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その三十五

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「あなた以外に誰がいるのです?
 動機も、状況証拠も十分でしょう」

「私を愚弄する気ですの?」

 唇をわなわなと震わせ憤るフェニル。

「まさか。事実を申したまでですが」

「どこが事実ですの!?」

 悪意や害心が見え見えのラフィットの言葉にフェニルはさらに憤り、それまで血の気が引き白かった顔は真っ赤に染まる。

 証拠などない。粥に毒物を混ぜることができたのは決してフェニルだけではないのだ。状況証拠さえそろっていないこの場面でフェニルが咎人であるなどと、決めつけるのは間違っている。

「他にジューク様を害する理由がある者がおりませんので」

「それは……ッ」

 だが対抗できる言葉がなかった。

 自分はやっていない。私は違う。フェニルがいくら主張しようとそれを証明する者は誰ひとりとしていないのだから。
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