。
 
 野菜やお酒を置いてある地下室……。

 俺が漬けた漬物と果実酒の横に、そう言われてみたらRPGで見るような宝箱があった。
 
「あ、これ宝箱だったんですか」

 結構な大きさなのに、全然気付かなかった!
 座って作業したりしちゃってたよ……。
 
「うん、普段使わないし……一応泥棒避けもかねて地下に置いてる」

「漬物と一緒に置くやつがあるかー!」

「し、失礼しました!」

「いえ、俺が漬物を置いたんです! すみません」

「……まったく」

「……それでは探します。テンドルニオンの指輪……テンドルニオンの~~あれ? えっと」

 エイシオさん、片付けが苦手だから……そのまま放り込んであるんだろうな。
 パールのネックレスと宝石の付いたネックレスが絡まって……。
 中身の入ってない宝石ケース……何故かぬいぐるみ……メモ帳まで。

「これか? あれまた中身が空っぽだ……えっと」

 焦るように耳と尻尾が揺れる。
 完璧美青年のエイシオさんが……ちょっと可愛い。
 宝箱だから、勝手に覗くのも……と思って見守っていたんだけどザピクロス様の毛並みが逆だってきた。

「転移者殿! 手伝ってやってください!」

「いいですか? エイシオさん」

「助けてくれアユム! あ、僕のペンこんなとこに入ってたんだ」

「全く……この勇者は、どーしよーもない……。転移者殿。あなたの呼びかけになら答えるかもしれん」

 呆れながらジト目でエイシオさんを見る、ザピクロス様。
 こんな目でエイシオさんを見る人(?)初めて見たよ。さすが神様。

「呼びかけですか、テンドルニオン様、テンドルニオン様いらっしゃいますかー?」

 まだまだ色んな宝石や金貨がごっちゃに入ってる宝箱のすみっこに黄色い光が輝き出した。
 ピリッと指先に感じる。

「あ! これか……」

 黄色にも青色にも見える大きな宝石の付いた、ごっついシルバーリングが出てきた。
 
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