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その六十九

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「他の者の処遇についてはジュークに任せますわ」

 返事はない。

「ジューク。聞いていますの?」

 訝しく思い、振り向こうとした瞬間後ろから抱きつかれフェニルは息をのんだ。

 フリーズするフェニルにジュークは「すまなかった」と囁いた。

「ラフィットの企みに気がつかず、迷惑をかけた。それと、ラフィットへの罰を軽いものとしてくれたこと、感謝している。ありがとう」

 フェニルは『感謝される筋合いなどありませんわ』と答えようかと思ったが、考えた末に別の返事をした。


「……許してほしいのなら夜通し私に謝り続けなさい!」

 それは自分の部屋に来るようにという意味を含む言葉だったが、おそらくジュークは言葉通りの意味に取るだろう。

 "ジュークは"。

 男女が一晩同じ部屋にいる、ということが他人からみてどういうことなのかフェニルはわかっていた。

 だからこそ、皆の前で言ったのだ。とくにラフィットの前で。

(ふふふ。反省なさい、ラフィット)

「ではジューク、部屋で待っているわ。
 誰も覗かないようにリタは見張っていて頂戴ね」

 思わせぶりな台詞を残し、フェニルはそこを立ち去る。


 心中では高笑いをしながら――――……。
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