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僕の告白※エイシオ視点

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 言っちゃった……。
 『好きな子と一緒にいたい』
 そう、世界の不思議に遭遇することよりも、魔物と戦い人々を守ることよりも、財宝を得ることよりも……僕はアユムとずっとこの家で……。

「す、すみません……!」

 えっ……。

「俺、本当にすみません。全然気付かなくて……」

「アユム……?」

「俺が……一番の邪魔だったんですね」

 ものすごくショックを受けた顔。

「えっ……」

 え!? あ!!
 アユムが勘違いをしてる。

「えーっと、あの僕のす、す、好きな子ってさ」

「はい……お、俺にもいつか……」

「……うん……」

「……紹介してくれますか……?」

 か、完璧に勘違いされてしまった……。
 そしてアユムの言葉に、僕も打ちのめされた気分。
  
「あ、あれ……なんで……涙が」

「アユム……」

 アユムの瞳から、涙がポロポロ流れて落ちる。
 朝陽が照らした涙はキラキラ輝くけど、僕の胸を締め付ける。
 アユム、その涙の意味は……?

 僕は椅子から立ち上がってアユムに手を伸ばした……途端、僕の身体が燃え上がった。

「うわっ!? あっつ!」

「エイシオさん!?」

 こ、これはアユムのせいではない!
 腕輪に宿る炎の神ザピクロスが、彼の配下の精霊たちが怒ってるんだ!

「や、やめて! エイシオさんをいじめないでくれ!」

 アユムをいじめるな! と僕に怒ってるんだ!
 アユムの叫びで、すぐに火は消えた。

「ご、ごめんなさいエイシオさん!」

 そりゃ、怒るよな。
 勘違いをさせるような中途半端な告白なんかして……何が勇者だと思うよな。

 僕は立ち上がって、泣いているアユムを今度こそ抱き締める。

「アユム、迷惑だったら言ってほしい」

「え……?」

 ザピクロスの腕輪はもう、僕を燃やさない。
 言わないと、言わないと。はっきり言わなければ。
 しっかり告白しなければ!

「アユム、僕の好きな子って……」

「は、はい……」

「僕が好きな子は、君なんだ……アユムなんだ」

「エイシオさ……ん」

「男同士で……初めてのことで……僕も、どうしてなんだろう……って思った。
 でもそう思いながらも、アユムが好きな気持ちが止められないんだ」

 アユムは僕を、抱き締めてはくれない。

 気持ち悪いと、思われただろうか。

 このまま、もし別れがくるのなら、いっそザピクロスの腕輪が僕を焼き尽くしてくれた方がいい。

 そう思うくらい、もう君が好きで、君なしでは生きられない。

 胸が苦しくなって、切なくて僕も涙が出てきた。
 何もかも、手に入れてきたのに、今、人生で一番欲しいものは結局、手に入らない……。

「俺もです……」

「……アユム……」

「俺も……エイシオさんが……好き」

 ぎゅうっとアユムが僕を抱き締めてくれた。

 その時の気持ちは、今まで経験してきた幸福を軽く飛び越えていく。

 ……弾けるような炎が僕達を包む。
 
 この心が浮くような上昇感。なんていう幸福感だろう。
 あぁ、もう大好きだ。

「大好きだよアユム」
 
 僕が唇を寄せたらアユムは目を瞑ってくれて……ザピクロスは遠慮してくれたのか、僕達が夢のような口付けをした時には朝陽だけが僕達を照らした。
 

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