24 / 25
1章:鬼ごっこ
本編 20 代わる代わる
しおりを挟む
「ゆ、雄大……?」
誰もいない廊下。
ポツリと呟く。
「ん? 雄大がいるはずないでしょ?」
仁美はそう言う。
しかし、俺は確かにあいつと目が合ったのだ。一瞬だが確かにあいつはいた。
俺にだけ見えていたのか。
縛られたままの俺は動く事もできずに仁美に引き摺られる。
見た目以上に彼女の力は強かった。
既にこの呪われた家のせいで変わってしまったのかもしれない。
もしかしたら、俺自身も……。
「健吾?」
穏やかな声色。
その奥にじっとりとした暗い感情を感じたのは気のせいだろうか。
「そんな顔しないで。折角、2人きりで過ごせるようになったんだし、この生活をもっと楽しみましょう」
にっこり笑う彼女。
この家に来る前の俺だったら喜んで首を縦に振っているだろう。それだけ魅力的な外見なのだ。
「あ、ちょっと待ってて」
「ん?」
「御手洗いよ。それくらい察して欲しいわ」
縛られたままの俺を置いて仁美はトイレに行ってしまう。
こんな状態のままで化物でも現れたら終わりだ。
そんな事を考えた。
「よう」
雄大……。
目の前にいるのは紛れもなく雄大だった。死んだはずの雄大。間違いなく俺は彼の死体を見た。それなのに何故。これもこの家のせいなのか。
「ははは。死んだとでも思ったのか」
雄大が屈んで俺の顔をじっと見てきた。
「血の海に俺の身体が倒れてたら死んだと思うよな。俺も死んだと思った。でもよ。生きてたんだ。不思議なもんだよな」
本当に雄大は生きていた?
未だに俺は半信半疑だ。
「ほら。助けてやるよ。縛られたままじゃどうしようもないだろ」
雄大はナイフを取り出し俺を縛ってる物を切った。ナイロン製のロープ。家の物置にでもあったのだろうか。
「ああ。痕が残ってるな」
ニヤニヤして雄大はそう言った。
俺の手首や腕にはくっきりと縛られた痕が付いていた。
「仁美があんな危ない女だとはな。男を縛り上げて喜ぶなんて良い趣味してやがるぜ。お前もとんだ女に惚れられたな」
「助けて、くれたのか?」
「んー、助けたっつーか、お前でもいた方が便利かなって」
分かってるよな、とでも言いたげな笑みを雄大はこちらに向けた。
「下僕にでもなれって?」
「まあ、そんなんで良いよ。せっかく助けてやったんだからさ、協力するのが筋ってもんでしょ」
そう言って雄大は肩を組んできた。
ゾワゾワっと寒気がした。
しかし、今は仁美と離れて雄大といた方がマシだろう。今度、仁美に捕まったら何をされるか分かったもんじゃない。俺は雄大と共に早くここから離れる事にした。
誰もいない廊下。
ポツリと呟く。
「ん? 雄大がいるはずないでしょ?」
仁美はそう言う。
しかし、俺は確かにあいつと目が合ったのだ。一瞬だが確かにあいつはいた。
俺にだけ見えていたのか。
縛られたままの俺は動く事もできずに仁美に引き摺られる。
見た目以上に彼女の力は強かった。
既にこの呪われた家のせいで変わってしまったのかもしれない。
もしかしたら、俺自身も……。
「健吾?」
穏やかな声色。
その奥にじっとりとした暗い感情を感じたのは気のせいだろうか。
「そんな顔しないで。折角、2人きりで過ごせるようになったんだし、この生活をもっと楽しみましょう」
にっこり笑う彼女。
この家に来る前の俺だったら喜んで首を縦に振っているだろう。それだけ魅力的な外見なのだ。
「あ、ちょっと待ってて」
「ん?」
「御手洗いよ。それくらい察して欲しいわ」
縛られたままの俺を置いて仁美はトイレに行ってしまう。
こんな状態のままで化物でも現れたら終わりだ。
そんな事を考えた。
「よう」
雄大……。
目の前にいるのは紛れもなく雄大だった。死んだはずの雄大。間違いなく俺は彼の死体を見た。それなのに何故。これもこの家のせいなのか。
「ははは。死んだとでも思ったのか」
雄大が屈んで俺の顔をじっと見てきた。
「血の海に俺の身体が倒れてたら死んだと思うよな。俺も死んだと思った。でもよ。生きてたんだ。不思議なもんだよな」
本当に雄大は生きていた?
未だに俺は半信半疑だ。
「ほら。助けてやるよ。縛られたままじゃどうしようもないだろ」
雄大はナイフを取り出し俺を縛ってる物を切った。ナイロン製のロープ。家の物置にでもあったのだろうか。
「ああ。痕が残ってるな」
ニヤニヤして雄大はそう言った。
俺の手首や腕にはくっきりと縛られた痕が付いていた。
「仁美があんな危ない女だとはな。男を縛り上げて喜ぶなんて良い趣味してやがるぜ。お前もとんだ女に惚れられたな」
「助けて、くれたのか?」
「んー、助けたっつーか、お前でもいた方が便利かなって」
分かってるよな、とでも言いたげな笑みを雄大はこちらに向けた。
「下僕にでもなれって?」
「まあ、そんなんで良いよ。せっかく助けてやったんだからさ、協力するのが筋ってもんでしょ」
そう言って雄大は肩を組んできた。
ゾワゾワっと寒気がした。
しかし、今は仁美と離れて雄大といた方がマシだろう。今度、仁美に捕まったら何をされるか分かったもんじゃない。俺は雄大と共に早くここから離れる事にした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
ゴーストバスター幽野怜Ⅱ〜霊王討伐編〜
蜂峰 文助
ホラー
※注意!
この作品は、『ゴーストバスター幽野怜』の続編です!!
『ゴーストバスター幽野怜』⤵︎ ︎
https://www.alphapolis.co.jp/novel/376506010/134920398
上記URLもしくは、上記タグ『ゴーストバスター幽野怜シリーズ』をクリックし、順番通り読んでいただくことをオススメします。
――以下、今作あらすじ――
『ボクと美永さんの二人で――霊王を一体倒します』
ゴーストバスターである幽野怜は、命の恩人である美永姫美を蘇生した条件としてそれを提示した。
条件達成の為、動き始める怜達だったが……
ゴーストバスター『六強』内の、蘇生に反発する二名がその条件達成を拒もうとする。
彼らの目的は――美永姫美の処分。
そして……遂に、『王』が動き出す――
次の敵は『十丿霊王』の一体だ。
恩人の命を賭けた――『霊王』との闘いが始まる!
果たして……美永姫美の運命は?
『霊王討伐編』――開幕!
怖い話(短編集)
R3号
ホラー
今までに人から聞いた怖い話を纏めてみました。
僕自身がこう言う経験がちょこちょこあるのでよく知り合いに教えてもらってます。
思い出したり、新しく聞き次第更新します。
オチが無かったり原因もよく分からない話がありますが日常にある怪異ってこんな感じなのかなって思ってます。
大丈夫おじさん
続
ホラー
『大丈夫おじさん』、という噂を知っているだろうか。
大丈夫おじさんは、夕方から夜の間だけ、困っている子どもの前に現れる。
大丈夫おじさんに困っていることを相談すると、にっこり笑って「大丈夫だよ」と言ってくれる。
すると悩んでいたことは全部きれいに片付いて、本当に大丈夫になる…
子どもに大人気で、けれどすぐに忘れ去られてしまった『大丈夫おじさん』。
でも、わたしは知っている。
『大丈夫おじさん』は、本当にいるんだってことを。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる