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その四十六

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「ジューク」

 ラフィットを睨みつけていたフェニルがふと口を開いた。

「マルテリントカーメルとやらの準備をして頂戴。この礼儀知らずに私を『主』と認めざるを得なくしてやるわ!」

 令嬢言葉はどこへ行ったのか、まるで町娘のごとき口調でフェニルが言う。

「……わかった」

 さすがにこれには折れたジューク。だがそこには不安がにじみ出ていた。

 そんなジュークの不安を払拭するため、とフェニルはこくりとうなずく。

「大丈夫ですわ。私はエリツィン公爵令嬢、フェニル・エリツィンですもの。そうでしょう、ジューク」

 努めて明るく言った。

 確実な自信はなかったが、その台詞はジュークに安堵をもたらしたようだ。
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