スピリットコースター

ヤギー

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第二話 微妙な違い

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「今月のお小遣い一万円よ。大事に使いなさい」
「ありがとう」

 母にお小遣いを貰い、礼を言った。母は目を丸くしていたが、そういえば子供の頃は礼なんて言ってなかったな。
 
「財布ってどこだっけ?」
「そこの棚の上でしょ?」

 流石にそんな細かなことは覚えてない。しばらくは変に思われることが多くなるだろうな。

 財布を見つけて貰った札を入れる。入れたはいいが、マジックテープの財布か⋯⋯。財布に拘りはないが、これは流石にない。後でホームセンターの安いヤツを買ってくるか。

 それにしても。お小遣いを一万円も貰ってただろうか。いや、そんな記憶はない。忘れてるんじゃなく、もっと少なかったはずだ。
 まるっきり同じ世界線をループしたわけじゃないんだろうか。若干、我が家が裕福になってる世界線の可能性有りだ。

「お。翔子、今起床か?」
「ん、おはよ」

 二歳下の我が妹。こいつも何となくだが、容姿が可愛くなってる気がするんだよな。逆、思い出補正かもしれないが。
 こいつは将来、デカくなる。縦じゃなく横にだ。そのデブった姿の印象が強いだけで本来は元々可愛かったかもしれない。だったら是非このまま成長してもらいたいもんだ。そして俺が楽に生きる糧になってくれれば万々歳。

 ソファに座ると、翔子も隣に座った。俺の肩に寄りかかり、腕を胸に抱えて、そのまま目を瞑る。

「顔洗って歯磨いてこいよ」
「んぅーん」

 猫のように鳴き声を鳴らす。
 こいつ可愛いな。

「全部終わったらゲームしようぜ」
「ん。する」

 すくっと立ち上がり廊下の先の洗面所に向かう。ゲームでやる気を出したようだ。
 これも違う所だ。翔子はあまりゲームをやらない子だったと記憶している。それは今の時期の話じゃなく、もっと昔から興味を示してなかったはずだ。
 俺がループしたのはここ数日の出来事。その結果及ぼす影響は、その瞬間から未来にかけてじゃなく、過去にも波及すると考えた方がよさそうだ。まあ、だからといって何かに対応しようとかは考えないけど。

 そんなことより自分のことだ。一つの可能性として、妹を育成して俺を養って貰うという考えがあった。
 どう育成するのか。それはゲーム、歌、イラストのどれか、または複数を極めて配信者になってもらうのだ。
 極めると言ってもそこまで縛り付けるつもりはない。子供の吸収力というのは途轍もない武器だ。ただ遊ぶだけでも大人を凌駕する習得力があると俺は考える。俺は俺で色々試すつもりだが、どうせなら翔子にも武器を身につけさせたい。
 今の所、翔子はゲームと絵を描くのが楽しいみたいだから、全力でサポートして経験値の貯金を貯めさせる所存だ。

「おにい、ゲームしよ」
「おーやるか」

 ゲームならば未来の技を有した対戦相手として立ち塞がり、お絵描きならば画材やら何やらの調達を自腹でする。
 第一準備はここからだ。
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