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第2章:謎の町にて
裏の町は地下に
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「気が付いた」
「良かった」
「本当に良かった」
…………。
僕はどうしたんだろう。
鍵を掴んだ所までは記憶があるんだけれど。
ここはどこだろう。
微睡む意識の中で思考する。
僕は、
十字架を背負って、
町の外まで歩いて、
鍵を取って、
取って、
そのまま意識を失ったのか。
偽救世主として、勝手に担がれ、落胆され、追放され、そして僕は倒れた。
で、何故か知らない場所にいる。
寝かされている。
布団だ。
暖かく柔らかい布団。
それに着替えもされてるみたい。
「熱は下がったかな?」
「今計るよ」
「目を覚ましたみたい」
聞こえてくる声。
何人?
二人?
三人?
町の人たちとは違うようだけど……。
「熱は下がった」
「良かった」
「水を持って行こう」
「そうだね」
僕はようやく体を起こして周囲を見た。
だだっ広い部屋だった。
真っ白な綺麗な壁。
床も白。
そこをピカピカのロボットが動き回っている。四角い本体にロボットアームやタイヤが付いたロボットたち。大きさは僕の腰くらいだろうか。
話してたのはどうやらこのロボットたちだ。
一体のロボットがコップを持って近づいてきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
僕は渡されたコップをまじまじと見た。
「大丈夫だよ」
「普通の水だよ」
「ニンゲンが飲んでも良い物だよ」
「う、うん」
僕は水を飲んだ。
少し冷たい水が全身に染み渡っていく。
気が付けば一気に飲み干していた。
「おかわりあるよ」
「一度にたくさん飲まない方が良いよ」
「欲しくなったら言うんだよ」
「ふふふ」
つい笑ってしまう。
「笑ったよ」
「笑ったね」
「元気になったね」
こうしてロボットといると家に帰ってきたみたいだ。
父さん、母さん、犬のワンダ。
ロボットだけど僕の家族。
ロボットのいる臭い。
油臭い感じ。
懐かしい。
何日も経ってないのに。
「ここはどこ? どうやったら帰れるの?」
「ここは地下の町」
「ここから帰るの?」
「外は危険!」
危険?
「もう少しゆっくりしていって」
「ご飯も食べていって」
「無理しちゃダメだよ」
うーん。
でも。
エリーの事も心配だし。
いつまでもいられないよ。
「そんな顔しないで」
「そんな悲しい顔しないで」
「そんな辛そうな顔しないで」
「そんな顔してる?」
「「「してる」」」
あはは。
ロボットでも分かるんだな。
そういえば父さんも母さんも分かったっけ。
「エリーが心配なんだ。何か知らないか?」
「エリー。アンドロイドの子」
「エリー。教会でケンタロー待ってる」
「ケンタロー。目の前の男の子」
「全部知ってるのかい?」
「この町、僕たちの仕事場」
「この町、ニンゲンの実験場」
「この町、秘密の場所」
このロボットたちは知ってるんだ。
この町の事。
エリーが何度も来ている事。
あのニンゲンたちの事も。
「知ってる事を僕に教えてくれないか?」
ロボットたちに尋ねる。
「ダメ」
「それはダメ」
「違反になる」
「違反?」
僕は首を傾げた。
どういう事だろう。
「プログラム」
「違反したら僕たち壊れる」
「ここを守るために必要」
「そうか。分かったよ」
とりあえず、言う事を聞くしかないみたいだ。
「僕はもう少しここで休む。ご飯も食べる。それからエリーの所まで帰る道を教えてもらう。それで良い?」
「良いよ」
「ご飯用意する」
「エリー大丈夫。エリーは特別」
エリーは特別。
何が特別?
教えてはくれないだろう。
しばらくするとご馳走が並んだ。
「これは!?」
ニンゲンたちと宴で出てきた物そっくりだった。
どうして?
