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その三

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「元気そうで安心しましたよ」

私に殴られつつもにっこりと微笑む亜麻色の髪の王子。あの漫画のカラーページと同じ容姿である。

「は…あ……」

この王子、メンタルがバケモノ並みらしい。『転生しちゃったんですが?』のヒーローのメンタルも雑草レベルだった。踏んでも踏んでも起き上がる。いっそブチッと抜いてやろうかと漫画を読みながら思っていた。しかし……抜けそうにないが。それどころか私が引っ張られそうだが。

「怒ってはいないんですか……?」

「貴女らしくないですね。
いつものことですし、貴女が元気だとわかったのでむしろありがたい」

「ありがた……!?」

私は目をむいた。感謝される場面ではないはずである。

これは確定。確定だ。

殴られたことも『ありがたい』だなんて言える人間、一人しか見たことない。全世界を探せばもう一人見つかるか? ときかれても『否』と答える。

で見たその……変態の名は

「バルド=エイダス様……」

「……やはりどこか打ちました? 俺に『様』づけだなんて」

殴られて安心で『様』づけで呼ばれて心配、と。

確定以上に確実だ、と直感。100%『転生しちゃったんですが?』の王子である。名前も同じだ。

それにこの姿にも見覚えはあった。それが確信に変わったのは今。



……『転生しちゃったんですが?』に出てくるヒロインだ。転生後のヒロイン。

つまり私は……

『転生しちゃったんですが?』に出てくる転生したヒロインに転生したの…か……?
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