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魔王よ、話が、長い……

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 俺はアールティエ・ユ・ウシャ。
 通称RTA勇者。

 ようやくたどり着いた魔王城の最奥。
 迷路みたいな城で散々迷ってようやく魔王の所まで来た所だ。

「……して、私は貴様が来るのを待っておったのだ。でな、それまでにどう迎えるのが魔王らしいか私なりに考えて……」

 魔王がグダグタと喋っている。
 頭から角生やした強そうな男が長々と喋る。
 どこの来賓だよ。
 校長か。

「やはり勇者を迎えるのは魔王としては栄誉な事で……」

 知らんがな。
 早く終われよ。

「まあ、そんなわけで私もようやく魔王として箔がつくな、と感慨深い思いに至りまして……」

 頼むから。
 便所行きたいんだよ……。

 この話終わるまで戦闘に入れないとかなんなん……。
 どんな魔力だよ……。

「であるからして、私は全力で勇者と戦いたく……」

 広いダンジョン回ってもどこにも便所無いとか。この城終わってるって。何時間彷徨ったと思ってんだよ。
 漏れるから。
 漏れる、漏れる、漏れるってば。

「魔王である私もこの日のために鍛え上げてきたのだ!」

 よ、ようやく終わったか。
 ふう。
 便意も落ち着いたし、サクッと終わらせるしかないよな。

「見よ! この魔王の鍛え上げられた身体を!」

 ちょ!
 え!?
 まだ続くの!?
 そして、脱ぐな!
 上半身裸になって筋肉を見せつけるな!

「どうだ? まさか魔王がこんなに筋肉質だとは思わなかっただろ?」

 聞くな聞くな。
 そんな事は俺に聞くなよ。
 心底どうでも良い。
 早く戦わせろよ。
 お願いだから……。

「恐怖か? 何も言わないのは、この魔王様に恐怖を抱いているのか?」

 頼む……。
 早くしないと。
 また。
 便意が……。

「ふふふ。勇者よ。貴様が落ち着くまで少し待ってやろう。貴様が全力を出せるようにな!」

 待つな待つな。
 頼むから。
 早く戦いたいんだよ。
 早く勝って便所に行きたいんだよ。

「おい勇者、顔色悪くないか?」

 てめえのせいだよ……。
 便意がヤバいんだよ……。

「また今度にするか?」

 優しい言葉かけんな。

「とはいえ、勇者を帰すにはいかんしなぁ」

 悩むな。
 時間稼ぎしないでくれ……。
 この会話イベント長過ぎるって……。

「仕方ない。貴様には悪いが、このまま戦闘に入らせてもらうぞ!」

 魔王が構えた瞬間、俺の剣は魔王の首を跳ねていた。
 魔王戦最速勝利記録だ。

「ば、バカな……。この魔王が……」

 魔王は倒れた。
 あとは便所に駆け込むだ、け……だ……。

 あ、ああ……。

 床に広がる汚い染み。

 こうして俺の冒険は終わった……。
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