あの時のご馳走もこのロボットたちが用意したとでもいうのだろうか。
この町の秘密。
何故か僕は、この町が僕と何か関わりがあるような気がしてきた。
「良かった」
「本当に良かった」
…………。
僕はどうしたんだろう。
鍵を掴んだ所までは記憶があるんだけれど。
ここはどこだろう。
微睡む意識の中で思考する。
僕は、
十字架を背負って、
町の外まで歩いて、
鍵を取って、
取って、
そのまま意識を失ったのか。
偽救世主として、勝手に担がれ、落胆され、追放され、そして僕は倒れた。
で、何故か知らない場所にいる。
寝かされている。
布団だ。
暖かく柔らかい布団。
それに着替えもされてるみたい。
「熱は下がったかな?」
「今計るよ」
「目を覚ましたみたい」
聞こえてくる声。
何人?
二人?
三人?
町の人たちとは違うようだけど……。
「熱は下がった」
「良かった」
「水を持って行こう」
「そうだね」
僕はようやく体を起こして周囲を見た。
だだっ広い部屋だった。
真っ白な綺麗な壁。
床も白。
そこをピカピカのロボットが動き回っている。四角い本体にロボットアームやタイヤが付いたロボットたち。大きさは僕の腰くらいだろうか。
話してたのはどうやらこのロボットたちだ。
一体のロボットがコップを持って近づいてきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
僕は渡されたコップをまじまじと見た。
「大丈夫だよ」
「普通の水だよ」
「ニンゲンが飲んでも良い物だよ」
「う、うん」
僕は水を飲んだ。
少し冷たい水が全身に染み渡っていく。
気が付けば一気に飲み干していた。
「おかわりあるよ」
「一度にたくさん飲まない方が良いよ」
「欲しくなったら言うんだよ」
「ふふふ」
つい笑ってしまう。
「笑ったよ」
「笑ったね」
「元気になったね」
こうしてロボットといると家に帰ってきたみたいだ。
父さん、母さん、犬のワンダ。
ロボットだけど僕の家族。
ロボットのいる臭い。
油臭い感じ。
懐かしい。
何日も経ってないのに。
「ここはどこ? どうやったら帰れるの?」
「ここは地下の町」
「ここから帰るの?」
「外は危険!」
危険?
「もう少しゆっくりしていって」
「ご飯も食べていって」
「無理しちゃダメだよ」
うーん。
でも。
エリーの事も心配だし。
いつまでもいられないよ。
「そんな顔しないで」
「そんな悲しい顔しないで」
「そんな辛そうな顔しないで」
「そんな顔してる?」
「「「してる」」」
あはは。
ロボットでも分かるんだな。
そういえば父さんも母さんも分かったっけ。
「エリーが心配なんだ。何か知らないか?」
「エリー。アンドロイドの子」
「エリー。教会でケンタロー待ってる」
「ケンタロー。目の前の男の子」
「全部知ってるのかい?」
「この町、僕たちの仕事場」
「この町、ニンゲンの実験場」
「この町、秘密の場所」
このロボットたちは知ってるんだ。
この町の事。
エリーが何度も来ている事。
あのニンゲンたちの事も。
「知ってる事を僕に教えてくれないか?」
ロボットたちに尋ねる。
「ダメ」
「それはダメ」
「違反になる」
「違反?」
僕は首を傾げた。
どういう事だろう。
「プログラム」
「違反したら僕たち壊れる」
「ここを守るために必要」
「そうか。分かったよ」
とりあえず、言う事を聞くしかないみたいだ。
「僕はもう少しここで休む。ご飯も食べる。それからエリーの所まで帰る道を教えてもらう。それで良い?」
「良いよ」
「ご飯用意する」
「エリー大丈夫。エリーは特別」
エリーは特別。
何が特別?
教えてはくれないだろう。
しばらくするとご馳走が並んだ。
「これは!?」
ニンゲンたちと宴で出てきた物そっくりだった。
どうして?
あの時のご馳走もこのロボットたちが用意したとでもいうのだろうか。
この町の秘密。
何故か僕は、この町が僕と何か関わりがあるような気がしてきた。
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