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その五

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夢ならどうか覚めてほしい……

『転生しちゃったんですが?』によるとこの変態……ゴホン。この王子は毎日家に訪ねてくるらしい。

正直嫌だ。正直じゃなくても嫌。毎日こんなやつにつきまとわれるとか絶対誰だって嫌に決まっている。いくら美形とはいえ、だ。

そしてそろそろ言われるであろう台詞。これだけは避けなければ。『転生しちゃったんですが?』によると、この王子"あること"を言ってくるのだ。



バサッ……バサバサバサッ……

コウモリの羽音に

ホォゥホォゥホォゥ……

ミミズクの鳴き声。

となるとやはり……



「暗くなってきましたね。ここからならば俺の屋敷の方が近いので今日は泊まります?」

言われたか!

「まだ明るい」

薄暗くなってはいるが明るいということにしておこう。

不気味だがこの王子の屋敷に泊まると"ある"ことが起こってしまう。

夜の森より恐ろしい。

「ですがコウモリも……」

「あれは鳥! ハトかスズメかアヒルかはわからないけど鳥!」

「アヒルは飛べませんよ? それにミミズクが……」

「あれはカッコウ! 虫! カエル!」

「レパートリーが豊富! 流石です!」

「注目すべきとこそこ!?」

「貴女は明るく美しく、それでいて聡明な…そう、天使!」

「想像以上に引くわ! その賞賛の言葉はどこから出てくる!?」



ぎゃあぎゃあ言い合っている間にも時は過ぎてゆく。

私が反撃を全て終えるころにはもう辺りは暗闇に包まれていた。

「……一人で帰りますか?」

「もちろん。一人で帰……帰……」



カサッ……カサカサッ……



帰れるか……? 虫にさされたり……とか……。ムカデとかマムシとかいたら……?

虫は……苦手だ。幼い頃、チョウを握りつぶしてしまったことを思い出す。

「泊まりませんか?」

「……午前零時には家に帰ってやる」

「嬉しいです。貴女が屋敷に……。明日は少なくとも朝食までは一緒ですね!」

「零時には帰る」

「明日も泊まってくださるんですか」

「ポジティブにとるな!」

……この王子、変態というだけじゃなくて頭も残念なんだが……。

よし、なるべく早く帰ろう。


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