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アユムが可愛い※エイシオ視点

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「アユム……」

 抱き締めてしまった僕を、アユムも抱き締めてくれる。
 心がホカホカするけど、二人共びしょ濡れだ。

「アユム、すぐに沸かすから。先にお風呂へ」

「いえ、俺が沸かすので、エイシオさんの方が先に」

 アユムは離れずに僕の胸元で話す。
 さっきまで複雑な、しんどい気持ちだったのに今はアユムが可愛いってドキドキしてきた。

「じゃあ……一緒に入ろうか」

 調子に乗ってしまった。
 もう腕も治ってるのに……。

「はい」

 え!? いいの!?
 
「じゃ、じゃあお風呂を……早く沸かそうか」

 そういえば、僕達を温かく包んでくれているザピクロスの加護火。

「これは……アユムが?」

「え? ……俺は何も……勝手に」

 さっきアユムを見つけるために、僕も力を使ったが今は何もしていない。

「こっちへおいで」

「はい……?」

 家のお風呂は離れにあって、湧き水が循環している。
 お風呂に入る時は、循環を止めて火の魔法石で温めるわけなんだけど……。

「このお湯を温めてごらん」

「え?」

「ザピクロスの腕輪に命じるんだ」

「命じる……? ……お願いします。エイシオさんのために早くお風呂を温めたいです」

 アユムらしい。可愛い。
 お願いするの可愛い。僕のためとか最高に可愛い。
 すると、お風呂は一瞬で熱されお湯になった。

「これは、すごい……! 魔道具も使いこなすには修練が必要なのに! アユムは天才かもしれない!」

「えっ俺が!? くしゅん」

「と、とりあえず入ろうか。風邪を引いてしまう」
 
 離れに作っただけあって、風呂は大きい。
 小さな銭湯くらいはある。
 脱衣所で濡れた服を脱ぎ捨てて、僕達はお湯に浸かった。
 温泉旅行からたったの一日しか経ってないのに、すごく久しぶりのような気持ちになる。
 
「あ、お酒は大丈夫かいアユム」

「すっかり抜けちゃってます。はぁ~あったかい」

「うん、いいお湯だ。もうすぐ夜明けになるね」

 まだ薄暗いが、雨も止んできた。
 
「そうですね……あの、本当にご迷惑おかけしました。借りた服もぐちゃぐちゃに……あ、腕輪も返さないと」

「いいんだ、僕が勝手にした事なんだ。服も気にしなくていい。腕輪はもうアユムのものだよ」

「え!? これすごく貴重なものだって聞きましたよ!」

「うん……でも僕はそれを宝箱に入れっぱなしにしていた。愛でる事も使う事もなく……。それを解放したのはアユムだよ。こんなに上手に使えるんだ。君が持つために、その腕輪は僕が持っていたんだと思う」

 ふわふわと加護火がアユムと僕を照らした。
 本当にすごい才能だ。
 他の魔道具ではどうなんだろう。

 ラミリアに言われた事には反発してしまったけど、その通りだった部分もあったんだ。
 一緒にいたいからアユムの可能性を奪っていたのかもしれない。
 それでも……やっぱり僕は……。

「でも、やっぱり俺が持つには……あれ? はずれない」

「ふふ、もう持ち主は選ばれていたんだ。……ねぇアユム。
 さっき、森の近くのあんな場所にいたのは……元の世界に戻ろうとしたから……?」

「え……?」

 もう、ここまできたんだ……。
 聞きたい事、言いたい事を言おう。


 
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